携帯によろしく 第三章(4)

「別に、苗字を呼んでくれればいいけど?!」
そう答えたのは、先輩でした。
「そうだよなあー!?でも俺は、一平のがいいと思うよ!」
「山本は、何人かいるから!」
そう一平が言うと、
「おおー!わるい、わるい!」
「二宮はひとりしかいないけど、山本はいるからなあー!?」
「一平さんならすぐわかるから!有名ですからねえ!?」
と、先輩は言ったのです。

「そんなに有名ですか?!」
と、松平君が訊いたので、
「白石のお嬢さんとお付き合いしていらしゃるんですから!?。」
と、先輩がおどけて言ったのです。
「先輩!もうとっくに振られてますよ!!?」
と、一平が言うと、
「だってお前きのう、携帯で、”チュッ”してたじゃーないかあー!?」
と、言ったのです。

「あれは違う子です!」
「いくら携帯に電話しても、変な男が出て、”バーカ”って言って、
電話を切ちゃうんですよ!」
「携帯に出ないって事は、きっと、
俺の声を聞きたくないほど、いやになったんですよ!!」
そう一平が言ったのです。
「俺なんか所詮、結婚の対象外だったんですよ!」
「そんなことより!打ち合わせをしましょう!?」
と一平は言うと、資料を二人に渡したのです。

打ち合わせと言うより、顔合わせなので、
二宮が面白おかしく話をしたのでした。
気を利かせて、白石優の話はしませんでした。
松平君も気を利かせて、一平に何も訊きませんでした。
月曜日に打ち合わせをしなくて済むように、
月曜日にする予定の事は、すべてやったのです。
「ということで、きょうはもう、終りましょう!」
と、一平が言って、打ち合わせを終えたのでした。

「じゃあ!これからの付き合いを祝して、
昼飯でも食いに行くかね?!」
と、先輩が言ったのです。すると、
「ええ!もう11時半ですから!?」
「このへんでは、いつもどちらで食べるんですか?!」
と、松平君が訊くと、
「松平君!」
「きょうは何時まで、”打ち合わせ”っていうことになっているんだね??!」
と、先輩が言ったのです。

「はい!一応午前中で終えて、そのまま帰宅することになっています!」
そう答えたのです。
「じゃあ!昼飯代は出ないんだな!」
「しょうがねえなあー?!じゃあ!おごっちゃうかなあ!??」
と、先輩が言ったのです。
「先輩!自腹ですか??!」
「ご馳走さんです!」
そう嬉しそうに一平が言うと、
「バーカ!きょうの予定みて見ろ!!」
と、先輩が言いました。

会議室を使う予定のボードには、今月の予定のところにしっかりと、
”土曜日の打ち合わせ。担当者二宮泰三。山本一平。”
午前中打ち合わせ。
昼食接待。
午後資料説明後、各自帰宅。予定時間未定。
と、書いてありました。
思わず一平は”パチパチ”と、手をはたいたのです。
「さすが先輩!抜け目ない!!」
と、言ったのです。

「そうだ!松平君。君さあー!”たいら”くん。
って言うのどう?!」
そう先輩が言いました。
「松平君じゃあ!言いにくくってしょうがねえやあー?!」
と、江戸っ子風に言ったのです。
「いいですねえ!」
そう一平が言うと、
「僕はかまいません!二宮さんがいいやすいほうでいいです!」
そう松平君は、言ったのでした。

「今日はみんな出勤しているから楽ですね!!」
「勤務日誌つけるだけでいいから!?」
と一平が言うと、
「ということで、たいらくん!よろしくお願いしますね!」
と、先輩が笑って言ったのです。
「ええ!午前中に打ち合わせをして、昼をこちらの会社で出してもらい、
午後資料説明を聞き帰った。ということでよろしいでしょうか?!」
「あのう!??」






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