本来コーヒー紅茶などをお出しして、御もてなししなければいけませんが、
インターネットの都合上それができません。
ご自分で好きなものを適当に用意していただき、
キーボードなどの上にこぼさぬよう注意して、
ときどき飲みながらでもお読みくださいませ。 m(_ _)m
一平は作業服に一応着替えたのです。
ふだんは、スーツを脱ぎネクタイをはずし、ズボンだけ、はき替えて、
腕まくりをしてやるのですが、お得意さんの手前、着替えたのでした。
きょうは修正作業を行わないので、スーツでもいいのですが、
急に変更という事もあるので、そうしたのです。
先方からの連絡では、月曜日に担当者が打ち合わせが出来ないので、
きょう、行いたいということでした。
ところが急きょ担当者が変わるので、顔合わせに来たということだったのです。
設計の重要な箇所が済み、ほぼこれで設計が完成したという時に、
担当者が変わるのはときどきあることでした。
あとは細かなところの設計修正の連絡係とでもいうのでしょうか、
ほとんどが若手に、引継ぎされるのでした。
一平は玄関まで出迎えに出たのです。
「おはようございます!」そう挨拶すると、
今までの担当者が、
「きょう、二宮さんはいます?!」と言ったので、
「いますが、何か?!」
と一平が言うと、
「きょう他に用事があるので、じゃあ二宮さんに挨拶してから帰ります!」
と言ったのです。
一平は、今までの担当者と、新しい担当者を会議室まで案内したのでした。
「二宮さん!すいません!!急に担当が変わりまして!」
と今までの担当者が言ったのです。
「時々あることだから、気にしてませんよ!」
そう先輩が言ったのでした。
「じゃあすいませんが、私は急ぐので、彼にはすべて伝えてあるので、
よろしくお願いします!」
「こちらが二宮さん!こちらが一平ちゃんいや、山本さん!」
「この若者が、わが社の若手の中でも逸材の松平くんです!!」
そう紹介すると、
「じゃあ!?あとのことはよろしくお願いします!」
そう言って、
深々と頭を下げると、今までの担当者は帰って行ったのでした。
「相変わらず忙しそうだなあ!?」
そう先輩が言うと、
「ええ!これから中国に飛ぶそうです!!」
そう新しい担当者が言うと、
「やっぱりなあー!スーパーマンじゃあないかと思ったけど、
中国まで飛んでいくんだあー!?」
と、少し訛(なま)りのあることばで言ったのです。
「あはは!!」そう一平が笑うと、
「あはは!」と、新しい担当者も笑ったのでした。
「二宮さんって、おもしろいですね!!」
「先輩も言ってました!」
そう新しい担当者がニコニコして言ったのです。そして、
”松平健一”と書いてある名刺を出して、
「まつだいら、けんいち」と、言います。
そう言って、二人に名刺を渡したのです。
「松平健の息子さんですか?!」
先輩が名刺を受け取りそう言うと、
「よく言われるんですが、関係ありません!!」
と、答えたのです。
「だめだあー!それじゃあ面白くねえー!!?」
「なんか考えろぉ!」
そう先輩が、すこし訛りのあることばで、言ったのです。
「はあ!じゃあ!?考えてみます!」
と、新しい担当者の松平君が、答えたのです。
そしてすぐ、自分の”二宮泰三”と書いてある名刺を取り出すと、
「申し遅れましたが、わたくし”にのみやたいぞう”と申します!」
「今後ともよろしくお願いします!!」
と、まじめな顔をし、標準語で言って、名刺を手渡したのでした。
不意を突かれた松平君は、
「こちらこそ、よろしくお願いします!!」
そう言って、頭を下げたのでした。
一平も続けて名刺を取り出し、
「私は、”やまもといっぺい”と言います!」
「よろしくお願いします!!」
と言って名刺を渡し、頭を下げたのです。
「こちらこそ、よろしくお願いします!!」
そう松平君は言うと、お辞儀をしたのでした。
そして松平君は、
「すいません!二宮さん!?山本さん!?」
「ふだん!なんと、お呼びすればよいのでしょうか?!」
と、訊いたのです。