携帯によろしく 第十二章(4)

ナツさんがすぐに玄関のところまで行ったのです。
菊枝もイスから立つと、
二人のあとを追いかけたのでした。

一平は靴を履(は)き終えると、
菊枝とナツさんに向かって、
「あしたは会社なので、小百合さんには送ってもらうだけですから!?」
「遅くなるようなことはありませんので!!?」
「ではこれで失礼いたします!!?」
と言って、お辞儀をしたのでした。

「小百合さん!?お気をつけて!!?」
とナツさんが言うと、
「わかってますわ!?」
と、小百合が言ったのです。
「では一平さんよろしくお願いいたします!!?」
と菊枝が言うと、
「はい!!?」
と言って一平は会釈をし、ふたりは玄関を出て行ったのでした。

一平と小百合は玄関を出て少し歩き、
ガレージに入リ、車に乗り込んだのです。
シャッターが上がりきると、
車は駐車場を出ていつもの道を、
一平のマンションに向かったのでした。

「きょうはお見合いなので、病院には来ないと思っていました!!?」
と一平が言うと、
「母にはまだ言ってありませんが!?」
「たぶん断られると思います!!?」
と、小百合が言ったのでした。

「小百合さんは!?」
「相手の方をあまりいい印象ではなかったのですか?!」
と一平が言うと、
「ふたりきりになってから!?」
「お付き合いしている方がいるんですか??!」
「そうおしゃったんです!!?」
と小百合が言ったのです。そして、
「どうしてですか?!と聞くと!?」
「お見合いの男性のお知り合いの方が!?」
「男性と、あるマンションに入るのを見たって、おっしゃったのです!!?」
と、小百合が言ったのでした。

「それって俺のことだよねえー!?」
「やっぱり、誰かに見られているような感じは!?」
「実際に見られていたんだあー!??」
と一平が言ったのです。すると、
「結婚を前提にお付き合いはしていませんけど!?」
「好きな方はいます!?と。」
「言っちゃいました!!?」
そう笑いながら小百合は言ったのでした。

「なんでそんなことをー!??」
「俺には結婚を前提に付き合っている彼女がいるって!!?」
「言ったじゃあー、ないですかあー!?」
と一平が言うと、
「わたくしは実際にその方とお会いしたことはありませんから!?」
と、小百合が言ったのです。

「信じてないのですね!!?」
と一平が言うと、
「いいえ!!」
「信じたくないだけです!!?」
と、小百合は答えたのでした。

それからしばらく沈黙が続き、
車は環七通りから早稲田通りに入ったのでした。

一平はしばらく考えたあと、
「一度、会わせますよー!?」
「彼女の都合を聞いてからですが!?」
と、一平が言ったのでした。
小百合は何も答えませんでした。
ただ前を見て運転していたのです。

一平も小百合が何も言わないので、
黙って前を見ていたのでした。
しばらく車は走り、
早稲田通りからマンションへ入る道に入ったのでした。
そしてじきに、マンションに着いたのです。
あいにく、来客用の駐車場は満杯でした。

「きょうは来客用の駐車スペースがありませんね!!?」
「玄関の前の道のところでバックすればいいでしょう!?」
と言ったあと一平は、
「小百合さんの都合のいい日はいつですか?!」
「やはり、土日のほうがいいのでしょう??!」
と言って、小百合のほうを見たのでした。






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