携帯によろしく 第十二章(1)

「一平(いっぺい)さんナツさん!?」
「ご苦労様!?」
と言って、優(ゆう)の母の菊枝(きくえ)が入って来たのです。
「ご苦労様!?」
と言ってすぐあとに、優の父の大(まさる)も入って来たのでした。

「ナツさん悪いけど!?」
「お留守番のほうお願いしますねっ!!?」
「ヒデさんを、玄関のところで待たしてあるから!?」
と菊枝が言ったのです。

「では!?あとをよろしくお願いいたします!!?」
と言ってから、
「一平さん、では失礼いたします!!?」
と言ってお辞儀をすると、
急ぎ足でナツさんは、病室を出て行ったのでした。

一平はすぐに折りたたみのイスを1脚(いっきゃく)持って来て、
さっきナツさんが座っていたイスの横に、
それを置いたのです。すぐに、
「ありがとう!?一平さん!?」
と菊枝が言うと、
「ありがとう!!?」
と大も言ったのでした。
そしてふたりはイスに座ったのです。

「CDを交換したらまた優が涙を流したんです!!?」
「ナースステーションに連絡したらまた涙を採取して戻っていきました!!?」
と一平が言うと、
「そうですかあー!?」
「また涙を!??」
そう涙声で言うと菊枝は、優の顔を見たのでした。

「それと!?先生がその時!??」
「”あしたは、医学会の会合に出席しなければなりませんので!!?”」
「”留守にしますので、診(み)ることができないそうです!?”」
「”代わりの先生に事情を説明しとくからと”そう言っていました!!?」
と言って、一平がふたりに伝えたのでした。

「そうですか!?ありがとうございます!!?」
「それで先生はなんと言っておられましたか?!」
と菊枝が言うと、
「別に何にも言いませんでした!!?」
「看護師さんが?」
「”また何かありましたらすぐ連絡をお願いします”とのことでした!!?」
と一平は言ったのです。

「せっかくの休みをすまないなあー!?」
と大が言うと、
「いいえー!?なんにもできなくて!!?」
と、申しわけなさそうに一平は答えたのでした。

「実はきょう小百合の見合いでなっ!?」
と大が言うと、
「あなた!?そのことは一平さんはご存知ですよー!?」
「ねっ!?」
と菊枝がニコニコしながら言ったのです。

「はい!!?せっかく教えていただいたのですが!?」
「申しわけありません!?。知っていました!!?」
と一平が言ったのです。すると、
「なんだあー!?筒抜(つつぬ)けかあー!??」
「ふたりとも一平君に言ったなんて言わなかったぞー!??」
「男親(おとこおや)なんてそんなものかなあー!??」
と大が、ぼやくように言ったのでした。

「死んだうちの父もよくそう言っていました!!?」
「姉(ねえ)さんが付き合っている人がいることを!?」
「親父(おやじ)だけが知っていなかったんです!!?」
と一平が言うと、
「父親なんてそんなものですよー!?」
「うちだけではありませんよねえー!??」
と菊枝が言ったのです。

「なんかさびしいよなあー!?」
「優と一平君と付き合っていたなんて!!?」
「知らなかったものなあー??!」
と大が言うと、
「誰かお付き合いしている方がいるのは知っていましたけど!?」
「わたしも具体的なお名前は知りませんでしたから!??」
と菊枝が言ったのでした。

「結婚を前提にお付き合いしていたわけでありませんから!?」
「今思うと、優は俺のことを!?」
「お兄さん的な感覚だったのかもしれません!!?」
と一平は言ったのです。そして、
「小百合さんもそんな感覚かもしれません!!?」
と言ったのでした。

しばらく沈黙(ちんもく)が続いたあと、
「あなた!?もうそろそろお約束の時間ではありませんか??!」
と菊枝が時計を見て言うと、
「そうだなあー!?ヒデさんがもう下で待っているかもしれないなあー!?」
「じゃあー!?一平君悪いけど!??」
「これで失礼するよっ!?」
と言うと、立ち上がったのです。
一平もすぐ立ち上がったのでした。

「一平君!?そのまま、そのまま!!?」
と言うと、病室から出て行ったのです。
一平は会釈をして見送ったのでした。


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