中学高校時代にローカル的に大流行したトランプゲーム「ナポレオン」「ヘル」を紹介します。当時はあまりの面白さに熱中して「徹ヘル」したこともありました。こうして思い出して書いてみるとまたやりたくてやりたくてうずいてきます。それほど面白いトランプゲームなのです。「ナポレオン」は、インターネットで調べると実に様々なルールで行われており、どのルールが正式なものかなんてことはないようですが、我々のやっていたルールで解説します。「ヒル」については、調べても調べてもこれと同じゲームが見つかりません。似ているゲームはあるようですが、それでも違う部分が多くて・・。どなたかルーツを知ってる方はご一報下さい。
■ナポレオン
プレイ人数は4人ないし5人。
コントラクトブリッジに似ているが、かなりのアレンジが加わっている。
※地域などにより採用されてなかったり、ルールが多少違う場合がある。
◆ゲームの流れ
ゲームは、「競り合い(ナポレオンの決定)→ナポレオンによる副官の指名→ナポレオンのカード交換→本プレイ→勝者決定」と進行していく。本プレイでは、各プレイヤーが手札から1枚ずつ出し合い、一番強いカードを出したプレイヤーがその周の勝者となり場に出たカードを獲得する(これを繰り返していく)。より多くの絵札(A・K・Q・J・10)を獲得するのがゲームの目的である。
◆カードを配る
使用するのはジョーカー1枚を含む53枚、4人プレイなら各12枚、5人プレイなら各10枚を配り、余った札は伏せて場に置く。
◆カードの強さ
強い順に、スペードのA(オールマイティー)、切り札のJ(正J・セイジャック)、切り札と同色スートのもう1枚のJ(裏J・ウラジャック)、切り札のA、切り札のK・・・、切り札の2、台札のA、台札のK・・・、台札の2。これ以外のカードはいわゆるカスで無条件に負けとなる。例えば「ダイヤのA」は一見強そうではあるが、切り札も台札もダイヤでない場合は、全くのカス札扱いとなる。オールマイティ・正J・裏Jの上位3枚は特に強いので別格扱いされることが多い。切り札が指定されなかった場合(ノートランプ)の強さの順は、スペードのA(オールマイティー)、台札のA、台札のK・・・、台札の2、となる。裏Jに関しては取り扱いがやや複雑なため後述する。
◆競り合い(ナポレオンの決定)
各プレイヤーは手札を見て、「切り札のスートが何だったら、絵札(全部で20枚)を何枚獲得できるのか」を予想、宣言、競り合いをする。但し自分1人ではなく副官(後述)との共同作業で獲得できる枚数を予測する。切り札はスペード、ハート、ダイヤ、クラブのいずれかを指定する。切り札に指定したスートは1ゲームを通して常に他のスートより強いので、自分の有利になるようなスートを指定すべきである。つまり、手札にハートが多く含まれているなら、切り札をハートに指定した方がより多くの絵札を獲得できるはずなのである。宣言方法としては、「切り札がハートの場合に14枚の絵札を獲得できる」と予想した場合は「ハートの14」と宣言する。もし、スートに偏りがなく各スートの枚数がほぼ同じで、かつA・K・Qなどの上位札を多く持っている場合などは、切り札を指定しない「ノートランプ」という宣言方法もある(「ノートランプの13」などと宣言する)。宣言するのに順番の規約はなく早い者勝ち、つまりフリーオークション制である。当然ながら、宣言するしないは各プレイヤーの自由である。宣言時のスートの優先順位はノートランプ、スペード、ハート、ダイヤ、クラブの順で(※)、例えば「ハートの12」と誰かが宣言した場合、競り勝つのに必ずしも「13」以上を宣言する必要はなく、「スペードの12」か「ノートランプの12」なら競り勝つことができる(この場合ダイヤ・ハート・クラブを切り札に指定するなら「13」以上の宣言が必要)。最終的に競り勝ったプレイヤーがナポレオンとなり、ゲームの目的は「ナポレオンが副官と合わせて宣言した枚数以上の絵札を獲得できるか」になる。
◆ナポレオンによる副官の指名
ナポレオンは副官を指名することができる。といっても、人を指名するのではなく、カードを指定する(例えばオールマイティー)。つまり、ナポレオンが指定したカードを持っている人が副官となる。当の本人以外、副官が誰かはわからないわけで、そこがこのゲームの面白味でもある。ナポレオンと副官以外のメンバーは連合軍と呼ばれ、協力し合ってナポレオン軍を撃破しなければならない。なお、ナポレオンは副官を指名せずに1人で戦うことを宣言してもかまわない。
◆ナポレオンのカード交換
ナポレオンの特権としてカードの補強が行われる。場に残されたカード、4人プレイなら5枚、5人プレイなら3枚(※)を手の内に入れ、不要と思うカードを同じ枚数捨てる。もし、絵札を捨てるときは、何を捨てたか他のプレイヤーに見せなければならない。もしここで副官に指定したカードを引いてしまったら、ナポレオンイコール副官つまり独り相撲ということになり、他全員を敵に回すことになる。但し、その場合も気づかれないように平静を装うことが肝要である。
◆本プレイ
まず、ナポレオンが手札から場に1枚出す。各周の勝負で最初に出されたカードを台札と呼び、他のプレイヤーは、台札と同じスートのカードがある場合は必ずそのカードを出さなければいけない、但しジョーカーは出しても良い(※)。この最も基本的ルールは切り札を使用する全てのトランプゲームに共通する大原則なのである。台札と同じスートのカードがない場合は何を出しても良い。また、最初の1周だけは、オールマイティ・正J・裏Jの3強を除いて、切り札の効力は認められない(※)。全員が1枚ずつ出し終わったら最も強いカードを出したプレイヤーが勝者となり、場に出たカードを総取りするが、関係あるのは絵札だけなので、取ったカードの中から絵札を抜いて裏向きのまま自分の前に置く。取った絵札の枚数がわかるように置くのが望ましい。他のカードは裏向きのまま流す。勝者には次の台札を出す権利が与えられる。
◆注意したい裏Jの特性(※)
裏Jのスートは切り札として扱われる。つまり切り札がハートの場合はダイヤのJが裏Jとなるわけだが、見かけはダイヤなのに、常にハートとして取り扱う必要がある。例えば切り札がハートで台札としてダイヤが出された場合、手札の中にあるダイヤがJ1枚だけのケースを考える。ダイヤのJは裏Jであり、ハートとして取り扱う必要があるので、手札の中にダイヤは1枚もないものとして考えなければならない。つまり台札と同じスートが手札にないのだから何を出してもいいケースである。こんな例も考えてみる。切り札がスペードで台札としてスペードが出された場合、手札の中にスペードが1枚もなくクラブのJを持っているケース。クラブのJは裏Jであると同時にスペードとして扱われるため、当然ながらその裏Jを出すしかないわけである。
◆セイムツー(※)
全員が同じスートを出し、なおかつ2を出した人がいたら、2を出した人が勝ちとなる。ただしオールマイティー、正J、裏Jだけはセイムツーの適用を受けない、つまりこの3強だけは「2」に勝てる。また、ナポレオンが台札を出す1周目の勝負だけはセイムツーは適用されない。
◆ジョーカー
・台札として出した場合
これは切り札請求を示し、切り札のスートを持っている人は必ず出さなければいけない。持ってなければ何を出しても良い。勝負は無条件にジョーカーを出した人の勝ちとなる。オールマイティー、正J、裏Jといえども没収されてしまう(※)。オールマイティーが唯一負けるのはこの時だけである(ハートのQがオールマイティーに勝つというルールを採用しているところもあるが)。
・それ以外の場合
台札と同じスートがあるなしに関わらず、プレイヤーはジョーカーを出すことができる(※)。但し、その周の勝負についてはパス扱いとなり、無条件負けとなる。
◆スペードの3
スペードの3を台札として出し、かつ「ジョーカー請求」とコールした場合、ジョーカーを持っている人はスペード所持の有無に関わらず必ずジョーカーを出さなければいけない。持っていない人は通常のルールに従う。勝負も通常のルールに従う。この場合のジョーカーもパス扱いである。
◆ゲーム終了
ナポレオン軍が宣言枚数の絵札を獲得した場合または獲得できないことが明らかとなった場合、ゲームを最後まで進める必要はなくなり終了する。
■ヘル
プレイ人数は2人〜7人くらいまで。
◆ゲームの流れ
ゲームは、「勝利回数の予想→本プレイ→点数計算」と進行していく。本プレイでは、各プレイヤーが手札から1枚ずつ出し合い、一番強いカードを出したプレイヤーがその周の勝者となり場に出たカードを獲得する(=1回勝ったことになる)。予想した勝利回数どおりに勝利するのがゲームの目的であり、ナポレオンのように絵札の獲得が目的ではない。配られるカードの枚数がゲームごとに異なるのがミソ。
◆カードの強さ
強い順に、切り札のA、切り札のK・・・、切り札の2、台札のA、台札のK・・・、台札の2となっている。ナポレオンのようにオールマイティー・正J・裏J・ジョーカーは存在せず、セイムツーといったルールもない。
◆親について
使用するのはジョーカーを除く52枚。このゲームでは原則として親になった人がカードをシャッフルし、配ることになる。まずは、じゃんけんで負けたプレイヤーが最初の親となり、各1枚ずつ配る。次のゲームでは親は右隣の人に移動し、各2枚ずつ配る。このようにしてゲームごとに親が右隣の人に移動しながら配る枚数は1枚ずつ増えていき何ゲームも消化していくことになる。配るカードがなくなるところ(5人プレイなら各10枚を配るのが最高)までいったら、配る枚数を1枚ずつ減らしていき、最終ゲームは各1枚ずつ配り、そのゲームが終わったら大きな単位としての1ゲームが終了となる。各ゲームとも、余った札は伏せて場に山札として置き、一番上のカードだけ表向きにする。このカードのスートが切り札となる(ナポレオンとは異なり切り札のスートは神様が決める)。他の山札はゲームには使用しない。
◆勝利回数の予想と親の意義
各プレイヤーは切り札と手札の内容を見て、「何回勝てるのか」を予想、宣言する。宣言の順番は親の右隣の人から反時計回りに行い、親が最後に宣言する。但し親は、全員が宣言したとおりに勝利する可能性のある数は宣言できない。つまり5枚ずつカードが配られている場合は5回の勝負が行われるわけだが、親以外のプレイヤーが宣言した数の合計が3なら、親は2と宣言することができないことになる。全員の宣言した数の合計と配られているカードの枚数が等しいということは、全員が予想通りに勝利する可能性があるということだが、それでは面白味がない。よりゲーム性を高めるため、このゲームでは、毎回必ず予想が失敗するプレイヤーが出るようなルールになっているのである。各プレイヤーが宣言した回数は記録用紙にメモすること。やってみるとわかるが、配るカードの枚数が少ないうちは、宣言できる数に制限のある親はいささか不利である。
◆本プレイ
まず、親が手札から場に1枚出す。各周の勝負で最初に出されたカードを台札と呼び、他のプレイヤーは、台札と同じスートのカードがある場合は必ずそのカードを出さなければいけない。台札と同じスートのカードがない場合は何を出しても良い。全員が1枚ずつ出し終わったら最も強いカードを出したプレイヤーが勝者となり、場に出たカードを総取りする。取ったカードは裏向きのままきれいにそろえて自分の前に置く。勝った回数がわかるように置くのが望ましい。勝者には次の台札を出す権利が与えられる。
各プレイヤーの宣言した数の合計と配られたカードの枚数を比較することにより、誰かが余分に取りすぎてしまうのか、誰か取れない人が出るのか、どちらかわかるので、そのことを十分念頭に置いた上でゲームを進めていく必要がある。誰かが取りすぎてしまうゲームでは思わぬカードで勝ってしまうこともあり、確実に負けに行く戦法が重要となる。予想回数はピタリと当てる必要があり、勝ちすぎてはいけないのである。ナポレオンではひたすら勝つことだけを考えていれば良いが、ヒルではいかに負けるかが肝要となってくる。また、ナポレオンは他のプレイヤーとの協力作業が重要なのに対して、ヒルでは累計得点を競う個人戦というところも異なる点である。
◆スコア表
以下のようなスコア表を用意して点数を記録していくのがヘルの面白味のひとつとなっている。
最上行は配られたカードの枚数、各プレイヤーの欄には、左列に予想した勝利回数、斜線左側にそのゲームでの得点、斜線右側に累計得点を記入するようになっている。
得点の計算方法
予想が当たった場合の得点= 10 + ( 予想した勝利回数 x 3 )
予想がはずれた場合の得点= -3 x ( 予想した勝利回数と実際に勝利した回数の差 )
当然ながら「予想がはずれた」とは、予想した回数勝利できなかった時だけでなく、予想した回数を超えて勝利してしまった時も含まれる。得点表を見てわかるように毎回必ずマイナスのプレイヤーが少なくとも1人はいることになる。
この「ヘル」では、プレイヤーの技量がある程度のところまでいってないと、ゲームがとってもつまらなくなるという欠点がある。配られたカードがとてつもなく弱いカードなのに勝利回数をむやみに多く宣言すれば、他のプレイヤーは当然強い手だと錯覚して引いてしまう、結果共倒れとなり誰も点数を獲得できない。これでは最初から負けるためにやっているようなものである。勿論ゲームの途中で、自分が予想した勝利回数がはずれることが明らかとなれば、作戦を転換して他のプレイヤーも巻き添えにするようにプレイするのは至極当然のことである。誰かが取りすぎてしまうゲームでは、勝つ時は極力強いカードで勝ち、台札のスートがない場合に切り札以外の絵札を積極的に捨てていくのもごく当たり前の作戦である。
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