携帯によろしく 第四章 (2)

「でしょ!。”金だわし”だと直ぐ落ちるんだけど、
お鍋が傷になっちゃうから、こういう時困るのよねっ?!!」
と、育子は言ったのでした。
「一平ちゃん!。お風呂上りに何かいつも飲むの?!」
と訊くと、
「そーだなあー?」と言って、少し考えると、
「ウーロン茶か、缶ビールかな?!」
そう言うと一平は、椅子に腰掛けたのでした。

「いつもビールってわけじゃないんだあー!?」
「同僚と飲むようなこと言ってたから、毎日飲むんだと思ったの?!」
「ウーロン茶って少し苦味があるでしょ!?」
「わたし、最近は緑茶ばっかり飲んでるわ!」
と、育子が鍋を拭きながら、言ったのです。
「お茶っ葉は、あることはあるけど、急須もあるし、
お袋が揃えて置いてったから!」
「だけど飲まないなあー??!」と、一平が言ったのでした。

「そう!」
「嫌いなの?!」と、育子が訊くと、
「そんなことはないよ!」
「ただ!お茶っ葉を、急須に入れて、注ぐのはいいんだけど!?」
「茶殻も出るし、急須を洗わなきゃーだめだろ!?」
「面倒なだけさ!」
「コーヒーなら、茶殻は出ないからね!」
と、一平は言ったのです。

「わかったわ!これからはわたしがお茶を入れてやるからね!!?」
「そしたら飲んでくれる?!」
と、育子が言うと、
「うん!もちろん!!」
「何杯でも飲むよ!」
と、うれしそうに言った一平でした。
「じゃあ!片づけは済んだから!?」
「わたし、お風呂に入るわ!?」
「でも一平ちゃん!覗かないでよ!」
と言って、一平をけん制したのです。

「うん!そんなことはしないよ!」
「宣誓!」
「山本一平は、育ちゃんの入ってるお風呂場を覗かないことを、誓います!」
右手を上げて、そう言ったのでした。

「よろしい!」
「では、まいります!」
と育子は言うと、テレビのある部屋に行き、
着替えを持って、洗面所と脱衣所が兼用になっているところの、
防水カーテンを、閉める途中でもう一度、顔だけだし、
「覗いちゃ、やーよ!」と、念を押したのでした。
それからきっちりカーテンを閉めたのです。
足首は見えたので、着替えてる様子はなんとなくわかったのでした。

育子がお風呂に入ってるあいだ、何にもすることがないので、
一平は、冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、
栓をあけ、ひとくち飲んだのです。
何かつまみはないかと覗くと、いろんな物が入っていたのでした。
「育ちゃんに訊かなきゃまずいなあー?!」
と言うと、自分が買っておいた、魚肉ソーセージを出し、
ビニールを歯で千切ると、ビニールを手でむいて、ひとくち食べたのです。
「これで、”洋がらし”があれば最高なんだけど!!?」
と言うと、なぜか、”洋がらし”の新しい箱があったのでした。

「育ちゃんが、買って来てくれたんだ!」と思い、
その奥に、”わさび”と”しょうが”の箱もあったのです。
そしてソースもしょうゆもあったのでした。
しかもしょうゆは、減塩しょうゆでした。
マヨネーズもカロリーが2分の1のものでした。
一平は、「いろいろと考えて、買って来てくれたんだなあー!??」
と、思ったのです。そして、
自分は何にも考えずに、今まで暮らしていたのが、よくわかったのでした。

一平は、育子が風呂から出るまでのあいだ、
缶ビールを少しづつ飲んで、気を紛らわせようとしていたのでした。
しばらくすると、育子が風呂から出たのです。
カーテン越しに、
「一平ちゃん!?このバスタオル使っていいのね?!」
と言うと、一平は、
「うん!もしよかったら、俺、拭いてもいいけど!?」
と言ったのです。
「だいじょうぶ!自分で拭くから!?」
と育子が言うと、
「残念だなあー!?」と、少し大きな声で、一平が言ったのでした。

それから少し経つと、洗濯機をまわす音がしたのです。
「これでいいわ!」
「一平ちゃん!下着洗濯したから!?」
と言うとすぐ、
「一平ちゃん!ドライヤー貸してね!?」
と言って、ドライヤーをかける音がしたのです。
「うん!いいよ!遠慮しないで使って!!?」
と一平が、言ったのでした。






▲Top