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『雑記』 1996年 「勝間田哲朗『錯綜する迷宮銀河の考古学』」
『雑記』 1998年 「上條陽子の転回」 「切断と積層が 生む新世界─上條陽子の新作群について─」 「呉一騏 水墨画の新次元」
『雑記』 1999年 「安藤信哉・自在への架橋」  「呉一騏 水墨画の21世紀へ」 「深沢幸雄・人間存在への深い眼差し」
『雑記』 2000年 「内田公雄の絵画世界」  「水墨の原理・易経の哲理」
『雑記』 2001年 坂東壮一手彩色銅板画集「仮面の肖像」
『雑記』 2002年 「坂部隆芳『山王曼荼羅図』」  「ヴァンジの彫刻について」  「記憶の塔ー上條陽子の箱」
           「蒼天の漆黒 内田公雄『2002 W−8』」    「久原大河 『才難は、この若者に降りかかった』」
『雑記』 2005年 「世紀を越えて−大矢雅章と佐竹邦子」   「生動力と構造力 佐竹邦子作品への視点」
『雑記』 2006年 「佐竹邦子の21世紀的展開」
『雑記』 2007年 張得蒂「尊敬すべき人生追及──日本三島市K美術館及び館長越沼正先生に ついて」
『雑記』 2012年 「見出された、かたち  白砂勝敏氏の木彫椅子について 」



気になる展覧会

  吉川霊華展


『悠閑亭日録』Diary2012年

6月17日(日) 草枕/版画展最終日
 雨が止んだので自転車で来る。一息すると再び雨。そして晴天。暑い。天窓を開けて風を抜けさせる。

 夏目漱石『草枕』1906年について、『文学全集を立ちあげる』(丸谷才一・加島茂・三浦雅士)文春文庫での丸谷 の発言。

《 まず、「我輩は猫である」「坊ちゃん」「三四郎」「それから」、この四つは絶対に入れる。「草枕」は外す。 あと何を入れるか、という問題。 》186頁

 それで読まなかったけれど、松岡正剛の「日本の数寄を読む五冊 」選出を知り、彼と同じく新潮文庫で読んだ。 これは面白かった。

《 うまい物も食わねば惜しい。少し食えば飽き足らぬ。存分食えばあとが不愉快だ。…… 》

《 春は眠くなる。猫は鼠を捕る事を忘れ、人間は借金のある事を忘れる。 》

《 昔から小説家は必ず主人公の容貌を極力描写することに相場が決まっている。古今東西の言語で、佳人の品評に 使用せられたるものを列挙したならば、大蔵経とその量を争うかもしれぬ。 》

《 世間に茶人程勿体振った風流人はいない。広い詩界わざとらしく窮屈に縄張りをして、極めて自尊的に、極めて ことさらに、極めてせせこましく、必要もないのに鞠躬如(きっきゅうじょ)として、あぶくを飲んで結構がるもの は所謂茶人である。 》

 なんとも小気味いい科白を語り手の画工(えかき)に吐かせている。画工だから絵への言及も当然ある。

《 画家として余が頭のなかに存在する婆さんの顔は高砂の媼(ばば)と、芦雪のかいた山姥のみである。 》

《 横を向く。床にかかっている若冲の鶴の図が目につく。これは商売柄だけに、部屋に這入った時、既に逸品と認 めた。 》

 堂に入った分析がつづく。流石漱石。百年前は長沢芦雪も伊藤若冲もよく知られた画家だった。

 ネットの見聞。

《 以下が現代日本メディア空間のタブーのひとつ:「脳死の幼児からの臓器摘出は親の意思であって子ども本人の 意思ではない。『この子の臓器が誰かの身体で生き続けていてほしい』という願いは親のエゴの表現である。臓器摘 出される脳死の幼児は本人のためにならない手術を親のエゴで強制される」 》 森岡正博

《 6歳脳死臓器提供。親の重い決断、子を死に手放すことが「善意」とされる。その裏に重い障害を持つ子に長く 生きられては自分たちが困るという親のどす黒い利己主義が隠れていることを忘れてはならない。障害者差別がいわ ば「善意」「社会貢献」に形を変えて絶賛されるのが脳死臓器移植。 》 川口有美子

 ネットのうなずき。

《 昔、CD販売をやっていた事があるからこっちは身に染みてんだけど、レコード会社はもう忘れたのかねぇ、C CCDの悪夢を。まさか10年経たずして同じような失敗繰り返すとは思いもしなかった。 》

《 バイキング料理など、幾ら高級な食材を使っても、不特定多数の人間の吐息に晒され、ぐちゃぐちゃに引っ掻き 回され、仕舞いには味も素っ気も無くなる。 》


6月16日(土) 記憶に焼きつく15日
 雨なのでバス。ほとんどの方が展示品に感動したと口にされるけど、口コミで来られる方はほとんどいない。そこ が飲食店と違う。午後再来館された女性は、お友だちを連れてこられた。お友だちは「ここは癒されますね」と感想 を述べられた。うれしい。

 ネットの見聞。

《 音楽や映像の海賊版をネットを通じてDLする行為に罰則を科す法案が15日、衆院本会議で可決されました 。 》

 ネットのうなずき。

《  NHK7時のニュース。1、オウム高橋:15分、2、一体改革修正協議:7分、3、6歳未満脳死判定:3分、4、東電 OL再審男性出国:3分、5、日銀総裁金融システム:1分、6、福井県庁再開同意前会談:1分、7、天気予報:2分、8、 手延べそうめん:1分、計33分で終。電力株主すげー。旧共産圏国営放送並。 》 藤尾 岳史

《 原発再稼働 これが法治国家なのか 》  信濃毎日新聞

《 今日、官邸前デモの先頭から最後尾まで1往復したが、どこの政党の旗も労働組合の旗も何かの団体の旗も立って なかった。動員じゃない、普通の市民が、1万人以上、官邸前に集まったのだ。そろそろ時代が変わりつつある事に政 治家も官僚も気づいた方がいい。甘い汁を吸わせても、裏で脅しても無駄だよ。 》 高橋裕行

《  デマ呼ばわりのホットスポット認めさせたのも、まだまだだけど基準値を下げたのも、ここまで再稼働を抑えた のも、市民が動いたから。官邸前の人々は希望だ。 》 池田みきこ

《  金曜夕方の首相官邸前の原発再稼働への反対の列は、今日でついに10000人を越えたとか。今までは舗道の片側を 通行用に開けてたけど、今日は舗道全てを抗議に使って、車道に臨時の通路を作る配慮を警察がしてた。人の集まる力 が状況を少しずつ変えてきてる。そんな空気を感じた。 》 きたじまごうき

《 政府は、枝野大臣は、原発に絶対安全はないと言いはじめている。原発に一定のリスクはある、百パーセント安全 はないとしきりに言うようになった。これは3・11とどこが違うのか。「割り切らなければ原発はできない」と言った斑 目原子力安全委員長のかつての発言とどこが違うのか。 》 福島みずほ

《 6歳にみたない子どもにまで「人の役に立つ死」「尊厳死」を求め礼賛する社会を私たちはつくってしまった。 》

《 幼児脳死臓器摘出については、提供したい人(=幼児本人)の合意があり得ないので、移植してはならないという のが私の意見ですし、あなたもそういう結論になるはずです。 》 森岡正博

《 「提供したい人・提供を受けても生きたい人・移植医の三者の合意があれば、それを止める権限は誰にもない」 これを認めると、合意さえあれば、脳死になった身体を利用した「人体実験」や薬の治験もしてよいことになります。 この論理のどこかに穴があるのです。 》 森岡正博

《 革新は刷り込みを解くことから始まる。 》 椹木 野衣

 ネットの見つけもの。

《 某議員のポスターの右下にある石原閣下の顔が子供たちの水鉄砲の的になってる。 》

 夏目漱石『草枕』の感想は明日に延期します。


6月15日(金) 柿田川
 「政局に合わせて15日に高橋克也容疑者を逮捕する」と観測されていたが。

《 高橋逮捕の速報の裏で、たった10分前に『原子力規制法案』が合意しちまった。 》

 午後、川崎から知人夫婦が娘さんと来館。十五年ぶりか。柿田川を案内。今年初めての訪問。貴船神社の鳥居など が新しい。去年の十二月吉日に建立。いい所だなあ、と喜ばれる。途中の水田でホウネンエビを見つける。ここには カブトエビはいない。

 夏目漱石『草枕』を読んだ。感想は明日。

 ネットのうなずき。

《 アートにはアイデアが必要だがアイデアで作品は出来ない。そこが難しいところであり私が作家に向かない最大 の理由でもある。アートはアイデアから始まりオペレーションによって威力を発揮する。オペレーションこそが作品 なのだ。 》

《 私は野田さんという人に個人的には特に好悪の感情を抱いていなかったが、この声明を読んで「誠実さを欠いた 人だ」という印象を持ってしまった。その所以について 述べたい。  》 内田樹

 ネットの見聞。

《 TPPにより地場産業のサトウキビ生産が大打撃を受ける徳之島は他方で核燃料再処理工場の候補地。 》

《 本日の院ゼミでの知見は、マンガ『聖お兄さん』が、タイではいわゆる「発禁本」に近い扱いを受けているとい うことである。いかに熱心な仏教徒が多いかということであろう。 》

 ネットの拾いもの。

《 思えば遠くにみのもんた 》

《 見ザル、言わザル、着飾る 》


6月14日(木) さみしいネコ
 昨夕、グラウンドワーク三島の会合を、新しく開店した街中カフェでした。元は桃太郎という小さなおもちゃ屋。その昔、ブリキのオモチ ャで有名な北原照久が、デッドストック品のブリキのロホットオモチャを千円で買った店。

 朝一番で床屋へ。それから近所の古本屋へ朝一番で行く。江馬務『日本妖怪変化史』中公文庫1976年初版100円、 E・ガボリオ『ルコック探偵』旺文社文庫1979年初版200円、計300円。

 早川良一郎『さみしいネコ』みすず書房は、こころがほぐれる雑文集だ。池内紀は解説で書いている。

《 『さみしいネコ』は優れた人間観察にもとづき、つつましやかな寛容の精神でつらぬかれ、定年退職者のバイブ ルというものだ。こういう人こそ、本当の教養人というのだろう。群れることを好まず、党派や派閥などといっさい 縁がなく、ひっそりと人と世をながめていた。 》

《 その頃の私の憂きことといえば、学校の試験くらいのもので、それもビリを覚悟すればのんびりしたものだった。 》 「シラムレンの涙」(シラムレンは銀座にあったバー)

《  自分でパイプをつくるのが流行して、友人がそのクラブをつくった。
  「クラブの名前を考えてください」
   といわれて、
  「パイプをつくるクラブなんだから、パイプカットクラブでいいじゃないですか」
   友人はおかしなことをいう人だ、という顔付きをした。どうしてなんだろう。 》「クレオパトラの鼻」

《 「腹が出てきたんだけど、その分目方がふえない。どこか見えないところが減ってるんだ」
   そういったら、
  「脳味噌だろう」
   といったのがいる。 》「月月火水木金金」

《 税金には、定年退職というものはないんだろうか。落語だって、横丁のご隠居が税金を払うなんてきいたことが ないではないか。 》「空きびん人生」

 ネットのうなずき。

《 国会に自民党は二ついらない。 》 民主党衆議院議員 三宅雪子

 ネットの見聞。

《 政府がLED普及のために、白熱電球の製造販売の終了を促すなんて、そこまですることないだろ。なるべく照 明を使わなきゃ、済むことなんだから。

 ここには、電器メーカーや家電量販店の陰謀が見え隠れする。液晶テレビの売れ行きとか伸び悩んで、業績低下して いる時期だろ。

 それを少しでも埋め合わせするために、政府を巻き込んで(何かいろいろと貢いで)、LEDの大量販売計画を立ち 上げたんじゃないか。しっかり、節電の夏という正しい大義名分もあるし。 》

 新聞ネタ。

《 先日、「独活」という文字を見て、「最近はあえて独身を貫くための活動もあるんだ」と勘違い。「独活=うど」 と読みます。山菜ですね。 》

 ネットの拾いもの。

《 あまりに眠いのでラジオ体操やります。……脇腹つった……痛い……。 》


6月13日(水) 面白かったのは、どうしてなのか
 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。安西水丸・和田誠『青豆とうふ』新潮文庫2011年初版、京極夏彦・選『 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎004』講談社文庫2009年初版、計210円。

 昨夕は小雨の中を徒歩で帰宅。ふうふう汗かいた。今朝は晴天。心地よい風の中を徒歩。気持ちよい汗をかいた。

 ご近所の悠々自適らしい旦那さんは、朝な夕な、首に紐のついた猫を遊ばせている。遊ぶというより猫の日なたぼ っこに付き合っている。老猫なのだろうか、お似合いである。

 早川良一郎『さみしいネコ』みすず書房2005年初版を面白く読んだ。感想は明日。

《 批評の出発点は、「この小説が面白かったのは、どうしてなのか」という自問にある。 》笠井潔

 先だって白砂勝敏氏が、新作の木彫オブジェを持ってきた。一目で面白い、と感じた。何故なのか。その理由を以 前下記のように表現した。

《 そうして完成した木彫椅子は、元の樹幹が有していた成長の特徴を、生命の勢いを、自ずから体現している。 》

 誰も見たことがないかたちの木彫造形。全く不思議な彫り込みで、手でふれてずっと見ていたくなる。造形といっ ても、作り手の造形への意思による力技が感じられない。作り手は木の気持ちを感じ取り、その木にそって彫り進み、 そうして彫りあがった造形、としか思えない。彼にしか出来ないかたち。木彫の椅子という制約から解放され、彫刻 はさらに面白くなった。樹幹との深い交感から生まれた不思議な造形は、さらに進化、深化してゆくにちがいない。

 ネットの見聞。

《 最近、池内紀『恩地孝四郎ー一つの伝記』(幻戯書房)が巷の話題になっているらしい。価格は6000円以上で馬鹿 高く、とても買えない。恩地孝四郎の版画といっても、実は伊上凡骨がかなり彫っているが、このことが出てくるのだ ろうか。恩地の師である竹久夢二の版画の摺師平井孝一に直接会い、「夢二の仕事はたしか『山によする』が最初でで なかったか。それ以来夢二のほか恩地孝四郎のものなど伊上凡骨が彫ったものの刷りはたいがい平井さんの所にまわっ てきた」と青江瞬二郎が『竹久夢二』(昭和45年)に書いているが。 》

 こういう書き込みには即反応。伊上凡骨(1875〜1933)、 名彫り師と謳われたひと。当美術館所蔵の石井柏亭の木版画も手がけている。

 岡崎武志は書評で書いている。

《 私がもっとも驚いたのは、複数枚刷ることが前提である「版画」技法において、恩地は「しばしば一点しか摺らな かった」ことだ。「摺りは表現そのものであって、いわゆる印刷の効用とは無関係」と著者は恩地の独自性を代弁して ことばにする。 》

《 著者には美術史家の派閥のしがらみも、定見にしばられる不自由さもない。豊富な図版を楽しみながら、学校では 教わらない、もう一つの美術史をたどっていくことになる。 》

 ネットのうなずき。

《 また今頃になって文科省は校庭の被曝許容基準を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げたことの「不 手際」を認めました。責任逃れの典型的なパターン。情報を隠し、実は…、実は…と修正して責任逃れをする。事故調 は徹底的な検証をすべきです。 》NHKニュース「「子どもの放射線量目安 不手際認める

《 「あ、これ買おう」と昼間思った本が何だったか思い出せない。 》

 机上のメモ用紙には「フョードル ソログーブ 岩波文庫」やら「角川文庫 立原道造 詩集」やら「高木彬光 骸 骨島」やら「スージー・クアトロ」やら。(じっと見つめて)思い出せ〜。思い出した。


6月12日(火) 2刷
 昨日買った本のように、詩歌小説などの文学書だと、初版を買いたくなる。が、誤植の問題がある。今ゆっくり読 んでいる三十年前の長編小説、「組する」が「与する」ではないかと、考えているが。これは初版なので、文庫本で はどうなっているんだろう、とちょっと気になる。

 ネットの書き込み。

《 島田裕巳『映画は父を殺すためにある』(ちくま文庫)、P99に5回も「デンキブラシ」と出てくるが、デッ キブラシと電気ブランが混ざっちゃったのだろうか。誤植だろけど、5個もだと自分の方が間違ってる気がしてきた り。 》

《 島田裕巳『映画は父を殺すためにある』(ちくま文庫)、「デンキブラシ」の件は2刷で直したとのこと。いや ぁ、増刷ってやっぱりいいものですね。 》

《 読者としては、買う選択肢がいろいろ欲しいです。全部の作家さんにあてはまるわけではありませんが、ハード カバーと文庫本、両方持っていたい。持ち歩き用に軽い本を同時に出してくれたら、両方買うのになあ。少数派なん でしょうか、こういうの。 》

 泡坂妻夫、種村季弘、中井英夫。服部まゆみらはハードカバー、文庫本どちらも持っていたい。文庫本の解説に一 喜一憂共感反発したい。しかし、現役作家では……見当たらない。

《 私はそのときに「学」に対峙すべきものとしての「術」の可能性というものを知ったからだ。 》

 学術、芸術。私の書いたもの、学もなく、芸もなく、なす術もなく……。小雨模様。

《 世界規模の現代美術展、独で開幕 愛媛の美術家も参加 》朝日新聞

《 世界最大規模の国際現代美術展「ドクメンタ」の第13回展が9日、ドイツ中部の都市カッセルで開幕する。 (略) 日本からは美術家の大竹伸朗さん(愛媛県宇和島市)が参加する。 》

《 この言い方はないよね。》

 上記朝日新聞の記事に私もあ きれた。「愛媛の美術家」とはまるで地方の県レベルの作家扱い。

 ネットの見聞。

《 「節電」は電力会社の経営の失敗、国の原子力安全の失敗、それに国が膨大な税金を原発にだしていたことの失 政をカバーする行為であることも同時に知る必要があります。 》


6月11日(月) 休館日
 近所の古本屋北山書店で文庫本を三冊。D・カーキート『こどもの国の殺人者』新潮文庫1982年初版100円、フレ ドリック・ブラウン『73光年の妖怪』創元推理文庫1963年初版100円、ブレンタ−ノ『ゴッケル物語』岩波文庫1976 年3刷改訳帯付100円、計300円。

 『73光年の妖怪』、厚木淳「ノート」から。

《 日本流にいえば忍術小説であり、知性体というとバタ臭いが、すなわち妖怪変化である。SFのバリエーション がついに日本の忍術小説の域にまだ達した、という見方も、あながち見当ちがいでもあるまい。それならば、こんど は山田風太郎氏の忍法帖シリーズなどをSFファンタジーと銘うって英訳したらどうだろう、と、ついよけいな感想 が湧いてくる。日本にはSFの伝統が皆無だといわれる。たしかにそのとおりだが、ファンタジーのほうならば、忍 法小説という世界に冠たる伝統があるのである。 》

 五十年近く経ったが、山田風太郎が英訳されたという話は、寡聞にして聞かない。

 ネットの見聞。

《 原発事故時の菅元首相の動きを支持する。理由、斑目委員長「水素爆発はない」、寺坂信昭保安院長「私は経済 卒業でわかりません」、近藤駿介「わかりません」、武黒一郎元東電副社長「情報がなくわかりません」。3機の全電 源喪失でこのひどい責任者たち。元首相が自ら動く決断をしたのは英断。 》

《 議員のホームページ北から全部調べてるんだけど、ホームページもない人、事務所の住所を公開してない人、大学 卒業してからずっと「政治屋」の人、原発のげの字も触れない人…いろいろいるなあ。やっぱこうして見ると総じて変 な人ばっかりorz 》

《 今から30年前、すでにニンテンドーがお掃除ロボット「ルンバ」を作っていた!!その名も「チリトリー」。

《 香川県はうどん県に アート県。 》

 ネットの拾いもの。

《 公共トイレに「美人トイレ」って看板出すと、そっちの方へいくのだろうか。 》


6月10日(日) 時の声/時間の墓標
 昨晩、ホタル祭りの後片付けの手伝いに行くと、知り合いのアメリカ人男性留学生から、ホタルを見たことがな いアメリカ人留学生四人の案内を頼まれ、源兵衛川を下る。中流の草叢にポツンポツンと十数匹のホタル。今朝彼 から四人とも喜んでいたと、伝えられる。やれやれ。

 深夜、NHKテレビ『着信御礼!ケータイ大喜利』のお題「日本 にホームステイに来た留学生にイラッ。なぜ?」。

《 食事のたびに「マツサカビーフ?」と聞いてくる。 》

《 「何が見たい?」と聞いたら「ドゲザ」と言われた。 》

 午前中は源兵衛川の月例清掃。六人参加。それから皆さんと昼食会。午後一時前開館。

 時の記念日。知人の誕生日。名前は時子。J・G・バラードの短篇「時の声」と「時間の墓標」を久しぶりに再読。前者は『時の声』創元推理文庫1966年初版、後者は『時間の 墓標』創元推理文庫1970年初版に収録。新刊で買って四十年余。縁は茶色く焼けている。しかし、小説はまったく退 色していない。時の試練を経て、その魅力は逆に風化を越えてさらに深まっている。傑作だ。

 ネットの見聞。

《 横須賀美術館、毎年3 億円超す赤字 》

《 そもそも東電の前社長、枝野との会話は何も覚えていないといっておきながら、菅直人との話はスラスラとおし ゃべりになる、ナメた態度だよ。事故調も追及の仕方が変なんだよ、つまらない言葉の定義みたいなことに拘泥して。 調査会側の主査が野村修也か。相変わらずだよ。 》

 ネットの拾いもの。

《 「ルンバ欲しいな」と呟いたら、ダンナが掃除機をかけてくれている。 》

《 みなさんが何処に住んでいるのかは判りませんが、足を向けて寝られません! 》


6月 9日(土) パラドックス/SFスナイパー
 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。笠井潔『オイディプス症候群』光文社2002年2刷、門井慶喜『おさがし の本は』光文社文庫2011年初版、計210円。前者、贈呈用が二冊に。ミステリ好きに贈ろうと思っているけど、これ は人を選ぶからなあ、と躊躇しつつ、買ってしまう。

 昨夜から雨。梅雨入り。午前四時過ぎ、揺れで目覚める。

《 静岡県中部で強い揺れ。気象庁によると、震源は静岡県中部。M4.1、深さ約30km。最大震度3。AQUA速報によると、 南北方向に圧縮軸を持つ横ずれ型。東海地震のようなプレート境界ではなく、2009年8月の駿河湾地震と同じフィリピン 海プレート内部での地震。 》

 昨日の続き。「日本ミステリー暗黒史」では村上春樹「品川猿」も取り上げられている。

《 これらのバカミスについては、そのおもしろさ/狂気性については何度も述べてきたので、これ以上は語らない。 》

 私は知らんが。再読。奇妙な短篇だ。綾辻行人「どんどん橋、落ちた」や木川明彦「黒い老人」に連想がつながる。 後者は『パラドックス32号 変格探偵特集』SF研究会パラドックス1992年に初掲載、それから『SFスナイパー』 副題が「『パラドックス』SF傑作選」ミリオン出版1998年に再録された。渋い短篇で、私の好み。

 都築響一『東京右半分』の表紙はオリエント工業のキャンディドール。たまらんなあ。

《 いま東京の若者たちがみずから見つけつつある新たなプレイグラウンド、それが「東京の右半分」だ。この都市 のクリエイティブなパワー・バランスが、いま確実に東、つまり右半分に移動しつつあることを、君はもう知ってい るか。 (序文より)》

 ネットの拾いもの。

《 「マルタの画家」というアイディア思いついた。「時をかける僧正」にしてもそうだがべつにダジャレのために アイディアをつくっているわけではないよ。 》某ミステリ作家

 ダジャレの題、一例。「一、ニ、三──死」「まだらのひもの」「そしてオリンエント急行から誰もいなくなった」。

《 コンビニのコピー機んとこに殺人計画って書いたメモ置き忘れてきたっぽい。 》某ミステリ作家

《 某テレビ局から、オウムの高橋克也容疑者の行方についてスタジオで推理していただけないかと打診。 》 某ミステリ作家

 ネットのうなずき。

《 福島第一原発事故の原因を調査する国会の原発事故調査委員会の黒川清委員長は8日、野田首相が記者会見で、 「国民の生活を守るために、大飯原発(福井・おおい町)3・4号機の再稼働が必要だ」と国民に理解を求めたこと について、「ぜひ国会から委託された独立した調査、その報告をしっかり見て、何も待たないで(再稼働を)やるの かなと。国家の信頼のメルトダウンが起こっているんじゃないのというのが私の感じです」と話した。 》


6月 8日(金) 奇想天外のミステリー
 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で三冊。柳澤桂子『生と死が創るもの』草思社1998年初版帯付、ロザムンド・ビ ルチャー『ロザムンドおばさんのお茶の時間』晶文社1994年初版、ニコラス・ウェイド『ノーベル賞の決闘』岩波同 時代ライブラリー1992年初版、計315円。『生と死が創るもの』の帯に「最後の随想集。」とあったので買ったが。最 期ではないということか。ウェブサイトには「 第二エッセイ集」とあるwww。

 小山正・編『奇想天外のミステリー』宝島社文庫2009年初版を読んだ。辻真先、霞流一ら五人のバカミス短篇と編 者小山正の「日本ミステリー暗黒史 バカミス狩り II 」「日本のバカミス一覧」から成る。小山正の二編が面白く、 かつ説得力がある。「日本ミステリー暗黒史」から。

《 一九八○年代に書かれたミステリーのなかで、もっとも笑撃的なバカミスなのが島田荘司の『斜め屋敷の犯罪』 であった。意外性のためならすべてが許されるという本格ミステリーの黄金律を体現したこの作品は、トリックのた めにキャラクターや舞台設定を細かく構築し、その努力の結果、幻想の中のリアリズムを成立させたのである。 》

《 世界で最も知られている日本のミステリー作家とは誰か?
  応えは、戸川昌子!
  彼女の小説は世界各国で翻訳されており、(略)また『火の接吻』の英語版 A Kiss of Fire にはP・D・ジェ イムズとルース・レンデルの絶賛コメントがついているほどだ。 》

 先だってブックオフ長泉店に『火の接吻』があったけど、程なくして消えた。私以外にも慧眼の士がいる。

《 最後にご紹介するのは、世界でも類のない究極の造本アイデアで作られたバカミスである。先日取り上げた作家・ 泡坂妻夫の長編『生者と死者』がそれで、私はこの本を実は二冊所有している。なぜならば……おっと、そのわけを 知りたければ、ぜひとも現物をあたってみるべきだ。絶対に、超ビックリするぞ! わっはっは! 》

 私はその新潮文庫『生者と死者』を未開封帯付、未開封そして開封済みの三冊を持っている。最初の一冊は新刊で、 あとは105円で。しかし、半分読んだだけの読者がいるとは。ネットの感想がなんとも愉しい。

 文化庁の文化審議会で著作物のパロ ディー規定の検討を始めたとか。どのように規制するのだろう。

 ネットの拾いもの。

《 水族館「脱走ペンギンのおかけで来場者倍増ですよ」 動物園「いいなーうちも真似しようかな」 クマ牧場 「…」 》

《 壁のカレンダーを見ると、こんな書き込み、「ブラ返却 吉」??

  「快楽亭ブラック『立川談志の正体』を吉祥寺図書館に返却する期日」だった。 》

《 もしゴッホがホッホと訳されていたら、日本での売り上げは約15%落ちていただろう。 》


6月 7日(木) 放課後はミステリーとともに
 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。小山正・編『奇想天外のミステリー』宝島社文庫2009年初版、有馬頼義/ 木々高太郎・編『推理小説入門』光文社文庫2005年初版、計210円。

 東川篤哉『放課後はミステリーとともに』実業之日本社2011年5刷を読んだ。『謎解きはディナーのあとで』の令 嬢刑事と執事の掛け合い漫才にたいして、こちらは男女共学の高校生が主役。面白さは甲乙つけがたい。思わずコー ヒーを吹いてしまう場面が続く。人前で読んでなくてよかった。『謎解き』が六話、『放課後』が八話。どちらを読 んでも損はない(両方読めば得する)大笑い本格ミステリーだ。泡坂妻夫、北森鴻亡き後、嬉しい書き手が現れた (って読んでなかっただけ)。「霧ヶ峰涼の屋上密室」にE・D・ホックの「長い墜落」を連想。

 「霧ヶ峰涼の二度目の屈辱」にこんな描写。

《 間違えるわけないじゃありませんか野に咲く可憐なタンポポと工事現場のクレーン車を間違えるようなものです 》

 工事現場の注意看板のウェブサイト『ジワジワくる 工事現場の風景』を連想。

 ネットのうなずき。

《 野田総理についての非政治家へのアンケートで「人柄が信頼できる」という回答があったのですが、野田総理の人 柄を知っている人がそんなに多いんでしょうか? 》

 ネットの拾いもの。

《 「日陰の男」「ステテコな女」(某百貨店のコピー) 》

《 旬感似顔絵家 》

《 ひそかに横綱を愛してしまった幕下力士の言葉「愛があれば星の差なんて」。 》


6月 6日(水) この空の花
 昨夜、ポルトガルの歌謡ファドの歌姫 ANA MOURA の CDをかけ、安物の赤ワインを二杯飲んだら、リスボンの裏通りにある歌謡酒場にいた。異邦人の気分。サウダージ、 旅愁、離愁、郷愁、そして愛愁。

 ネットの見聞。

《 椹木野衣さんは『この空の花』を、転生の映画だと! なるほど! と、僕はこの発見に、深く納得。…日本の太平洋 戦争、敗戦後の復興は、人の心を物 金に、変えてゆく作業であった。スクラップ・アンド・ビルドなる、戦勝国アメリ カの経済政策を真似てアメリカ以上の文明化、経済大国化を果たしたが、それによって、決して幸福にはなり得なかっ た。そして 戊辰戦争敗戦後の長岡の復興再生とは人作りの精神をこそ、日本の未来にムカう道筋として。それは自ずか ら転生の願い祈り。椹木さんはこの怪しい映像の塊に「転生」という道筋を与え、映画に育てて下さった。有り難い事 です。映画は受け止められて映画となる。いまツイッター仲間がみんなで、この映画を映画にしてくれている。この映 画に関われて、僕は幸せです。椹木さん 皆さん 有難う。この喜びを全国に、広げます。応援を… 》大林宣彦

《 「いったい福島第一の事故から何を学んだのか、と野田首相に問いたい。大飯原発が再稼動すれば、一気に他の原 発の再稼動につきすすむだろう。浜岡原発が再稼動し、大地震に見舞われれば、日本は終わりだ」「私は元々、原発容認 だった。しかし、核廃棄物の最終処理方法がないこと、地震が多い日本では特に原発はあってはならないことに気づいた。 この“気づきの輪”をもっと広げよう」。》水野誠一(元参院議員、株式会社IMA代表)

 ネットの拾いもの。

《 朝目覚めた瞬間から「よし、今日から本気出す!」という決意を胸に抱き、「さあ仕事するよ今日は仕事する よ!」とやる気満々なのだが、なぜ何もしないうちにもう昼なのか。時間を食う妖怪でも棲んでるのか。 》

 あ、正午の時報。

 ニューヨークに物々交換の自動販売機

《 米ニューヨーク・ブルックリンに、風変わりな自動販売機が設置されている。中に入っているのは本やおもちゃ、 手作りの作品など。どれもお金で買うのではなく、手持ちの品物と交換する仕組みになっている。 》

 原宿、秋葉原あたりで流行りそうだな。あるいは美大か。


6月 5日(火) 謎解きはディナーのあとで
 東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』小学館2011年12刷。気に入った。テレビ化番組を一部視聴したけど、本 のほうがはるかに面白い。

《 失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか? 》

《 令嬢刑事と毒舌執事が難事件に挑戦!  ユーモアたっぷりの本格ミステリ、ここに登場! 》

 帯文に偽りはなかった。本文のさわり。

《 「──凶悪な犯罪者もお嬢様の前でひざまずき、自ら懺悔をはじめることでしょう」
  「それ、魅力的って意味!? 回りくどいのね」 》48頁

《 「しかしながら、どれほど美しい薔薇とて、今宵のお嬢様の前では、色褪せて見えることでございましょう」 と最大級の賛辞。
  「まあ、影山ったら、正直者なんだから──」 》109頁

《 「こんな簡単なこともお判りにならないなんて、それでもお嬢様はプロの刑事でございますか。正直、ズブの 素人よりもレベルが低くていらっしゃいます」 》113頁

《 ここで普段の彼ならば、嘗め回すような好奇の視線で彼女を観察するところだが、残念ながらいまはとにかく 腰が痛い。男は腰が痛いと野次馬根性もスケベ心も盛り上がらない。 》172頁

 同病。「痛い」と打ったら「遺体」と出た。あれあれ。それにしても、同じ東でも、東野圭吾とはえらい違いだ。

 昨夜のテレビで、ニューヨークでは鶏を飼うのが流行りだとか。小鳥が(日本で)流行すると予想しているけど、 まさかN.Y.で鶏とは。

 ネットの見聞。

《 いまはお金があるから露骨にバカにされていないが、これでお金がなくなったら世界中からバカにされる。TP Pが話題になっているが、ウォールストリートの連中は虎視眈々と日本の懐を狙っている。シビアに世界を見て、気 を引き締めないと、あっという間にハゲタカに食い散らかされるわ。 》アメリカのヨシダグループ会長、吉田潤喜

 日本原子力研究開発機構の昨日閉鎖されたウェブサイトのマンガ「 放射線・放射能を夫婦げんかに例えた場合」の吹き出し。

《 奥さんの”怒鳴り声”が放射線 》

《 怒鳴り声をあげてしまうような奥さんの”興奮している状態”が「放射能」 》

《 怒って興奮している奥さんそのものが「放射性物質」 》

 こりゃ怒るわ。ネットの拾いもの。

《 「私は菊地直子なので結婚できません」と言う女優役の宮崎あおいが目に浮かぶ。 》

《 偽名の櫻井千鶴子というのは、櫻井よしこと上野千鶴子を合体させたのかな。 》

《 ローマ字に変換すると。SAKURAI CHIZUKO。これらのアルファベットの順番を変え、使い切ると (ダブりもあるが)、ASAHARA SHOKOU。 》

《 あ、小布施の…。「お一人さま」が無神経でダメなネーミングなんだとすると、「ヒトリシズカ」とか、「イ チリンソウ」にも改名要求が殺到することになるんだろうか。 》


6月 4日(月) 休館日
 昨日の毎日新聞読書欄に三木卓『K』講談社の著者記事。

《 2007年、72歳で亡くなった妻で詩人の福井桂子。出会いから死別まで、47年間の結婚生活を抑制の利いた筆致 で振り返った。作中では、イニシャルの「K」と呼ぶ。 》

《 30年におよぶ別居生活。 》

 ビビルなあ。ネットの拾いもの。

《 ドラマを見ていて仕事を頑張ってたヒロインが結婚と同時に家庭に入るという展開になると「辞めるなよもっ たいない!」といつも思っていたが、そんなフェミコードを持つ私にすら「おまえとっとと結婚して家庭に入れ、そ うすれば迷惑かけるのは婚家だけで済む」と思わせてしまう梅ちゃん先生の力。 》

 それはさておき。Kに引っかかった。『K』といえば久松淳の小説だ。新潮社から1990年に出ている。同名の本に 時折出合う。北杜夫が『黄色い船』を出した時、室生犀星に同名の先行作品があって、遺族に承諾を得に行った、と いうことを、昔読んだ。

 東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』小学館2011年12刷を読んだ。感想は明日。


6月 3日(日) ベルカ、吠えないのか?
 昨夕帰りがけにブックオフで二冊。カズオ・イシグロ『夜想曲集』早川書房2009年4刷帯付、東川篤哉『放課後は ミステリーとともに』実業之日本社2011年5刷帯付、計210円。

 古川日出男『 ベルカ、吠えないのか?』文春文庫2008年初版を読んだ。

《 イヌよ、この二十世紀/戦争の世紀/軍用犬の世紀が生み出した血統にして、地上のいたるところに散らばり、 増殖をつづけるイヌたちよ、お前たちの岐(わか)れた系統樹は最後にどこで接(つ)がれる? 》341頁

 二十世紀を生きた軍用犬たちを主軸に置いた、前例のない視点からの大胆な構想。

《 想像力の圧縮された爆弾。創作意図を問われれば、ひと言、それに尽きる。(略)それから歴史に挑む必要が生 じた。 》あとがき

 と、大胆に言いのける作家。それだけの自負を納得させる読後感。先行作『アビシニアン』に結晶のような硬質の 文体を感じたけど、これには液晶のような文体を感じた。この炸裂する疾走感。影響を受けた作家に詩人の吉増剛造 や小説のガルシア=マルケスの名が見えるが、納得。

《 生きのびて疾駆する。お前たちは死なない。 》114頁

 上記のように、現在形と呼びかけの語りが混在し、疾走感をいや増してゆく。

 ネットの見聞。

《 今日の議論聞いて思ったのは、現実とはそもそも何かを規定すること自体の難しさ。議論は蓄積されてるのだろ うけど、そうとうの難問じゃないのかな? まあ今日は、現実は直観的に指示できるということで議論してたが、ここ はけっこう難関。 》森岡正博

《 「いま」とは「世界がこのようになっている」ということから「世界叙述」を引き算したものという理解が今日の 議論で示された。それはヴィトゲンシュタインがかつて言ったことでもあるが、それだけでは不十分のように思う。世 界がこうなったという経歴の相関者が「いま」ではないのか。 》森岡正博

《 分析哲学系の人が「哲学では・・・」というときに思念されているものと、ハイデガー研究系の人が「哲学では・ ・」というときに思念されているものは、相互了解できないほど離れていたりする。そして英米系と大陸系の和解とか 真顔で言ってる人は、インド哲学のことなど脳裏にないことがほとんどである。 》森岡正博

 横尾忠則現代美術館が11月に 神戸で開館するとか。

《 横尾忠則が「現代」なのか、横尾忠則と「現代」なのか? 》

《 もう一つはエスタンプの制作方法だ。有名作家の原画をもとに版画作家が再制作して完成した版画に有名作家が サインを入れる。これは単純に売上げ増のために行われている。有名作家は本当に自分の作品だとは考えていないの ではないか。 》

《 いかに日常の中で「見る」ということを疎かにしているか、ということだ。なにも「見て」なんかいなかったんだ !…何が言いたいかといえば、買ってきた便座カバーの形状がちがった…… 》


6月 2日(土) 身体の文学史
 養老孟司『身体の文学史』新潮社1997年初版は、目から鱗が落ちる印象。再読してしまった(よくわからなかった から。頭悪いなあ)。

《 身体の消失自体は、一般的な文化現象ではない。むしろ西欧的な文化と、鋭く対立する点であろう。自然の排除、 人工空間の創出は、それに対して、一般的といってよい。それらは「脳化」の好例である。 》19頁

《 日本の文学は、心理主義を採用することによって、心を主とし、身体を従とした。しかし、それは文学に限定さ れない。 》49頁

《 しかし、中世的世界では、人はまず身体である。戦国武将は、常に身体的イメージを伴って描かれる。 》54頁

《 中世的身体を失うことは、江戸という近世の特質だった。 》55頁

《 身体がないところに、個の普遍性はない。 》59頁

《 個を保証するもの、それこそが身体であり、「ことばにならない」、その身体の普遍性を保証するもの、それが 「型」あるいは「形」だったのである。 》60頁

《 われわれがあらためて創り出さねばならない表現は、おそらく身体の表現である。 》192頁

《 文化的表現は、おそらく二つの軸に支えられている。一つは言葉であり、もう一つは身体である。 》193頁

《 部落の必要は、国法に先行する。きだ・みのるは『にっぽん部落』にそう書く。 》127頁

 ビックリ。『にっぽん部落』岩波新書1967年初版を本棚から出す。高校生の時読んで以来、記憶に深く刻まれてい る。それにしても、こう抜き書きしたら本質的なことが抜け落ちている気がしてならない。また、ポルノグラフィー、 人肉食についてじつに深い洞察がなされていて、これまた目から鱗だけれども、整理がつかず安易に書けない。養老 孟司自身、ちゃんと整理できてはいないと認めるだろう。時をおいて再び読むことになろう。

《 仮説が発見を導くのであって、解釈が導くのではない。 》17頁

 ネットの見聞。

《 ベニスビエンナーレ日本館の予算だが、アートのオリンピック等と言った発想は関係機関には無い。何処のバビリ オンも国を上げて自国の現代文化を喧伝し文化交流を推進するが、残念ながら日本館にはこうした予算は無いに等しい。 キュレーターやギャラリーがパーティや制作資金集めに奔走。文化二流 !! 》

《 国際展においても、日本国内でのみ通用する力関係が左右しているという面があると思う。日本の国も、企業も大 学もすべて恐ろしく内向きの評価がモノを言う社会になっている。 》

 青森県田舎館村の田圃アートに電気事業連合会と日本原燃から寄付金、田んぼアート展望所建設に2590万円。情けない。


6月 1日(金) 翻訳と日本の近代/身体の文学史
 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。ジェフリー・ディーヴァー『スリーピング・ドール』文藝春秋2008年2刷 帯付、ホーソーン『緋文字』岩波文庫1996年10刷、計210円。

 毎日新聞昨夕刊、大澤聡「雑誌観測」冒頭。

《 1946年、丸山眞男は東大憲法研究委員会に参画する。並行して、庶民大学三島教室の講師に招かれる。一般向けの 公開講座だ。晩年、こう回想した。教室の熱気は、明治維新時の世間の知的渇望感(『学問のすゝめ』の驚異的セール ス)を疑似体験させずにはおかなかった、と。大転換期に人々は新たな社会のビジョンを求める。 》

 昨日取り上げた丸山真男・加藤周一『翻訳と日本の近代』岩波新書ではその尋常ならざる熱気がひしひしと伝わって くる。それにしても、三島市なのだ。

 養老孟司『身体の文学史』新潮社1997年初版を読んだ。『翻訳と日本の近代』に続いてこれを読んだのは、偶然では なく必然、という気がした。どちらも明治維新以降を主題に据えている。『翻訳と日本の近代』から。

《 丸山 あの時代の文献を読むと、「足利時代の末の如く、これなり」というのがやたらに出て くるんだ。天下太平が音をたてて崩れると、甦る記憶は戦国時代なんです。サラリーマン化していた精神に武士の魂が 現象的に甦る。 》18頁

 『身体の文学史』から。

《 軍隊では、身体は存在しなくてはならないが、他方では、統御されなくてはならない。(略)それを思えば、一般 社会では、相変わらず江戸以来の身体消失の伝統が、十分に生きていたというほかない。ついには、神風特別攻撃隊に おいて、身体の無視、心の優位という江戸の伝統は、奇妙な復活を遂げる。 》22頁

《 この国の近世社会は、そこから身体をおそらく意図的に排除した。近世の社会や思想はそれを排除するように構築 されたのである。 》94頁

 明日に続く。

 午後、知り合いの銀行員が部下から鑑定を依頼されて、と明治時代の錦絵の折帖を持って来られる。明治十年代のも のだ。楊州周延(ちかのぶ)、国周(くにちか)、芳年らの名前が見える。資料をお貸しする。

 ネットの見聞。

《 野田首相「安全が確認された原発から再稼働していく」と言明。つまり「大飯だけではない」と言っている。この ままズルズルと伊方、玄海、柏崎刈羽…と狙い撃ちにしていくつもりだ。では「安全」とは誰がいつどういうふうに確 認したのか。野田首相よ、お前の確認など何の意味もない。本当に危険な男。 》

《 「人生の楽しみはその過程にある。命ははかないものだ。明日が確実に来るなどという保証はない。余計なものは 全部捨てろ」 》

 ネットの拾いもの。

《 年賀状のお年玉くじの当落をチェックしないまま6月。 》

《 疲れきった感じの同居人の「(仕事の)数字管理とかイヤだ!」という嘆きに、「あー、スージー・カンていたよ ね」と返して激怒されなう。 》


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