■決意
平成15年6月頃から実施されるという新しい小型船舶免許制度では、1級・2級だけの新しい区分となり、また水上バイクの免許が独立するようである。また、口述問題のウェイトがさらに重くなるらしい。それなら今のうちに取っておいた方が良さそうだ。本栖湖で水上バイクやってみたいし、あわよくばクルーザーで海に出てみたり・・。まあ、4級船舶免許は以前から取ろうと思っていたこともあり、今回ついに免許取ることを決意。
■スクール選び
取得の方法は通常、2泊3日の合宿講習か、いわゆる通いで取るか、ということになる。通いの場合は、学科講習・学科試験・実技講習・実技試験がそれぞれ1日ずつ。この日程は各スクールによって決まっているので、自分の都合に合ったコースを選ぶことになる。必要経費は全て込みで8〜9万円といったところ。合宿はそれよりやや高め。スクールによっては学科講習を省いて教材のみの自己学習ってところもあり、この場合、最も安いところで6万円(全て込み)をきるところもある。しかし、一般的な傾向としては、高いところの方が教材や講習・実習内容が充実していると考えた方がよい。
■王道「ヤマハ」へ
調べてみた結果、学科講習・実技講習・学科試験が全て日曜日と、日曜祝日しか暇のない私にとって好都合なヤマハボートスクールを選択。天下のヤマハなら安心だ。値段は全て込みで89000円なり。実技試験の日程だけは学科試験合格後に発表されるので選択の余地はないが、結果的には実技試験も日曜であった(本当は土曜だったけど頼んで変えてもらった)。もちろん、都合が悪い場合パスすることもできるが、こちらから指定することは出来ない。
■面倒きわまりない必要書類
申し込みに必要な書類は戸籍抄本又は本籍記載の住民票1通、写真4枚(3x3cm)、予備身体検査証明書1通、認め印1個。スクールによっても多少違うようだ。注意したいのは予備身体検査証明書。写真を貼り付けて、そこに医師の割印を押してもらうのだが、きれいに押されてないといけないらしい。さらに写真面に押された印は乾きにくく、ちょっとした接触で汚れたり消えてしまうので要注意。割印は念のため2・3個押してもらいましょう。また、こういった診断書の値段というのは保険点数のような決まりが特になく、病院側の言い値ということになるので、事前に調査しておくべきでしょう。ちなみに当院では3000円。
■学科講習〜9月8日(日)
何の予習をすることもなく学科講習の日となる。まず教材をもらう。教材はソフトケースに入れられ、その内容は教習テキスト、標識写真一覧、練習用海図、実技パンフ、全754問の問題集、ヒモ、蛍光ペン。今回の生徒は約20人弱。講義は朝9時から午後5時まで、途中昼食休憩1時間、小休憩数回をはさんで行われた。先生は感じの良い50代のおじさんで、なかなかの名講義。特に過去の試験に出たところを重点的に解説してくれるのが有り難い。テキストもカラー、写真入りでなかなかわかりやすい。試験頻出箇所と思われる重要箇所は青い字で強調されたり、アンダーラインがひかれたりしている。内容は初めて聞くことが多く、この段階でとても覚えきれるものではないが、だいたいこういうことを勉強すればよい、ってことが把握できればいいと思う。予習しておけばなお良いが。午後の講義はさすがに眠かった・・。学科試験に向けては、過去問からの出題率が極めて高いことを考えると問題集だけやれば十分なのだが、実技試験で口述問題が出題されるため、きっちりと基礎から勉強しておく必要がある。但し、口述問題についてもテキストに載っている口述問題集からほぼ100%出題されるから、時間がなければ問題集だけやるのも手だ。
■実技講習〜9月22日(日)
実技講習は試験艇と全く同じか、それに近いボートに乗って行われる。 講師は学科講習と同じ先生だ。実技試験ではエンジン始動、滑走、変針(45・90・180度全て)、蛇行、後進、落水者救助、離岸(前進離岸か後進離岸)、着岸といった操船の他、点検(エンジン、船体、消防設備、救命設備のどれか)、ロープワーク(係留、解らん、その他の指定された結び方を1種類)、海図での距離測定、海図記号の質問、標識の名称と意味についての質問、運転席の計器類に関する質問、ハンドコンパスでの方位測定が必ず出題される他、口述問題がある。よって、講習もそれに沿って行われる。船体やエンジンの各部分の名称は、試験前に直接見られる唯一の機会だから、ある程度予習していった方が無難。その他についても全般的に予習しておけばおくほど身になるので、十分予習しておくことを勧める。操船に関しては何をするにも、先生の指示の復唱、発声して安全確認、終了宣言をしっかり行うことを頭にたたきつけよう。
●エンジン始動から滑走
車のようにハンドルが戻らない、アクセル操作がすごくシビア、まあ何から何まで初体験だから戸惑うのも無理はない。車と違って、右手はハンドル2時方向、左手はリモコンレバーを握っていなければならないし、ハンドルはあくまで片手操作が基本。また、ニュートラルからクラッチがつながるまでがちと微妙な感じだった。これ、要注意(後に試験で大失態!)。滑走状態はかなり気持ちいいが、速度計がついてないからどのくらいスピードが出てるかは不明・・50km/hくらいだろうか?
●変針(45・90・180度全て)、後進
しっかりと変針先の目標物を決めるのが肝要だが、目立った目標が見つからないことも多い。特に180度変針は目標が取りにくいので要注意。しかし結局のところ、そんなにシビアに角度ばっちり決める必要はなさそうだ。後進は微速のため風が強いとシビアである。また、無風でも船尾が左に流されるので微調整が必要。私が運転した時はさほど強風が吹いているようには思えなかったのに、ハンドルを目一杯切った状態で真っ直ぐ後進するような状態であった。風、侮るなかれ。
●蛇行
滑走しながら気持ちよくブイ3個を蛇行して進む。先生曰く「唯一運転が楽しい課目」。目標物をしっかりとること、第1ブイへ入るタイミングと第3ブイ通過後直進に戻すタイミングが重要。
●落水者救助
実際には誰も落水しない、当たり前だけど(落水者に見立てたブイが投下される)。突然フイをついて「右(左)舷落水」と言われるので、結構慌てる。滑走中に行われるので、そろそろ来るなっと気配はわかるのだけど、それでも私の場合、動揺しまくった。また、無風に近ければ問題ないが、風がある程度吹いている場合は風下をきっちり見分ける必要があり、これが結構難しかったりする。波の向きと落水したブイの旗を目印にするのが良いと思う。救助時の合図確認等について、ヤマハテキストに書いてあることと先生の教えが若干異なっていたが、自分で納得のいく、先生の教えに従った。この先生、テキストより説得力のある教え方をするから、なかなか侮れない。
●着岸と離岸
厳密に言えば最も難しいのが「着岸」だが、生徒にはそこまで求められていないので、岸壁に衝突さえしなければいい…いや、衝突しても大丈夫である。というのは、実際の実技試験で、船首が岸壁に衝突しそうになり、あせった試験官にリモコンレバーを後進に入れられていた人がいたが、それでもその人、合格しちゃったのだ。もちろんこの受験生はその分、口述問題をきっちり答えられたし、もし厳しい試験官だったら不合格だったかもしれないが・・。
●点検、ロープワーク
とにかく覚えるしかない課目である。船体とエンジン点検の方法では、先生のやり方とヤマハテキストとの間に若干違いがあった。例えば船体の点検で、「船体の点検だから、『船首・船尾係留よし』は確認しなくてよい」とか「船に乗り込む前に船を揺すりながら『船体安定よし』と発声する」など。この先生、実際の実技試験に関する知識も豊富なようで、ここでも先生を信頼してみることにした。ロープワークでは、テキストにあるわかりにくい手順とは違って、先生は非常にわかりやすい手順を示してくれた。この先生、何者?ヤマハのテキストより凄い人?
●海図、標識、計器類、ハンドコンパス
さほど問題とはならない課目。覚えてしまうだけ。
●口述問題
口述問題に関しては、なんとなくわかっている状態ではだめ。質問されて説明しようとしてはだめ。それでも間違いにはならないが、自信を持ってはっきりと答えるのが重要なのだ。したがって想定された問題に対して答えを完璧に丸暗記しておき、質問されるやいなや、よどみなくスラスラと答えるのが肝要。勉強の仕方としては、実際に声に出して答えてみることが大切であり、実技講習終了時に貸してくれた口述問題練習用CDは強力な武器となった。実際の実技試験で、私・A君・B君に出題された口述問題は、例外なく全てテキストの口述問題集の中から出題されていた。はっきり言って、テキスト以外は覚える必要はない、といっても過言ではない。また、エンジンに関する口述問題も必出なので、普段見慣れないエンジンについては、この実技講習の際によく見ておいた方が無難だろう。
■学科試験〜9月29日(日)
学科試験は4択マークシート方式で全50問。 合格基準はトータルで33問以上、かつ、一般常識と船舶概要・航海・運用・機関・法規の各分野で50%以上である。試験時間は90分もあるので、時間が足りなくなることはない。さて、集合後、まずは今学科試験や実技試験等についての細かい説明。その後、20人くらいずつ6組にわかれて身体検査をする。といっても、「予備身体検査証明書の発行後、特に病気などしてないですか?」と質問されるだけ。「1種合格です」または「2種合格です」と告げられオシマイ。予備身体検査証明書になんの問題もなければ「1種」、例えば視力が0.6以下などの軽微な異常があると「2種」になる。「1種」と「2種」では、試験に落ちた時に再度予備身体検査証明書を提出しなくて済む期限が違うのだが、合格すれば「1種」だろうが「2種」だろうが何の関係もない。さて、いよいよ試験へ。
●まさかのミス!
問題は法規の1問を除いて、過去問題とほぼ同じだった。その法規の1問もそれほど難しい問題ではなく、テキストの範囲内だった。ひょっとしたら他の問題集には出ていた問題かもしれないが・・。
開始後20分は退出できない。さすがに20分きっかりで出て行く強者もいなかった。とにかく念入りに見直しするべし。私の場合、3回見直して満点を確信したが、とんでもない計算問題を落としていた!84海里を24ノットで航行した場合の所要時間を計算する普通のイージー問題。なのに私が出した解答は「84÷24=6」。計算式まで書いてあるのに、3回も見直したのに、間違いには気づくことなく退席してしまった愚かさ!なんでこんな変な思いこみをしたのか未だ不可解。とにかくうわべだけでなく気合いを入れて見直すこと。
●結果発表
翌日見事合格の知らせ。
実技試験は土曜午前、土曜午後、日曜午前、日曜午後の4部に、受験番号順に振り分けられた。私は土曜午後を指定されたが、日曜午前の人と交代してもらった。
■実技試験〜10月6日(日)
今回の試験艇は3艇。受験生は20数名。1艇に最高3人の受験生しか乗れないので、当然2巡目、3巡目の人もでてくる。試験に要する時間は1時間強なので、2時間以上待ちぼうけをくう受験生もいるわけだが、受験番号の若い私は1巡目。2・3巡目の受験生には、1巡目の受験生から情報が入るから多少有利なのかもしれないが、私的にはさっさと終わった方がやはり楽だ。本来は土曜日だった試験を日曜に変更してもらったため、同じスクールの受験生は私一人。なのに、スクールの先生はしっかり来てくれた。なんていい教官なんだろ。さらに、自分の乗る試験艇の計器類やエンジンルームの拡大写真を見せてくれた。しかし、こんなの持ってていいのかな?そいえば、他のスクールの先生なんか、試験官が来る前に試験艇に乗り込み、エンジンルームを開けて生徒に説明してた・・ちょっと反則気味のような気がするけど、いいのだろうか?
さて、教室で、試験官から各試験艇の滑走時のエンジン回転数が呈示され、いざ試験へ。
天気は曇り、波は穏やかで絶好の試験日和!!
●試験開始
まずは、もやい結び。そして、ハンドコンパス、エンジンルームの点検と進む。エンジンルームの点検後、「Vベルトが緩んだら、どうやって張りますか?」と聞かれたが、当然問題集にてチェック済み。「発電機の取り付けボルトを緩めて、Vベルトが適度に張るように、発電機を外側にずらします」と私。続いて試験官、「では取り付けボルトはどれですか?」、げっそんなの聞いてないぞ〜!?しかし冷静に発電機上部を見るとボルトが見え、「私が取り付けボルトよ〜」と訴えているかのよう。おそるおそる「こ、これです〜!?」と答えてなんとかクリア(だと思う)。着席後、海図記号(私はS[底質=砂]だった)、海図での距離測定、標識の名称とその意味(私は安全水域標識だった)、計器類の名称とその計器が異常を示した場合の点検部位(私は冷却水温度計だった)、を教科書通り完璧にこなした。今日の天気と日の入り時間もこの時聞かれたので、暗記していたとおりに「曇り」「17時23分」と無難にこなした。同乗の他の受験生はどうかというと、A君は完璧にこなしていたがB君はハキハキ感がなく、ちっとヤバそうな感じ。この後、解らんを行い、試験官が船を沖に出したところで操船の試験開始。
●操船での致命的ミス
確認作業を念入りに行い、順調な操船が続いたが・・、やってしまいました。落水者救助で致命的なミス。落水直後にエンジンを中立にしたはずがクラッチが完全に抜けていなかったのです!!つまり停船すべきところで微速前進状態だったわけ!このミスを後でうちのスクールの先生に話したところ、「危険行為に相当するからヤバイぞ〜っ」なんて脅されてしまった。でもB君なんか安全確認めちゃくちゃ怠ってるんですけど〜。減点にはならないかもしれないけど、「前後、えっと、左右よし、えっと〜右よし左よし、ん〜後方よし」って確認しすぎなんですけど〜。さらにB君、右舷落水と試験官に言われて5秒もそのまま滑走しちゃってるんですけど〜。
●スクールによる違い
変針、蛇行、着岸などは問題なく終了。ちょっと気になったのは、スクールによって教え方がだいぶ違うんだな〜ということ。今回他のスクールの受験生2人と同乗したわけだが、船体点検の方法、落水者救助時の合図やエンジン中立のタイミング、着岸時のエンジン中立のタイミングなど、私のスクールとは全然異なるところがあり、少し驚かされた。特に落水者救助でB君が運転で私がブイ(落水者に見立てたモノ)を拾う時、かなり手前でエンジン中立にされたもんだから、船が微妙にどんどん流されて、「おいおい届くのか、これは〜」なんて感じになった。マジ届かないかもしれないと諦めかけたが、落水寸前まで身を乗り出してボートフックを目一杯のばしてギリギリでたぐりよせることに成功。試験官も後方まで出てきて、取れるのかな〜って感じで見てた。乗船者一同ホッとした瞬間でした。
●さらなるミス発覚!
さて、操船の試験も終わって港に戻る途中で、ふと、気づいちゃいました。あれっ?私、減速とか停船の時、後方確認したっけ?げ〜っ!!忘れてる〜!減速または停船の指示は操船中に何回か出されてるが、その際、後方を確認して「後方よし」と発声しなければいけないのだ。しかし私は1回も確認した記憶がない・・アホだ・・。すっかり憂鬱になってしまったが、その後の口述問題は気合いを入れて、テキスト通りに完璧にスラスラ答えてやった。口述問題のウェイトが大きいと言われてるから、内心大丈夫と自分に言い聞かせるしかなかった。ところでA君の操船は確認を2度ほど忘れたのと着岸が少し斜めになったことくらいで、口述問題はパーフェクトと見事な出来、一方のB君は安全確認忘れ放題で着岸もあわや接触ギリギリ、と操船ぼろぼろながらも致命的ミスはなし。また、口述問題も自信なさげにしどろもどろ答える最悪のパターンながら明らかに間違えたのは2問だけだった。きっとこのくらいなら合格できるはず・・だから私も合格なはず・・。でも、B君のように緊張しすぎだけは禁物である。ただこの状況、緊張するなって方が無理な話。それに人それぞれの性格もあるので・・。とにかく十分練習して自信をつけておくのが、リラックスできる唯一の方法ではないだろうか。
●結果発表
4日後の木曜、結果発表。スクールに電話すると、「あっ、インターネットで見ましたか?」なんて意味深な答えにギョッとなったが、無事合格だった。スクールで海技免状の発行手続きもしてくれ、約10日ほどで免状を手にすることが出来た。ちなみにさんざんな操船だったB君、そしてA君ももちろん合格だった。
■まとめ
4級船舶免許取得攻略法を合格後に改めて考えてみると、(1)過去の問題集をひたすら自力でやり、(2)スクールで実技講習を1回受け、(3)口述問題集をみっちりとやる、これだけで十分合格可能であり、コスト的にも安くつく。テキストのお下がりを譲り受けることが出来ればなおいい。もちろん、「スクールに入ってみっちりやらないと不安だ」というなら、それも選択肢のひとつ。私の場合は、「合格するためにここまでする必要はなかった」という現実がある反面、ヤマハを受講したことに何の後悔もなく、むしろ充実感満足感でいっぱいであった。結局、4級小型船舶免許というのは、一見難しそうではあるが、それなりに勉強すれば誰でも合格できる簡単な免許といえる。試験問題が完全にパターン化していて、決して裏切らないのだから・・。
以上、 4級小型船舶免許を取ってみようと思っている方に、少しでもお役に立てたら幸いである。
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