1976年3月24日に表富士5合目レストハウス及び表富士登山道を破壊した表層雪崩。標高2700m付近の尾根の風下に雪庇状に吹き溜まった積雪層が表層雪崩を起し、5合目レストハウスを直撃した。この雪崩雪塊はレストハウス屋上をジャンプ台として約20m下のループ道路面に滝状に落下、攪拌によって雪片をまじえた冷気体の流れに変化した。滝壷(道路面)にある規模の大きさの冷気塊(周辺の大気に比較して低温で密度が大きい)が形成されると、斜面に沿って樹林をなぎ倒しながら高速で流下する。各々の冷気塊は流下時の樹木の抵抗と気塊の持つ慣性力によって少しずつ流下経路が異なるため網目状の雪崩流路が残されている。雪崩デブリの量は少なく、倒木流木片が極めて多い。実態としては煙型の高速雪崩に類するものであろう。
このような煙型の高速雪崩が、スラッシュ雪崩の起き易い春にも発生することに注意しなければならない。1990年以降、11月下旬から12月上旬にかけての初冬期に表層雪崩だけでなく、スラッシュ雪崩もしばしば発生するようになった。
富士山では低気圧の規模、通過の位置、降雨降雪の際の気温などによって様々なタイプの雪崩が、様々な時期に発生する。地球規模の気候変動期に直面している今日、富士山における雪崩災害現象もより多様化する可能性がある。
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