携帯によろしく 第四章(1)

「そのボストンバッグの中の物を、とりあえず入れなきゃーなあー?!」
そう一平は言うと、少し考えてから、
「スーツ入れているタンスの下に、引き出しがついているんだ!」
「今、中に入ってる、クリーニングに出してそのまま入ってる物を、
出しちゃうから、ちょっと待ってて!」
と言うと、隣の部屋に行き、下の引き出しを開けると、
中の物を全部出したのでした。
そして、引き出し自体を取り出すと、風呂場に持って行ったのです。

「いいわよ!空けてくれれば!?」
と、育子が言ったのですが、
「掃除してなかったし、育ちゃんの物を汚せないからさあー!?」
「ちょうどタイミングよかったかもしれない!」
と言い、タオルを水に少ししめらせると、
引き出し全体を、きれいに拭いたのでした。
一平はそれを持って、また部屋に戻り、元通りに、はめたのです。

「ありがとう!」
「一平ちゃんって、優しいのね!」と育子が言うと、
「そんなことないさあー!?」
と言って、少し照れたのでした。
一平はそれから、今まで入っていた物を、
タンスの扉を開けると、空いている下のほうに、重ねて入れたのです。

「これでよし!」と言うと、
「そのボストンバックのものなら、この引き出しで、入るだろう!?」
「それに着替えもしなきゃ、ならないし!」
「とりあえずこの部屋を使って!!」
と、一平が言うと、
「ありがとう!一平ちゃん!!」
と、うれしそうに育子が、言いました。
「じゃあ俺!隣の部屋でパジャマに着替えるから!?」と、言ったのです。
一平は、それから部屋を出て、ドアを閉めたのでした。

一平は部屋に来ると、
「あれ?こういうときは、どっちがいいのかなあ?!」
そう考えると、少し悩んだのですが、
とりあえず、今着ている下着のまま、パジャマを着たのです。
何もすることがないので、一瞬テレビを見ようと思ったのですが、
テレビは隣の部屋にあるので、パソコンのスイッチを入れたのでした。
スポーツの結果を見ようと、スポーツニュースのところを、見たのです。

しばらく見ていると、
「一平ちゃん!」と言って、育子が部屋に入ってきたのです。
声がしたほうを見ると、
育子が、たくさんの小熊の絵柄のパジャマを着て、立っていたのでした。
それを見た一平が思わず、
「かわいいね!そのパジャマ!」と言うと、
「パジャマだけ?!」と、育子が言ったので、
パソコンの椅子から立ち上がり、歩いていくと、
育子をやさしく、抱きしめたのでした。

そして一平が、
「いっしょにお風呂に入る?!」と訊くと、
「一平ちゃん先に入って!」
「わたし、さっき使ったお鍋だけ、少し焦げ付いたところがあったから、
水に浸しておいたの!?」
「こびりついてるから、きれいにしなきゃ!?」
「だ。か。ら。先にお風呂入っちゃってくれる?!」
「一平ちゃんが出たら入るから!?」
と、育子が答えたのです。

一平は少しがっかりしたのですが、
「うん!じゃあ先に入っちゃうよー!?」
と言うと、育子のおでこにキスしたのでした。
それから着替えをタンスに取りに行き、
それを持って風呂場に行こうとすると、
「洗濯する物は、いつもどっちのカゴに入れるの?!」
と、育子が訊いたので、
「下のカゴに入れる!」
と、一平が答えると、
「やっぱり!」
「じゃあ!わたし、いっしょに洗うから!?」
と、言ったのです。

「ありがとう!」
「じゃあ!下のカゴに入れとくから!?」
そう言うと一平は、風呂場に行き、風呂に入ったのでした。
育子はパジャマ姿のまま、エプロンをすると、
腕まくりをし、鍋にこびりついたのを、
一生懸命力を入れて、こすり落としたのでした。
「やっときれいに落ちたわ!」
そううれしそうに思ったときに、
一平が風呂から上がってきたのでした。

「ああー!いい風呂だったよ!」
そう言って、育子のところに来たのです。
「落ちた?!」
と育子に訊くと、
「落ちたわ!」
と言い、一平に鍋を見せた育子でした。
「すげえ!きれいになってるじゃん!!」
と、一平はわざと大げさに言ったのです。


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