携帯によろしく 第九章(1)

「あなた!?」
「一平さんが晩酌(ばんしゃく)のお相手をしてくれるそうですよ!?」
「食べたばかりなので、おなかを減らせるために!」
「体操までやってくれてましたわ!!?」
と少し笑いながら、菊枝が言ったのです。
「そうかあー!??」
「体操までなあー?!」
と少しうなずいて、大(まさる)が言ったのでした。

菊枝は急いで台所へ行ったのです。
冷蔵庫を開けキャビアと生ハムを取り出し、
しゃれた皿に盛り、それを持って来て、
一平が座る席のテーブルの上に出したのでした。

「お父さまは、どのようなお酒を飲まれますか?!」
と一平が言うと、
「いつもはブランデーが多いんですけど!?」
「銘柄(めいがら)はちょっとわかりませんわ?!」
「でも!?お酒は強いと思います!。」
と小百合は言ったのです。

「俺は!。いいえ!わたしはそれほど強くありませんから!?」
「どこまで付き合えるかわかりませんけど!?」
「適当なところで小百合さんが止めてくださいね!!?」
と一平が言うと、
「わかりましたわ!?」
「わたくしが一平さんをお送りしますから!?」
「父のお相手をよろしくお願いいたします!。」
と言って小百合は、一平に会釈したのでした。

それからふたりは、大がいる食堂に来たのです。
「一平さん!?そこにお座りになってくださいね!?」
「ナツさんが帰ってしまったので!?」
「そんなものしかなくて悪いんだけど!?」
「おつまみにして、食べてくださいねっ!?」
と菊枝が言ったのです。

「ありがとうございます!。」
「つまみがなければ鼻でもつまんで飲みますから!?」
と一平が笑いながら言うと、
「君はおもしろいなあー!??」
「さっき菊枝から聞いたんだけど!?」
「腹を減らせるために、体操をしてたんだってー!??」
と大が、ニコニコしながら言ったのでした。

「はい!ご飯がおいしかったのでちょっと食べ過ぎたんで!?」
「からだを動かせば、少しは減るかなって思ったので!!?」
と言ったあと、
「じゃあー!?失礼して座らせてもらいます!!?」
と言うと、椅子に座ったのでした。

「では、わたくしは一平さんの横に座りますわ!?」
「お父さまがあまり飲ませないように!!?」
と少し笑って、少し離れて置いてあるイスを、
一平のすぐヨコに持って来て座った、小百合でした。

「ところで君は、どこに勤めてるんだね!??」
と大が言うと、
「はい!遅れましたが!?」
と言い立ち上がると、胸のポケットから名刺入れを取り出し、
「ここに勤めています!!。」
と言うと会釈をし、大に名刺を渡したのです。

大は名刺を受け取り、
「座って!?」
と言うと一平は、
「はい!それでは!?」
と言い、すぐにイスに座ったのです。
大は、胸のポケットから老眼鏡を取り出し、
名刺を見たのでした。

「三武商事(みつたけしょうじ)の仕事が多いだろう!?」
と大が言うと、
「はい!いつもお世話になっています!!?」
と一平は答えたのでした。
「仕事がらみで会ったわけではないから!?」
「名刺は渡さなくてもいいだろう!!?」
と大が言ったのです。

「ええ!そのほうが正直言って、飲みやすいです!。」
と、うれしそうに一平は言ったのです。
「君は正直だなあー!?」
「まあー!?とにかく初めて会ったんで!?」
「乾杯するかね!!?」
と大は言うと、
一平の前に置いてあるワイングラスに、
ワインを注いだのでした。

「アルコールはだめだけど!?」
「小百合も何か飲み物を持って来なさい!!?」
と大が言ったので、
「はい!ではちょっと待っててくださいねっ?!」
と小百合は言うと立ち上がり、台所へ急ぎ足で向ったのでした。
小百合はジュースをグラスに浅めに注ぐと、
また急いで食堂に戻ったのでした。

「お待たせしました!?」
と言ってテーブルにグラスを置き、
小百合はイスに座ったのです。


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