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『雑記』 1996年 「勝間田哲朗『錯綜する迷宮銀河の考古学』」
『雑記』 1998年 「上條陽子の転回」 「切断と積層が
生む新世界─上條陽子の新作群について─」 「呉一騏 水墨画の新次元」
『雑記』 1999年 「安藤信哉・自在への架橋」
「呉一騏 水墨画の21世紀へ」 「深沢幸雄・人間存在への深い眼差し」
『雑記』 2000年 「内田公雄の絵画世界」
「水墨の原理・易経の哲理」
『雑記』 2001年 坂東壮一手彩色銅板画集「仮面の肖像」
『雑記』 2002年 「坂部隆芳『山王曼荼羅図』」
「ヴァンジの彫刻について」
「記憶の塔ー上條陽子の箱」
「蒼天の漆黒 内田公雄『2002 W−8』」
「久原大河 『才難は、この若者に降りかかった』」
『雑記』 2005年 「世紀を越えて−大矢雅章と佐竹邦子」
「生動力と構造力 佐竹邦子作品への視点」
『雑記』 2006年 「佐竹邦子の21世紀的展開」
『雑記』 2007年 張得蒂「尊敬すべき人生追及──日本三島市K美術館及び館長越沼正先生に
ついて」
『雑記』 2012年 「見出された、かたち 白砂勝敏氏の木彫椅子について 」
気になる展覧会
吉川霊華展
『悠閑亭日録』Diary2012年
6月30日(土) 芸術起業論/ツ
昨晩のNHK名古屋放送局『金とく』特集「原発のできなかった町で」
は印象深かった。三重県の南伊勢町と大紀町。
《 この地域の人びとは、半世紀にわたって原発を自らの問題として考え続けてきたのです。そしていま、地元では、
豊かさとは何かを問う新たな模索が続いています。 》
昨晩の反原発デモ。
《 現場でスタッフがある1区間だけを数えても1万人。最後の方は道路が通行止めになり道路中に人が埋め尽くし、
一部は日比谷公園に誘導されている、という状態。我々取材班の肌で感じた人数は4〜5万人、といったところでしょ
うか。 》
《 官邸前再稼働反対デモは整然と行われている。暴徒化する気配ゼロ。ボランティアスタッフが道路で誘導。ルール
の枠の中で皆さんができる限りの怒りの声をあげている。素晴らしい!日本型デモ。 》
NHKの記事。東京新聞一面ト
ップ記事。毎日新聞でも一面に記事
にしていた。
《 デモ行進はなし。官邸前でひたすら「再稼働反対」と叫ぶのが特徴だ。なぜ、これほど多く集まるのか──。 》
昨日取り上げた村上隆『芸術起業論』幻冬舎の前半からうなずく箇所。
《 日本では求道的な芸術家像が信奉されがちで人間国宝とか文化勲章作家が根強く支持されもしますが、過去の
日本美術史で否定されてきた人物こそが、一流の芸術家なのかもしれないのです。 》43頁
《 欧米での芸術の仕事を通してぼくが実感しているのは「本当の批評は創造を促す」ということです。 》52頁
《 歴史に残るのは、革命を起こした作品だけです。/ アレンジメントでは生き残ることができません。 》77頁
《 美術の世界の価値は、「その作品から、歴史が展開するかどうか」で決まります。 》79頁
《 天才が空白状態の中で作るものは歴史をガラリと変える可能性もあるのですけれども、水準が高すぎたり時代
の先に行きすぎたりしているために、リアルタイムでは正当な評価を受けられないかもしれないのです。 》105頁
《 十九世紀の芸術に流通した「自発性」は長い芸術の歴史の中ではむしろ例外的なルールなのですが、日本では
いまだにこれこそが芸術だと信じられています。 》107頁
《 芸術において自前の権威や力のない日本では「外国で人気がある」という宣伝文句は、絶大な信頼として機能。 》
112頁
以上、そうそう、とうなずいたことの一部。彼の情熱迸る語り口は、意外と面白い。もうひとつ。
《 日本人の説明は真面目一辺倒でつまらなくなりがちですが、ものを伝えることは娯楽だと割りきらなければなりま
せん。 》152頁
同じことを視察の案内で心がけている。明日も視察だ。
東京新聞朝刊にK美術館年末閉館の記事、と知人から電話。さっそく購読。うまくまとめてある。恥ずかしいなあ。
ネットの拾いもの。
《 「ツ」←ロシア人はこれをsmile markとして使ってるらしい。俺たちもロシア語の「Д」をよく使ってるからなん
かいい感じだよね。この際、「ツ」を流行らせよう 》
6月29日(金) 梅雨らしくない青空/合う・合わない
夏! を思わせる空。夜は熱くなりそう。
ブックオフ長泉店で二冊。村上隆『芸術起業論』幻冬舎2006年7刷、ジャック・リッチー『クライム・マシン』河
出文庫2009年初版、計210円。前者の村上隆の発言に深く同意。
《 芸術で最も重要な問題は「いかにして新しい表現を探しあてられるか」に尽きます。 》167頁
《 パブロ・ピカソの評価はそろそろヤバくなってきていないでしょうか。 》186頁
《 アーチストの賞味期限は、こうしている間にも、どんどん終わりが見えてきています。 》186頁
《 死後にも注目や尊敬を獲得できるかどうかでマエストロになれるかどうかが判明します。 》188頁
《 成功したいという情熱よりも、今のままではイヤだという不満がぼくを動かしている。 》196頁
《 マチスの最高傑作というのは、デザインでもペインティングでもない、死に損ないなほど老人になってからで
きた切り絵のようなものです。 》202頁
《 オークションの価格に驚くのではなく、なぜ、人は人の造りし「美」に向かい心も賭していくのかの核心を掴
むべきだと思います。 》245頁
《 私は「美」のために働いて行きたい。 》245頁
ネットの見聞。
《 1948年6月28日、福井地震が起きました。M7のいわゆる直下型の地震です。そして知る人ぞ知る、この地震の
甚大な被害がきっかけで、震度7が設定されることになりました。 》 大木聖子
読売新聞・国立西洋美術館共催の『ゴヤ展』(2011年10月〜2012年1月)の収支決算書。
《 収入総額 600,838,477円。支出総額 600,838,477円。 》
差し引き0。こんなにうまくいくもの? こっちは30→38。
《 東京都武蔵野市の「井の頭自然文化園(Inokashira Park Zoo)」は28日、台風で飼育施設が破損し逃げ出した
リス30匹について、期待を上回る38匹を捕獲できたと発表した。 》
6月28日(木) 梅雨らしい空
根が小心者なので、昨夜は早めに就寝。未明、通りの賑やかな酔っ払い集団に安眠を妨害される。うつらうつらと
過ごす。寝過ごすことなく起床。やれやれ。九時、三島駅近くの集合場所で待つことしばし、日本大学国際関係学部
の二年生20人余りと引率の先生。源兵衛川などを案内。梅雨らしい空模様。日に焼けなくてよかった。お昼開館。
ふう。
ネットの見聞。
《 大株主の損保生保が議決権行使せず経営側へ白紙委任してしまう理由のひとつとして、その企業内での営業活動
の便宜が図られることが絡んでいると関電株主さんが立ち話で言ってました。なるほどね。損保生保にとって大企業
とその社員たちはお得意様なわけだ。 》
《 6/29首相官邸前抗議の最寄り駅「国会議事堂前駅」と総理官邸前交差点は、大混雑が予想されます。「溜池山王」
からは、溜池交差点→六本木通りを経由してお越し下さい。「永田町」も上記の方法か国会正門前交差点を経由して
お越し下さい。ご協力お願いします。 》
ネットの見つけもの。乗り鉄には大事な情報
なんだろうなあ。
《 石神井公園駅下り線の複々線化工事完了により、6月30日に西武池袋線がダイヤ改正されます。さらにそれに合
わせて西武新宿線もダイヤ改正されます。目玉は平日の昼間、電車が均等間隔で走るということなのですが……、
鉄道趣味的に言えば急行への格下げによる拝島快速の廃止がなんとも残念です。拝島快速は花小金井、萩山、小川、
摩湖線と交差し、小川では西武国分寺線と交差しています。具体的に言いますと、下り拝島快速に乗って小平駅を出る
と、左側から西武多摩湖線が寄ってきて萩山駅で並び、萩山駅を出ると西武多摩湖線は右側へ分かれて行きます。さら
に左側から西武国分寺線が寄ってきて小川駅で並び、小川駅を出ると西武国分寺線は左側へ分かれて行きます。
このように平面で交差するため、萩山駅も小川駅もやや複雑な配線になっていて、その両駅で拝島快速はポイントの
上をガチャガチャ音を立てながら通過します。この感じを上手く表現するのは難しいのですが、運転席後ろでかぶりつ
きで前方を見ているとジェットコースターにでも乗っている気分といったところでしょうか。この気分を6月30日以
降は味わえなくなります。 》
6月27日(水) 梅雨らしくない空
昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。藤桂子・藤雪夫『獅子座』創元推理文庫2009年初版、矢崎存美『ぶたぶ
たさん』光文社文庫2011年初版、計210円。前者は単行本を持っているけど、文庫で藤親子シリーズを揃えたく。四
冊揃った。
昨夕近所の電気屋さんへ、去年故障したエアコンの買い替えを注文。エアコンの下には手作りの七段の本棚。昨夜、
本棚の前の積読本山脈を移動。片隅にテーブル・マウンテンができた。隠れていた本棚最下段に記憶から零れ落ちて
いた本、本、本。拙脳の記憶容量は増量できないかなああ。やっぱり無理かなあ。無理だなあ。無理なんだい。
昼食後、浜松市からのグラウンドワーク三島の視察対応で、閉館。講義の後、梅雨らしくない空の下、源兵衛川な
どを歩く。午後三時開館。ふう。
ネットの拾いもの。
《 今日は朝から代々木体育館でLIVE。観客総立ちで、激しく盛り上がりそうな予感! >東京電力株主総会 》
《 鮎は瀬に人は噂の淵に住む 佐藤春夫 》
6月26日(火) 梅雨らしくない
一昨日購入した敷布で昨夜就寝。敷布と畳は新しいのがよいのでござる。いつもより20分早く気持ちよく目覚め
た。やや強めだけれど心地良い東風の晴天。梅雨らしくないなあ。これじゃあ本気モードにならんなあ。能=天気に
なっちまう。午後、三島テレビ放送の取材。その後、東京新聞の記者が閉館を知って来館。インタビューを受ける。
能天気な私には、NHKラジオがお昼のニュースで報じたコンピューター障害の記事「ファーストサーバ、大規模障害の概要と原
因を中間報告――複数要因が重なりデータ消失」はワカラン。
《 同社では、脆弱性対策のためのメンテナンスが必要となる都度、メンテナンスのための更新プログラムを作成して
いた。今回も更新プログラムを作成した。そのプログラムの記述において、ファイル削除コマンドを停止させるための
記述漏れと、メンテナンスの対象となるサーバ群を指定するための記述漏れがあったとしている。 》云々
《 同社によると、障害発生以来、外部専門業者を交えてデータ復旧を試み続けてきたものの、共有サーバとクラウド
・サーバのデータ復旧は不可能であると判断したという。 》
雲をつかむような話だ。
《 水底を六月過ぎてゆきにけり 桂信子 》
見上げれば、空が底か。
ネットの見聞。
《 品川の山手線ホームにある常盤軒が事実上カレー屋と化してから、東京では駅そばを食べていない。その代わりに
小諸そばを利用することが俄然多くなった。最近のお気に入りは東急本店前の嵯峨谷。ここの味に慣れると、小諸そば
では満足できなくなる。駅そばを堪能したいなら軽井沢か三島まで行くべし。 》 原武史
あの店か。
ネットのうなずき。
《 子どものいのちは親の所有物ではない以上、たとえそれが他の人間を救うことになるとしても、子どもの身体から
生きた臓器を取り出して、子どもの身体に本人のためにならない侵襲を与えることを承諾する権限を、親は持っていな
いと私は考える。 》 森岡正博
《 「大切」−「切」という言葉には「ひたむき」「心をこめる」「さし迫る」「身にしみる」など様々な意味があ
る。「親切」「懇切」と使用方法も多い。16世紀にポルトガルから「amor」という言葉が入った時に愛ではなく「
大切」と訳した。見直してみよう。愛する人よりも大切な人を。 》
ネットの拾いもの。
《 あるブスの少女ハイジ 》
6月25日(月) 休館日
午前十一時過ぎ起床。のんびり過ごす。
ネットの拾いもの。
《 明日から本気出すことにして寝ます。 》
6月24日(日) エチオピア音楽
5年ほど前、アメリカのジャズバンド Either/Orcestra の2枚組CD『 Ethiopiques 20: Live in Addis 』BUDDA MUSIQUE、オルター・ポッ
プ を愛聴してきた。昨日のCDは、このCD以来のエチオピア。印象深い曲「 Yezemed yebada 」が別のグループで
演奏されていて、なかなか興味深い。イーザー/オーケストラの日本盤CDのライナーノーツから。
《 次いで「イエゼメド・イエバダ Yezemed yebada 」の作者テショ
ーメ・メテクーからも連絡があった。彼もまた私たちの演奏をラジオで聞いたのだ。私はその時、ある意味で、イー
ザー/オーケストラが、米国におけるエチオピア移民の音楽共同体の中に入ってしまったと感じたのだった。 》
《 私たちの飛行機がニューアーク空港を離陸して14時間後、私たちはアジスに着陸 》
《 私たちの期待通りに、エチオピア人聴衆は、エチオピア音楽がアメリカのバンドによって演奏されるのを聞いて
かなりびっくりしていた。 》
《 最初の「アムラク・アベト・アベト Amlak Abet Abet 」の出だしから、オーディエンスはこの曲がわかってしまい、すぐに大拍手が巻き起こった。 》
《 この音楽はかくも長い距離を旅して私たちのところに到達し、そして今、私たちはそれを元あった場所に戻しに
やってきたのだ。 》
このあたりの事情がやっと飲み込めた。なお、Yezemed yebada は Yezmed yebada が正しい表記のようだ。
昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で三冊。半藤一利『それからの海舟』ちくま文庫2008年6刷、ドライザー『シスタ
ー・キャリー(上・下)』岩波文庫2010年2刷、計315円。
グラウンドワーク三島の総会に出席するため、午後三時過ぎ、閉館。
ネットの見聞。
《 通常「美術品」と云うモノは、その「品質」に対して「値」が付くのだが、今の中国美術マーケットでは「付いた
値」が、そのまま「品質」に為ってしまっている…これは、筆者からすると本当に恐ろしい事なのだ。 》
日本美術でも同じ気がするけど。
《 丸山眞男を批判(それもまっとうに正当に)する人は多いですが、批判はできても丸山の大きさを超える人が出て
こないところが、丸山眞男の凄みですよね・・・ 》
ネットの拾いもの。
《 冷蔵庫の下に「ゴキブリホイホイ」。
ここ数日、大きいゴキが二匹ほど走り回っているので、仕掛けておいた。
さっき見たら、もう、その二匹、入っていた。開店と同時って、パチンコ屋かよ! 》
6月23日(土) 昭和〜平成絵画展初日
昨夜、報道ステーションで
官邸前の原発再稼動反対デモを視聴。熱くなる。ネットの見聞。
《 この抗議は、初めは50人でしたが、翌週には300人、翌週には1000人、翌週には2700人、翌週には4000人、翌週に
は1万1000人と増え続けてきました。今回は先週の3倍を超える4万5000人、これでも野田首相が民意を無視して再稼働
をやめないのなら、来週は10万人を超える人たちが集まると思います。 》
《 「紫陽花革命」という呼び名がついたらしい。報道ステーションでかなり大きく取り上げられて、これからます
ます増えるだろう。始めたのはまったくの素人だそうだが、なまじ大きな団体とかバックに付いてないのがいいんだ
ろうね。 》
午前中は、飯田市からの20人を、グラウンドワーク三島の事業地、源兵衛川などへ案内。お昼開館。すぐに三組
来館、ぎりぎり間に合った。うー、途切れない、昼食は〜。
2枚組CD『 NOISE & CHILL OUT : Ethiopian
Groove Worldwide 』BUDA MUSIQUE 、75分+75分=2時間30分を一気に聴き通す。1枚目CDは NOISE で、
ホット& パワフル。2枚目CDは CHILL OUT で、クール & ビューティ。1枚目には15組、2枚目には13
組の日米欧のミュージシャンの、エチオピア音楽に触発された演奏が見事に編集されている。清水靖晃率いるバンド、サキソ
フォネッツ、現代音楽のクロノス・カルテットまで入っている。どちらもクールな2枚
目に。どちらのCDも、エチオピア独自のグルーヴ感にシビレル。近所迷惑顧みず、自宅で大音量で聴くと、うーん、
タマラン、熱くなる。目新しい音楽ではない。古くさく感じるかもしれないが、アフリカの土を土台にしたエチオピア
音楽独特の開放的な演奏が、有無を言わさず血気を奮い立たせる。……適切な言葉が見つからない。オモシロイゾ、と
言うしかない。英文ライナーノーツから一部を。
《 ソウル、ファンク、アフロポップ、パンク、ジャズ、エレクトロニカ、実験、アンビエント、弦楽四重奏、ソロ演
奏家から交響楽団まで、ジャンル分けは無理! 》
ジャケットは Worldwide でなく Worlwide になっている。すんごい脱字。フランス製作のせいかな。
1枚目CDの最初の演奏、 Dub Colossus「 Guragigna 」
が YOU TUBE にあった。
ネットの拾いもの。
《 日本美女は化粧なしでは見られない。韓国美女は整形なしでは見られない。中国は自然な美女をたくさん産出
している。 》
《 過去10年間の世界美人コンテスト五大会(ミス・ワールド、ミス・ユニバース、ミス・インターナショナル、ミス
・アース、ミス・トゥーリズム・クイーン・インターナショナル)における各国の成績を、純粋に数値的に集計して、
「グランド・スラム・ランキング」として発表している。2009年の集計によれば...
1位 ベネズエラ 、2位 アメリカ 、3位 インド 、4位 ブラジル、5位 プエルト・リコ 、6位 コロンビア 、7位 メキ
シコ 、8位 フィリピン 、9位 カナダ 、10位 スペイン 、11位 ロシア、12位 南アフリカ 、13位 日本 、14位 中国、
15位 オーストラリア 》
6月22日(金) おさがしの本は
自転車で来て一息入れたら……ざあざあ雨。
門井慶喜『おさがしの本は』光文社文庫2011年初版を読んだ。小池啓介の解説から。
《 門井慶喜の小説を読むと、びっくりさせられて──そのあとに豊かな気持ちが生まれる。 》
N市立図書館にある本の森、海から一冊の本を探し出す、リファレンス・カウンターが遭遇す
る様々な出来事からなる五編。そして図書館の存続問題に立ち向かう一介の職員。一昨日取り上げた大阪中之島図書館廃止問題
が重なる。本は大好きだけれど、地元の図書館は好きじゃない。開館時間が短い、から始まって理由はいくらでもあ
る。
《 しょせん図書館など知の宝庫ではない。単なる無料貸本屋か、そうでなければコーヒーを出さない喫茶店にすぎ
ないのだ。少なくとも市民の目にはそうなのだ。 》「図書館ではお静かに」
《 とはいえ林森太郎は、単なる地方の一教師ではない。博文館、金港堂(きんこうどう)といった当時の東京の一
流出版社から本を出し、全国的に名の知れた著作家でもあった。 》「図書館ではお静かに」
博文館、金港堂から出ている明治の本は何冊か所持している。綺麗な木版画が付いている。明治二十年〜三十年代
の木版画事情は、今もってよくわからない。明治期の口絵木版の英文の研究書の一部を翻訳したとき、時間をやりく
りして明治期の人物を調べに図書館を利用したけど、ほとんど役に立たなかった。が、ネット検索よりも紙の検索の
ほうが情報域が広がってゆくことを実感。
それにしても、武田泰淳『異形の者』がそれほどに読まれていなかった、とは。学生時代に読んで、いまだに脳裏
に焼きついている。『ひかりごけ』よりよっぽど凄い。
ネットの見聞。
《 本当は、ハッキリと「消費税の増税で何兆円の税収が増える」と選言して、それが違ったら責任を取るのが良い
のですが、多くの専門家は予想が外れることを恐れて発表しません。民主党や自民党も同じです。 》 武田邦彦
《 原発再稼働決定、ダウンロード処罰化、消費税増税法案可決へ。ここにきて事態の悪化に急激な加速がかかり始
めてないか…。 》 椹木 野衣
《 国民に対するクーデターが起きている。戦争突入の時と何が違うか。 この実力行使、法を無視した、手続きを無
視した実力行使、原子力に関しては、それが延々と続いて来た。 》 平智之衆議院議員
ネットの拾いもの。
《 何度天気予報を見ても雨。 》
《 天気予報とは、いわば、一種の推理。》
《 小僧寿しはなぞの店 → 小僧寿し花園店 》
6月21日(木) 展示準備完了
昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。属十三(さっか・じゅうぞう)『後楽園ジャック』集英社1977年初版、
久世光彦『むかし卓袱台があったころ』ちくま文庫2006年初版、計210円。属十三は覆面作家集団の名前。この本には
成立のいきさつやら構成員の名前やら載っている。個人作家として仕事をこなしている人もいる。同じ覆面作家の鷹見緋沙子は三人の
作家による共同名義、個別執筆だった。覆面作家でデビューした北村薫の「覆面作家」シリーズは愉しかった。
文庫本を上製本(ハードカバー)にする
キットが創元社から販売されている。価格:1,900円(税別)/A5判変型/函入り(シュリンク装)。一冊作るのに
2,000円ほどと手間。製本した文庫本をプレゼントすれば喜ばれるかも。まあ、私はしないなが。
《 アルフレート・デーブリーン 『ベルリン・アレクサンダー広場』。『ユリシーズ』 『特性のない男』等と並ぶ
20世紀前半の前衛文学の伝説的名作が40年ぶりに復活。20年代ベルリンのある男の彷徨とともに都市と人間の相克を
実験的に描く巨編。河出書房新社 》 出た〜!
昨日、友だちに見てもらい絵の配置を変更。対比の妙、ひとつひとつの絵が独自の生彩を放った。きょう、あらた
めて確認。よしよし。名前を付けて、準備完了。ふう。一休み〜のところへ来館者。早や。
ネットのうなずき。
《 記憶は体験とともに刻まれる。故に、音に耳を傾け、香りを「聞き」、舌で感じ、人に触れ、心に刻む。そもそ
もサービスなんてものは微妙な間のうちに存在する。現場に行って記憶に刻まないと、いざというときに使える道具
として取り出すことはできない。 》 平野雅彦
《 大人とは「子どもにはその価値がわからないものの価値がわかる人」のことです(「大人」の定義は他にもたく
さんありますが、とりあえずそのうちの一つはこれです)。 》 内田樹
ネットの拾いもの。
《 ストレスを感じるとき( STRESSED )デザート( DESSERTS )を摂るのは理にかなっている。 》
《 なにかやらかしたメンバーだけが在籍するSDG48ってのをつくれば、佐渡島の観光客も増えていいと思うなぁ 》
6月20日(水) 台風一過/贋作『坊ちゃん』殺人事件
未明まで吹き荒れた強風でよく眠れず調子はいまいち。バス停の向かいの飲食店、二階の窓ガラスが破損。経営者
らしき人が見上げながら携帯電話で話している。バスで来る、
暴風雨で破壊された傘が集まってしまい現代美術の
ようになってる池袋駅前。
柳広司『贋作『坊ちゃん』殺人事件』朝日新聞社2001年初版を読んだ。見事な換骨奪胎だ。『坊ちゃん』から三年
後の話だが、殺人事件は坊ちゃんが去った時に起きていた。その事件の真相を暴くべく、坊ちゃんは山嵐に誘われて
当地へ戻る。三年前の坊ちゃんにまつわる騒動の裏に隠された陰謀の数々。社会主義者、無政府主義者そして政府の
密偵、三つ巴の争闘が繰り広げられていたとは。その渦中に知らず飛び込んだ坊ちゃん。彼の一挙手一投足があらた
な波紋を引き起こしていた。
《 それからそれへと思案を巡らせているうちに、おれは何だか気持ちが悪くなってきた。現実がくるりと裏返って
、目が回るほどだ。そうして、その度に思いもしなかった別の貌(かお)が現れる。三年前、おれが当地で見たと思
っていた世の中は何だったんだ? 急に自分が複雑な関係性の中に生きていることを突き付けられた気がした。 》
143頁
《 かつておれが見ていたはずの現実は、すべて裏返しの世界だった。曲がっていたのは言葉ではなく、現実の方だ
った。 》178頁
これは面白かった。『坊ちゃん』を読んだばかりだったので、漱石独自の言葉遣いの利用に気づく。柳広司、只者
ではないな。
ネットの見聞。
《 自分の本をネイティブに英訳してもらったのをいまチェックしている。全体として感動的な仕上がりなのだが、
しかし完全な翻訳というのはあり得ないというのが身に染みてわかる。どうしても訳語選択によるニュアンスのズレ
と、ズレを補うための文章の修正が必要になる。いわば別物ができあがるわけだ。 》 森岡正博
ドストエフスキーなどの古典からミステリまで、毎月新訳が出ているけど、平成の新訳にはどうもなじめない。や
はり昭和の人間だ。岩波文庫と光文社文庫で刊行中のプルースト『失われた時を求めて』、どちらの翻訳を読むか、
完結してから考えるつもりだけれど、あと何年待つやら。そのとき気力があるかなあ。
ネットの拾いもの。
《 言いたいことは100億ぐらいあるが、これだけは書いておこう。(架空の)大阪市長が出てくる話を連載して
おり、今まさに第2話を書こうとしているのだが、そのネタは中之島図書館で調べたのです。その連載に登場する大阪市長はけっこうええやつやなん
けどな。架空の大阪の架空の市長です。ただし、足下揺(あしもとゆらぐ)という名前ではあります。 》 田中啓文
《 消臭力と長州力の違いを教えてください。 》
6月19日(火) 撤収/坊ちゃん
展示した版画を収納。展示候補の絵を展示室へ運び入れる。台風接近のせいか蒸し暑い。今年初めてエアンコンの
ドライを起動。生き返る。
夏目漱石『坊ちゃん』1906年を再読。一気読み。以前読んだのは記憶もおぼろな遠い昔。今読むとじつに痛烈な批
評眼で貫かれているのに気づく。坊ちゃんを真っすぐな性格の自覚した弱者に設定したことで、この小説はすでに成
功している、と思う。百年河清を待つ、と謂われるが、三島市の源兵衛川は「死んだ川」から「平成の名水百選」に
なるまでたった二十年。『坊ちゃん』から百年経っても変わらぬのが、文部科学省を頂点とする教育界だ。
ネットの見聞。
《 昨日の民主党の合同会議で消費税増税賛成の意見はゼロ。賛成はマニフェスト違反であり、国民への裏切り。だ
から会議は黙っていて、採決時だけ賛成票を投じる。次のガス抜きは20日の非公式な「両院議員懇談会」か。非公
式なら多数決の決定もなし。ホテルで優雅にガス抜きしながら民主党は滅んでゆく。 》 兵頭正俊
《 「赤ちゃんが乗ってます」は、事故のとき子どもはシートの隙間に入って見落とされることがあるのでレスキュ
ーの人に教えるためというのが本来の目的だったんだけど、今や誰もそんなこと考えてませんわなあ。だから子ども
乗せてないときははずすべきなんだけどね。 》
ネットの拾いもの。回文。
《 雅子さま 》
《 世の中ね 顔かお金かなのよ 》
《 イタリアでもホモでありたい 》
6月18日(月) 休館日/吾輩はシャーロック・ホームズである
昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で三冊。村上春樹『1Q84』新潮社2009年12刷帯付、藤桂子・藤雪夫『黒水
仙』創元推理文庫2010年初版、藤桂子『疑惑の墓標』創元推理文庫2010年初版、計315円。
柳広司『吾輩はシャーロック・ホームズである』角川文庫2009年初版を読んだ。題名から推察されるように、二
十世紀初頭、ロンドンに留学していた夏目漱石が精神を病み、自分をシャーロック・ホームズと思い込み、居合わ
せた降霊会で起きた殺人事件の解決に奔走するというもの。うまく出来てる。感心。漱石の『倫敦塔』を先に読ん
でおくことを勧める。うまく取り込んであって、興趣ががぜん深くなる。『草枕』も読んでおくと面白い。
《 某月某日──微行はちょっと洒落ているが尾行は一向幅が利かない。だいいち尾行などするのは探偵ばかりだ。 》
『吾輩はシャーロック・ホームズである』
《 都会は太平の民を乞食と間違えて、掏摸(すり)の親分たる探偵に高い月俸を払う所である。 》 『草枕』
《 きみたちの言う文明化とは、野蛮化の謂なのか? 》 『吾輩はシャーロック・ホームズである』
《 文明はあらゆる限りの手段をつくして個性を発達せしめたる後、あらゆる限りの方法によってこの個性を踏み
付け様とする。 》『草枕』
山田風太郎『黄色い下宿人』、島田荘司『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』と並ぶかも。
ネットの見聞。
《 原発事故と同じで、米国や英国で脳死判定後の蘇生があっても、日本ではありえない、という過信が医学界に
存在しています。 》 森岡正博
諸外国・地域の日本産食品の輸入規制措置
。
《 ウソを信じ込ませるには肩書きがいる。本当のことを話すには、肩書きなんていらない。 》
ネットの拾いもの。
ユーモア小説『ぶたぶた』シリーズで知られる矢崎存美
(ありみ)。
《 在美さんじゃなくて存美さんですよー。あたしも以前間違えて「ゾンビと覚えてください」と教わったことがw 》
6月17日(日) 草枕/版画展最終日
雨が止んだので自転車で来る。一息すると再び雨。そして晴天。暑い。天窓を開けて風を抜けさせる。
夏目漱石『草枕』1906年について、『文学全集を立ちあげる』(丸谷才一・加島茂・三浦雅士)文春文庫での丸谷
の発言。
《 まず、「我輩は猫である」「坊ちゃん」「三四郎」「それから」、この四つは絶対に入れる。「草枕」は外す。
あと何を入れるか、という問題。 》186頁
それで読まなかったけれど、松岡正剛の「日本の数寄を読む五冊
」選出を知り、彼と同じく新潮文庫で読んだ。
これは面白かった。
《 うまい物も食わねば惜しい。少し食えば飽き足らぬ。存分食えばあとが不愉快だ。…… 》
《 春は眠くなる。猫は鼠を捕る事を忘れ、人間は借金のある事を忘れる。 》
《 昔から小説家は必ず主人公の容貌を極力描写することに相場が決まっている。古今東西の言語で、佳人の品評に
使用せられたるものを列挙したならば、大蔵経とその量を争うかもしれぬ。 》
《 世間に茶人程勿体振った風流人はいない。広い詩界わざとらしく窮屈に縄張りをして、極めて自尊的に、極めて
ことさらに、極めてせせこましく、必要もないのに鞠躬如(きっきゅうじょ)として、あぶくを飲んで結構がるもの
は所謂茶人である。 》
なんとも小気味いい科白を語り手の画工(えかき)に吐かせている。画工だから絵への言及も当然ある。
《 画家として余が頭のなかに存在する婆さんの顔は高砂の媼(ばば)と、芦雪のかいた山姥のみである。 》
《 横を向く。床にかかっている若冲の鶴の図が目につく。これは商売柄だけに、部屋に這入った時、既に逸品と認
めた。 》
堂に入った分析がつづく。流石漱石。百年前は長沢芦雪も伊藤若冲もよく知られた画家だった。
ネットの見聞。
《 以下が現代日本メディア空間のタブーのひとつ:「脳死の幼児からの臓器摘出は親の意思であって子ども本人の
意思ではない。『この子の臓器が誰かの身体で生き続けていてほしい』という願いは親のエゴの表現である。臓器摘
出される脳死の幼児は本人のためにならない手術を親のエゴで強制される」 》 森岡正博
《 6歳脳死臓器提供。親の重い決断、子を死に手放すことが「善意」とされる。その裏に重い障害を持つ子に長く
生きられては自分たちが困るという親のどす黒い利己主義が隠れていることを忘れてはならない。障害者差別がいわ
ば「善意」「社会貢献」に形を変えて絶賛されるのが脳死臓器移植。 》 川口有美子
ネットのうなずき。
《 昔、CD販売をやっていた事があるからこっちは身に染みてんだけど、レコード会社はもう忘れたのかねぇ、C
CCDの悪夢を。まさか10年経たずして同じような失敗繰り返すとは思いもしなかった。 》
《 バイキング料理など、幾ら高級な食材を使っても、不特定多数の人間の吐息に晒され、ぐちゃぐちゃに引っ掻き
回され、仕舞いには味も素っ気も無くなる。 》
6月16日(土) 記憶に焼きつく15日
雨なのでバス。ほとんどの方が展示品に感動したと口にされるけど、口コミで来られる方はほとんどいない。そこ
が飲食店と違う。午後再来館された女性は、お友だちを連れてこられた。お友だちは「ここは癒されますね」と感想
を述べられた。うれしい。
ネットの見聞。
《 音楽や映像の海賊版をネットを通じてDLする行為に罰則を科す法案が15日、衆院本会議で可決されました 。 》
ネットのうなずき。
《 NHK7時のニュース。1、オウム高橋:15分、2、一体改革修正協議:7分、3、6歳未満脳死判定:3分、4、東電
OL再審男性出国:3分、5、日銀総裁金融システム:1分、6、福井県庁再開同意前会談:1分、7、天気予報:2分、8、
手延べそうめん:1分、計33分で終。電力株主すげー。旧共産圏国営放送並。 》 藤尾 岳史
《 原発再稼働 これが法治国家なのか 》
信濃毎日新聞
《 今日、官邸前デモの先頭から最後尾まで1往復したが、どこの政党の旗も労働組合の旗も何かの団体の旗も立って
なかった。動員じゃない、普通の市民が、1万人以上、官邸前に集まったのだ。そろそろ時代が変わりつつある事に政
治家も官僚も気づいた方がいい。甘い汁を吸わせても、裏で脅しても無駄だよ。 》 高橋裕行
《 デマ呼ばわりのホットスポット認めさせたのも、まだまだだけど基準値を下げたのも、ここまで再稼働を抑えた
のも、市民が動いたから。官邸前の人々は希望だ。 》 池田みきこ
《 金曜夕方の首相官邸前の原発再稼働への反対の列は、今日でついに10000人を越えたとか。今までは舗道の片側を
通行用に開けてたけど、今日は舗道全てを抗議に使って、車道に臨時の通路を作る配慮を警察がしてた。人の集まる力
が状況を少しずつ変えてきてる。そんな空気を感じた。 》 きたじまごうき
《 政府は、枝野大臣は、原発に絶対安全はないと言いはじめている。原発に一定のリスクはある、百パーセント安全
はないとしきりに言うようになった。これは3・11とどこが違うのか。「割り切らなければ原発はできない」と言った斑
目原子力安全委員長のかつての発言とどこが違うのか。 》 福島みずほ
《 6歳にみたない子どもにまで「人の役に立つ死」「尊厳死」を求め礼賛する社会を私たちはつくってしまった。 》
《 幼児脳死臓器摘出については、提供したい人(=幼児本人)の合意があり得ないので、移植してはならないという
のが私の意見ですし、あなたもそういう結論になるはずです。 》 森岡正博
《 「提供したい人・提供を受けても生きたい人・移植医の三者の合意があれば、それを止める権限は誰にもない」
これを認めると、合意さえあれば、脳死になった身体を利用した「人体実験」や薬の治験もしてよいことになります。
この論理のどこかに穴があるのです。 》 森岡正博
《 革新は刷り込みを解くことから始まる。 》 椹木 野衣
ネットの見つけもの。
《 某議員のポスターの右下にある石原閣下の顔が子供たちの水鉄砲の的になってる。 》
夏目漱石『草枕』の感想は明日に延期します。
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