携帯によろしく 第三章(1)

一平と育子が初めて会ってから五日が過ぎました。
金曜日の八時過ぎに、育子の携帯に一平から電話がかかって来ました。
「育ちゃんごめん!」
「仕事のきりがいいところで掛けたんだけど!?」
「あしたは、月曜の段取りの打ち合わせがあるんで、
午前中は、会えそうにないよ!?」と、一平が言うと、
「しょうがないわよ!お仕事じゃあ!?」
そう育子が言いました。

「あしたは設計の修正箇所の説明をしなきゃならないから、
お得意さんの担当者がうちの会社に来るんだぁ!?」
「もしかすると、お昼をどこかのレストランにでも、
連れて行かなきゃならないかもしれないから、
お昼はいっしょに食べれるか、わからないよー!?」
と言ったのです。
「いいわ!一平ちゃんに合わせるから!?」
「気にしないで!その代わり、夜は奮発してもらうからね!!」
そう、うれしそうに言ったのです。

「わかってるよ!任せなさい!!?」
と、一平もうれしそうに言いました。
「じゃあ!あした打ち合わせが終わって、
お昼をお得意さんたちと食べるようなら、午前中は電話しないから!?」
「もし食べないようなら、すぐ電話するからね!?」
と一平が言うと、
「いいわよー!?無理しないでも!!?」
「私も午前中はお洗濯して、お買い物したり、
いろいろしなきゃならないから、午後に電話頂戴!?」
そう育子が答えました。

「わかった!じゃあそうするよ!!?」
「今週はずっと残業だったから、
やっと、育ちゃんの本物の顔を見れるから、うれしいよ!」
と、一平が言ったのです。すると、
「私もよ!」「本当にうれしい!!」
と、育子がそう言ったのでした。

「じゃあ!?切るよ!」
「おやすみ!」
そう一平が言うと、
「うん!おやすみ!?」
「私のこと愛してる?!」
と、育子が言ったので、
「愛してるよ!!」と、言って唇を
画面に近づけたのです。

育子も唇を画面に近づけると、ふたり同時に、
「チュ!!」と言ったのです。
「じゃあねー!?」
二人はそう言うと、テレビ電話を切りました。
「バーカじゃねーのー!?」
と、少し訛(なま)りのある声が一平に聞こえました。
「先輩!帰ったんじゃないんですか??!」
と一平は、声がしたほうに振り向いて言うと、
「お前残して、俺だけ帰るわけねーだろー!?」
と言ったのです。

「月曜でいいじゃんなあー!?」
「打ち合わせなんてよー!」
「まったく!こき使うぜ!!?」と、先輩が言ったのです。
「しょうがないですよ!向こうはお得意さんだから!?」
「向こうのスケジュールに合わせなきゃあ!?」
「こっちの営業の段取りが悪くて、日にちがずれたから!?」
「でも向こうの担当者がよく休みに、こっちまで足を運んでくれますね?!」
と、一平が言うと、
「うちの部長の、大学の後輩だそうだ!」
「そういうこと!」
「じゃあ彼女と”チュ”したことだし、一平!帰るかあー!?」
そう先輩が言ったのでした。

「はい!じゃあ帰りますか?!」
「またきょうも、守衛所を通って!」
そう笑いながら一平は言いました。
「まったく、いちいち荷物検査をしなきゃ、出れないんだなんてさあー!?」
「笑っちまうよなあー!?」
そう言って先輩は、エレベーターに向ったのです。
一平もエレベーターに向いました。

ふたりはエレベーターを降りると、
廊下を歩き守衛所があるほうの出口に行ったのです。
「ご苦労さん!」そう言って先輩は出て行きました。
「山本一平です!」そう言うと、カバンを見せたのです。
「データは会社のコンピュータに入力保存しましたので、
このパソコンには会社のデータは入っていません!」
そう言ったのです。
「わかりました。では、こちらに記入をお願いします!」
と言うと、警備員は1枚の紙を渡しました。


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