携帯によろしく 第三章(5)

「それで、何時ということにしたらよいのでしょうか?!」
と、松平君が訊くと、
「昼飯食いながら資料説明を聞いたといっておけばいいよ!」
と、先輩が答えたのでした。
「はい!わかりました!!」
そううれしそうに、平君は言ったのです。
「じゃあ!よく部長たちが接待で使っている、
いつものホテルにしましょうか?!」と、一平が言いました。

「お前は、ホントに何にも考えてないなあ?!」
「接待って言っても相手によるよ、相手に!」
「うちの部長が接待するのは相手先が課長以上だぞ!!」
と、先輩が言うと、
「わかってますよ!先輩も一応課長代理ですから、
ぎりぎりで何とか、セーフってところで、手を打ちましょう!?」
と一平は、ニコニコしながら言ったのです。

「ぜんぜんわかってないなあ??!」
「なあー!?平君!」
そう先輩が言うと、
「すいません!僕が平(ヒラ)なのでホテルを使えなくて!!」
と、申し訳なさそうに平君が言いました。
「えっ!そういう意味ですか?!」
「お得意さん、って言ってもランクがあるよなあ!?確かに!」
と、がっかりして、一平は言ったのでした。

「一平!なっとくだな。と言うことで、平君!。”ちゃんこ”好きか?!」
と先輩が、平君に訊くと、
「ハイ、好きです!」と答えたのです。
「じゃあ決まりだな!」
「一平!”ちゃんこ”に電話しろ!!」
「会社の電話でな!」
先輩にそう言われた一平は、
すぐに”ちゃんこ”に電話して、席を確保したのです。
会社の名前を出したらすぐに、電話をその店の店長に代わったのです。
そして”今からすぐ行く”と言ったら、個室の席を取ってくれたのでした。

それから先輩と、一平は、勤務日誌を急いで書き終わると、一平が、
「着替えますから、先に行っててください!」と、言ったのです。
「じゃあ玄関のところで待ってるからな!」
と、先輩は言うと、平君とエレベーターのほうに歩いていきました。
一平は急いで作業服からスーツに着替えたのです。
ロッカーのあるところからは、階段のほうが近かったので、
即行で階段を降りて行ったのでした。
一平が玄関のところに来ると、ちょうどエレベーターからふたりが降りて、
玄関まで歩いて行くところでした。
「間に合った!フーウ!!」と、一平は一息ついたのでした。
そして、平君を加えた三人で、会社を後にしたのです。

「先輩!やっぱり課長代理のことはありますね!!」
「個室なんて考えませんでした。」
「ホテルがだめなら、うなぎ屋か、トンカツ屋か、定食屋か、
最悪ファミレスかなって、思いましたよ!」
と、一平が”ちゃんこ”をつつきながら言ったのです。
「お前は頭が固いからなあ?!」
「個室じゃあなきゃ、資料説明しながら飯を食ったにならねえだろう!」
「誰が見てるんだか、わからないんだぞ!」
そう先輩が、声を押し殺して言ったのです。

そして急に、大きな声で、
「平君!忙しいので、飯を食いながら資料説明してすいませんね!!」
と言ったのです。
そしてすぐ、平君に目で合図を送り、口のところで手を動かし、
しゃべるようにサインを送ったのです。すると、大きな声で、
「いいえ!こちらこそ、きょうは休みなのに無理をいって、
すいませんでした!!」
「これで!月曜日に、うちの会社に来てもらわなくても済みます!!」
と、いとも簡単に答えたのでした。

それを聞いた一平は、
「へえー!?」と、思わず言ってしまったのです。
それを見た先輩と平君は、
うれしそうに、”ちゃんこ”を、汗を拭きながらつついたのでした。
「もう春だからな!だからこそ、汗をかき掻き食べるのがいいんだ!」
と、先輩が言ったのです。しばらくして、
「残ったスープに、ご飯を入れます?うどん、ラーメン?!」
と、一平が言うと、
「もう俺は食えねえ!30過ぎたら、食えなくなったなあー!?」
と先輩が、少し訛りのあることばで、言ったのです。

「一平さんの好きなほうでいいです!」
と、平君が言うと、
「じゃあ!最初にラーメン!。
もし食べれるようなら、ご飯を追加しようか?!」
そう一平が言うと、平君がうれしそうに、
「じゃあ!それで、注文します!」
そう言うと平君は、近くにあったインターホーンの受話器をとって、
注文したのでした。






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