納得できる解決策は主人を元気な姿にして返してもらうことです。でも、誰が考えてもそれは無理であることはわかっていました。
では、それができないなら現状を受け入れるためにどうしたらよいか ――。
私は『再発防止』を徹底させ、『謝罪』の言葉を目に見えるかたちにしてほしい、と思うようになりました。
当該病院が5回目の面談で謝罪した後、「医療安全支援センター」の方に報告のため連絡をしました。私の気持ちを伝えると、裁判をせずに和解する方法もあると「医療事故研究会」という弁護士の団体のことを教えてくれました。
それがU先生を知ったきっかけでした。人生で初めて『弁護士さん』に相談することになりました。
私はU先生に「○○病院でこれ以上犠牲者が出ないようにするためには、私は何をして、○〇病院に何をさせたらよいのか助言がほしい」とお願いしました。
するとU先生は、「医療事故に限らず、まず事故というのは『再発防止』と『賠償』の二つの側面がある。医療事故の場合は、ご要望の『再発防止』を日本医療安全調査機構に委ねることになり、弁護士は『賠償』に関してお力添えをすることになる。」と説明して下さいました。
U先生のご助言のもと、考えを整理していく作業になりました。選択肢は2つになりました。
(1)裁判を起こし、世間に公表して、当該病院を社会的に撲滅する
懸念したことは、地方病院とは言え200床を持つ病院なので、地域医療の崩壊を招く可能性があるのかどうかでした。
そしてご近所から「どうしてあの病院にしたの?」と選んだ主人のせいにされたことにも納得がいかなかったので公表することも考えていました。
U先生は、医療事故に関してのその勝率は3割、さらに裁判という形で社会的制裁を受けるので、賠償に関しては見舞金程度になることを教えてくれました。また、地域医療崩壊はあり得るかもしれない、とも言われました。
(2)示談にする
社会的撲滅はないが、制裁は賠償というかたちだけになってしまう。これで病院は変わるのだろうか、と思いました。
結局、(1)なら地域の皆様にも迷惑をかけることになる。(2)なら病院の姿勢が変わる保証がない。どちらも本望ではないと思いました。
考えて考え抜いて、最終的に出した答えは、医療事故調査制度のセンター調査と並行して、賠償に関しても進めていく、センター調査結果を待って示談の方向で進めてはどうか、ということで方針がまとまりました。
医療事故調査制度のセンター調査で明らかな原因がわかれば、医療機関として反省しなければならないことははっきりするので改善せざるを得ない、と考えました。
U先生は、最後まで私の『再発防止』に対する意見をくみ取ってくださり、示談書案を何度も書き直し、事故の示談書としては異例の文言を織り込んだ文書を作成してくださいました。
その文書には、「心より哀悼の意を表する」ことと「医療事故の再発を防止するため、今後とも医療安全管理に努めることを約束する」ことが盛り込まれています。
これは、一般に考えると納得のいく文言ではありません。それでもこの文章が医療事故で示談書に盛り込まれるケースは先生のご経験上ないそうです。
ご尽力いただきありがとうございました。