携帯によろしく 第十二章(3)

車は神宮外苑を通り、原宿を抜け、
代々木公園を通り、井の頭通りから環七通りに入ったのでした。
「もしもし!?ナツさん!??」
と菊枝が自宅に電話したのです。
「今そちらへ向かっていますけど!?」
「留守中何かありましたか?!」
と菊枝が言うと、
「いいえ!?別に何もございませんでした!?」
とナツさんが言ったのでした。

「一平さんもお夕飯をご一緒しますので!?」
「よろしくねっ!?」
と菊枝が言うと、
「きょうはそのまま帰られるようなことをおっしゃっていましたけど!?」
「小百合さんがお迎えに行ったおかげでしょうか??!」
とうれしそうにナツさんが言ったのです。

「そうかもしれないわねえー!?」
「ではのちほど!?」
と言うと、携帯を切った菊枝でした。
それからしばらく走ると、横道に入ったのです。
そしてじきに、白石家の家のガレージの前に止まったのでした。
すぐにシャッターが上がり始めたのです。
少し待つと、シャッターは上がりきり、車はガレージに入ったのでした。

三人は車を降りると、駐車場のドアを開け、
玄関に向かったのです。
玄関近くになると一平は早足で歩き、
先に着くと、ふたりが来るのを待って、玄関のドアを開けたのでした。

「ありがとう一平さん!?」
と菊枝が言い、すぐに、
「ありがとう一平さん!?」
と小百合も言ってふたりは玄関を入ったのです。

ドアを閉めると、
「すいませんナツさん!?」
「昼間病院では、そのまま帰るつもりだったのですが!?」
「また夕飯を食べに来てしまいました!!?」
と少し照れて一平は言ったのでした。

「いいえー!?一平さんが来ると和(なご)やかになるので!?」
「大歓迎(だいかんげい)ですよー!?」
「とにかく上がってください!?」
とうれしそうにナツさんが言うと、
「ありがとうございます!!?」
と言って、靴を脱ぎスリッパに履き替えた一平でした。
すぐにナツさんは台所に戻ったのでした。

菊枝が先に洗面所に行き手を洗いうがいをして、
すぐ台所に向かったのです。
菊枝が洗面所を出るとすぐ小百合が、
「一平さんお先にどうぞ!?」
と言ったのです。

一平は、「じゃあー!?遠慮(えんりょ)なく!?」
と言うと洗面所に入ったのでした。
急いで手を洗いうがいを済ませていると、
「トントン!?」とドアをノックしたのでした。
「もう終わりましたから!?入ってもいいですよー!?」
と一平が言ったのです。

小百合はドアを開け洗面所に入ってくると、
一平に近づき、洗面台に持っているポーチを置くと、
やさしく一平の胸に顔をうずめたのです。
そして一平はやさしく小百合を両手で抱きしめたのでした。
抱き合ってしばらくすると、
小百合は顔を一平の胸から離し一平の顔を見上げ見たのです。
そして二人は言葉も交わさず見つめ合い、唇を近づけ、
小百合が目を閉じると、ふたりはキスをしたのでした。

しばらくして我に返った一平は、
「とてもいい匂いだね!?小百合さんの匂いだねっ!!?」
と耳元で小さな声で言い、
「では先に食堂に行ってますから!?」
と大きな声で言うと、
急いで洗面所を出たのでした。

すっぴんだった小百合は、洗面所で薄化粧をしたのです。
そして三人はナツさんが手間をかけ作った料理を食べたのでした。
夕食を済ませると、
「あした仕事なので!?きょうはこれで失礼します!!?」
「ご馳走様でした!!」
と一平は言ったのです。

「そうですわねえー!?引き止めるわけには行きませんから!?」
「わたしが送って行きますわ!?」
と小百合が言ったのでした。そして、
「主人は何時に戻ってくるかわかりませんから!?」
「運転に気をつけて送って行ってねっ!?」
「あまり遅くならないようにね!?小百合さん!!?」
と、菊枝が言ったのでした。

「わかってますわ!?お母さま!?」
と小百合は言うと、
「では一平さん行きましょう!?」
と言って、イスから立ち上がったのです。
すぐに一平も立ち上がり、
「ご馳走になりました!?ナツさんとてもおいしかったです!!?」
「ありがとうございました!?」
とナツさんに向かって言ったのです。

「おばさま!?ではこれで失礼いたします!!?」
と菊枝に言うと、会釈をし、
足早に食堂を出て、小百合を追いかけ玄関に向かった一平でした。






▲Top