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写真7. 富士山西斜面にある富士大沢崩れの源頭部。
春から秋にかけて絶えず崩壊を繰り返し、谷底に崩土を堆積させている。一方冬の間は急斜面に吹き溜まった雪は、谷底になだれ落ちる。こうして多年にわたる岩礫崩土となだれデブリのサンドウィッチが形成される。
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写真8. 富士大沢の中流部に流出した巨礫。
富士大沢の谷底部に堆積した岩礫やなだれデブリは、春や初冬の降雨を起因とする融雪なだれを契機として一気に流出し、土石流災害を引き起こす。直径3mを越す巨礫が大沢扇状地に散乱している。 |
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法地学Q and A
Q. 法地学とは何ですか?
A. 法地学とは地球科学の基礎分野である地質学、自然史学、地球環境科学の応用部門のひとつで、人間社会の枠組みを設計している法と人類が生存している地球表面の地質、地盤、土壌あるいは水を含む地球自然環境との間に、人間の作為が介在することで生ずる様々な軋轢を、より少ないストレスで合理的に解決するための学問であると考えています。
Q. 法医学という言葉がありますが、法地学とどのような違いがありますか?
A. 法医学は医学面から、法地学は地学面から裁判をサポートするという点では変わりません。しかし対象を人そのものとするか、人間の作為が加わった地球自然とするかという点で大きな違いがあります。これを対比して示せば以下のようになりましょう。
法医学と法地学との違いのおおまかな対比
項 目 |
法医学
Forensic Medicine |
法地学
Forensic Geology and Geoenvironment |
対 象
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人―人の行為
人―社会行為
個人法人の経済行為 |
人―地球自然
人―自然改変行為
個人法人の文明化改変の経済行為 |
法的評価 |
故意の人身殺傷
故意又は過失による事故
法律違反 偽計
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人身障害 心理的障害
物的損害 金銭損害
契約違反 瑕疵 不作為 注意義務違反 |
法的判断 |
刑事罰 罰金
課徴金 その他 |
損害賠償 原状回復
和解 謝罪公告 その他 |
裁判への関与 |
検視 司法解剖 鑑定
生化学分析 DNA解析 |
現場踏査 地盤調査 土質試験 地質解析
地球物理的解析 地球化学的分析 鑑定 |
Q. 法地学は裁判にたいしてどのような形で貢献できますか?
A. 対象となる事案には必ず自然物、自然現象が絡んでいますので第一に実地調査による事象の正確な把握と論議の基礎となる証拠物件や証拠文書の整備登録が必須で、なおかつ法曹3者に事実として認められるものは事実として共通に認識していただく必要があります。この場合大切なことは、事実と解釈とを混同してはならないことです。 第二に裁判を始めるにあたって準備協議の段階で上記の事実を法地学的知見のスクリーンのかけ、論点整理をおこなうとともに事実の解明になにが不足で今後なにをなすべきかを提言します。この段階までは法地学者が貢献できる[裁判の土俵作り]の重要な分野です。
第三に裁判が進み法廷での論議の争点が明確化すると、キイ・ポイントの解明のための様々な調査、試験、解析、シュミレーションなどが必要となります。これに対して時と段階に応じてその手段、方法、手順などを助言することも法地学者の大きな役割です。第四は法地学の専門家として法廷に出席し、鑑定人参考人として証言することです。
以上のように法地学者には深い専門的知識と高い倫理性がもとめられます。当事者の意見をよく聞き取る忍耐力と公平な判断力も欠かせません。
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