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犬山市民の戦争体験
『短歌にみる戦争体験』 吉野昭光さん
駆逐艦巡洋艦に潜水艦 帽子の向き変え海軍遊び
「のらくろ」と「冒険団吉」楽しみて 少年倶楽部を回し読みする
夏休みの無声映画の楽しみは 学校の先生が弁士になって
戦中のクラスに長髪二人いて あとは坊主の貧乏学区
授業中いきなり呼ばれ戦勝の 号外配ると友は出て行く
祭日に戦勝祈願の神参り 日の丸キャラメル土産にもらい
出征を祝いて幟押し立てて 町民挙げて氏神詣で
日参の少年団旗の神参り 賞状呉れし熱田神宮
玉子シャンプーの粕より成れる石鹸の 忽ち売れし戦時の商い
美術にも投影図とか工図入れ 国策によぎらる商業美術
稲刈りに勤労奉仕の我々の 唯一の楽しみ昼の銀飯
体力の検定得ると一万メートル走 学年ごとにスタート切る
大曽根でトラック荷台に載せられて 飛行場つくりに寒風を行く
桑繊維の作業衣纏い下駄履きで 学徒動員の工場通い
食料の産直仕入れが咎められ 父は三日の警察留置
燃料の薪と変わりし気動車の エンジンかかるは運転士の技
砂を入れし雑嚢かけて全校生 行軍レースのスタートを切る
真珠湾攻撃ニュースの流るる日 査閲「優秀」と担任の言ふ
高すぎる砲撃訓練と錯覚し 敵機と知らず手を振りし我
名港でオール漕ぐ先特攻機 載せてフェリーの港出て行き
国策に「CA]校章は敵語なりと 名商変わる生徒の帽子
父留置免罪祈願に熱田詣で 帰りし母は脳卒中
疎開して馬車は一番花形と 開業の父は馬車に轢かるる
伝統の卒業証書の巻本も 戦災うけて謄写版刷り
機銃掃射浴びいる中で営みし 父の葬儀を今も忘れず
宿題は先陣訓を学ぶこと 配属将校に毎週書かさる
終戦後間もなく卒業実務科の 贈る言葉は「只生きよ」のみ
(了)
愛知県犬山市 平成9年8月15日発行
「平和を願って 戦後50年 犬山市民の記録」より転載
(自費出版の館内の地方公共団体発行 NO.2)
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