携帯によろしく 第三章(7)

一平は、ウーロン茶を飲み干すと、部屋に戻り、
ハンガーにかけてあるスーツから、携帯を取り出したのでした。
「あっ!メッセージが入ってるぞ!!?」
「きっと育ちゃんだな!?」
一平はうれしそうにそう言うと、
携帯に入っているメッセージを、聞いたのです。
「ヨーコって子といっしょなのか!?」
「てことは、夕飯はその子の分も払わなきゃーならないなあー!?」
そう言うと、スーツの中のポケットに入っている財布を、
取り出したのでした。

「1万と、5000円ちょっとかあー!?」
「どっちにしろ、銀行に行かなきゃなあー!?」
「さーて、行ってくるかあー!」
そう言うと一平は、ジャージのまま、
携帯と、財布と、小銭入れをポケットに入れると、
玄関に鍵をかけ、銀行へと出かけたのでした。
階段のところまで来て、サンダルを履いてきたのに、気がついたのです。
「まあー、いいかあ!?」そう言うと一平は、階段を下りていったのです。

もうすぐ1階にたどり着こうとする直前にサンダルが脱げそうになり、
その拍子で足首が、ぐれてしまったのです。
「いてえ!!」「まったくもう!」
「もうちょっとで、階段を降りきるところだったのにー!?」
そう言って、くやしがる一平でした。
軽い右足首の捻挫でした。
右足を少し引きずるように、銀行まで歩いて行ったのです。
銀行に着くと、ATMで、5万円引き出したのでした。

痛みが引かないので、育子に電話したのです。
「育ちゃん!ごめん!!」そう一平が言うと、
「どうしたの?!」と育子が訊いたので、
「さっき階段を下りるときに、サンダルが脱げそうになり、
足首を痛めちゃったんだよ!」と、言ったのです。
「痛いの?!お医者さん行かないでいいの?!」
と育子が言うと、
「医者に行くほどのことじゃあないよ!少し痛いだけだから!?」
「だから悪いけど!近くで、夕飯食べよう!!?」
「もちろん友達もいっしょに!」そう一平が言いました。

「ヨーコは、気を利かせて帰るって言うんだけど!」
「私は一平ちゃんに合わせたいから、いっしょに来なって言ったのよ!」
と、育子が言ったので、
一平は育子に、電話を替わるように言ったのです。
「初めまして、山本一平といいます!」
「育ちゃんからよく話は聞いています。親友だそうですね!」
「遠慮しないで!ぜひいっしょに、夕飯でも食べましょう!!」
と、一平が誘ったのです。
「ありがとうございます!イクからうわさは聞いていました!!」
「市田洋子といいます。よろしくお願いします!」
「じゃあ!?遠慮しないでいっしょに伺います!」
と、言ったのでした。

そしてすぐ「替わります!」とヨーコが言って、育子と替わったのです。
「無理しないでよ!一平ちゃん!!?」
と、育子が言うと、
「無理なんかしてないよ!階段降りるときに、ちょっと油断したんだ!!」
「どこで食べるか、育ちゃんに任せるよ!」
と一平が言ったのです。すると、
「わかったわ!」
「じゃあ一平ちゃん!部屋で待っててくれる!?」
と、育子が言うと、
一平は、「あい。わかった!!」と答えたのです。
「じゃあ!?切るわよ!」と育子が言うと、
「じゃあ!待ってるから!!?」と言って電話を切ったのでした。

「ヨーコって子、結構かわいい顔してるじゃんかあー!?」
と言って、一平はうれしそうな顔をしたのでした。
それからまだ少し痛い、右足首を少し引きずりながら、
自分のマンションの部屋まで戻ったのです。
さすがにこの時は、エレベーターを使ったのでした。
玄関の鍵を開けると、まっすぐに部屋に行き、
家庭用の救急箱を開けて、足首をシップをしたのです。
そしてちょっとベッドに横になったのでした。

「ピンポーン」とチャイムの音で一平は目を覚ましたのです。
1時間ほど寝てしまったのでした。
目をこすりながら玄関のほうに歩いて行ったのです。
「ハーイ!ちょっと待って!?」
と一平が言うと、玄関の外から、
「一平ちゃん!だいじょうぶー!??」
と育子の声がしたのです。






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