携帯によろしく 第四章(4)

「育ちゃん待ってくれよ!?」
「悪かったよー!!?」
と、一平は言ったのです。
しかし育子は、すぐにドアを閉めたのです。
一平が部屋に入ろうとした、寸前でした。
ドア越しに一平は、
「ごめんよ!謝りたいからドアを開けてくれよ!!?」
と、育子に言ったのです。

「どうしたの?一平ちゃん!」
「ロックなんかしてないわよ!」
と、育子が答えたのでした。
それを聞いた一平は、なぜか、
「おじゃましまーす!」
と言って部屋に入ったのです。(弱い!。)
ドアを開け、顔だけで部屋を覗くと、
ちょうど育子が布団を敷いていたのでした。

それを確認すると、からだ全体を入れて、ドアを閉めたのです。
「悪かったよー!性病なんて言って!!?」
と、一平が言うと、
「わたしこそごめんね!?」
「”同棲”ってことばで、すっかり忘れていたことを、
急に思い出したの!?」
「一平ちゃんと、何度もキスしているのに!」
と、何事もなかったかのように、言ったのでした。

「よかった!すごーく怒ってるかと思ったよー!?」
と、一平が言うと、
「少し怒ったのは確かだけど!」
「すごーくなんか、怒ってないわよ!」
と、育子が言ったのです。そして、
「ここにあった物干しのセット、あっちの隅にかたづけちゃったけど!」
「あそこで、いい?!」
と言って、片づけたほうを、指差したのでした。

「ごめん!俺!片づけるの忘れてたよ!?」
「うっかりしてたあー!?」
と、一平が言うと、
「わたしが泊まるなんて!想定外だったから!?」
「しょうがないわよ!」
と、育子が答えたのです。

「俺のこと嫌いになったんじゃあーないんだ!!?」
「よかった!」
と、一平が言うと、
「もちろんよ!」
「好きじゃない人とキスなんかしない!」
「一平ちゃんのこと好きだから!?」
と、育子が少しはにかんで、言ったのでした。

「ごめんよ!」
「さっき育ちゃんが着替える前に、カーテン閉めるの忘れてたよ!」
「俺って!細かいこと気がつかないんだ!!?」
と、カーテンが閉まってるのを見て、一平が言ったのです。
「そんなこといいわよ!それより!?」
「敷布はどこにあるの?!」
と、育子が訊いたのでした。

「敷布かあー?!ちょっとまって!?」と、一平は言うと、
育子の荷物のために空けた引き出し以外を、
開けて見だしたのでした。
タンスの引き出しは2段だったので、
育子のために空けた引き出しの、すぐ下の引き出しに、
敷布は入っていたのです。
「あったー!やっぱりなあ!?」
「お袋のことだから、そうだと思ったよ!」
と、うれしそうに一平は言ったのでした。

「ありがとう!」
「敷くの手伝ってくれる?!」
と、育子が言うと、
「当たり前だよ!」と言って、
二人はいっしょに敷布を広げて、布団の上に敷いたのでした。
そして一平は、
「俺!性病じゃあないと思うけど!!?」
と、少し不安げに言うと、
「ごめんね一平ちゃん!」
「変なこと思い出して!?」
「一平ちゃんのこと、信じてるから!」
と、育子は言ったのです。

二人は近づくと、強く抱き合ったのです。
育子は抱かれると目を閉じたのでした。
目を閉じている育子も見つめると一平は、
「キスしていい??!」
と、育子に言うと、
育子は目を閉じたまま、軽くうなずいたのです。






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