携帯によろしく 第四章(3)

ドライヤーの音が消えると、育子は、カーテンを開けたのです。
それを待っていた一平は、
育子のところに駆け寄り、抱きしめたのです。
「シャンプーとリンス使ったよ!」
と育子が言うと、リンスのいいにおいがしたのでした。
育子は、目を閉じていたのです。

それを見た一平は、
「ここで寝ちゃあーだめだよ!?」
と、言ったのです。
すると、そのことばを聞いた育子は、すぐ目を開けたのです。

「ち、が、うー?!」と、甘えた声で一平を見つめて言うと、
一平が、「キ。ス?!」と言ったので、
育子はうなずいたのでした。
一平は育子を抱き寄せると、育子はまた、目を閉じたのです。
そして一平は、育子のおでこにキスしたのです。
おでこにキスされた育子は、いきなり目を開け、
からだを少しゆすって、
「ち。が。うー!」と、言ったのでした。

それから、自分の唇を、右手の人差し指の先で、
ほんの少し軽く、2回たたいたのです。
そのしぐさを見た一平は、
「いいの?!」と、育子に訊いたのです。
育子はまた、うなずいたのでした。
そして今度は、目を閉じないでいると、
急に一平の顔が近づき、キスされたのです。
唇にキスされると、育子は思わず、目を閉じたのでした。

キスが済むと、
「わたし、あの日なの!?」
「だから!きょうはキスだけネ!」
と、育子が言ったのです。
すると一平が、「あの日って??!」と訊くと、
「女の子のあの日よ!」
「わかってちょうだい!!?」
と、育子が言ったのでした。

「そーかあー!?」
「体調はだいじょうぶ?!」
と一平が言うと、
「うん!わたし、わりと軽いのよ!」
と、答えたのでした。
「わたしが使ってる部屋に、お布団があるけど
それ使っていいの?!」
と、育子は一平に訊いたのです。

「もちろん!いいさっ!!?」
「このあいだお袋が来た時に、布団を干してってくれたから!?」
と、一平が言うと、
「お母さま、ときどきここに来られるの?!」
と、育子が訊いたのでした。
「ひと月に1回か2回かな?!」
「洗濯と掃除に来てくれるんだよ!」
「そういえば、育ちゃんに会わせるって、言ったよなあー!?」
「いっしょに住んじゃって、同棲すれば、いずれ会うけどな!」
と、一平は何気なく言ったのです。

すると急に、育子は以前、高校のときの同級生で、
看護士になった子の話を、思い出したのでした。
同棲してて、その相手に性病を移されて、
病院に来た子がいたっていう話でした。
キスからでも移るものがあるって言う話だったのです。
その時は、「キスも簡単に出来ないわね!?」と言って、
その話は終わったのでした。

育子は一平にその話をしたのです。
「そうかあー!?」
「育ちゃんの不安な気持ちはわかるよ!」
「じゃあ!月曜日にさっそく病院に行って調べてもらおう!!?」
「俺はだいじょうぶだと思うけど!」
「キスで移るとなると、やっぱり、不安だよなあー!?」
と、言うと続けて、
「でも!もう何回も、育ちゃんとキスしてるから!?」
「二人とも性病だったりして!!?」
と、一平が冗談で、そう言ったのでした。

「言っていい冗談と、悪い冗談とあるでしょう!!?」
と、育子が少し怒り気味で言うと、
「ごめん!ごめん!!」
「悪い冗談でした!」
と、一平は育子の顔色も見て、言ったのでした。
「じゃあーわたし!お布団敷いて寝るから!?」
と育子は言うと、サッサと、
テレビの置いてある部屋に行ったのでした。
一平はすぐに、育子の後ろをついて行ったのです。






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