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『愚の旗』掲載
詩 「演 習」 
竹内浩三


 

この文は竹内浩三さんの作品集に写真を加え、心象風景を連想させる新たな作品集として松島 新さんが企画構成した「愚の旗」に掲載されているものです。
出版社および企画・編集者松島新さんの掲載許可を得ています。この記事の無断転載は厳禁です。

「愚の旗」132ページ
詩 「演習」

                               竹内浩三著

ずぶぬれの機銃分隊であった。
ぼくの戦帽は小さすぎてすぐおちそうになった。
ぼくだけあごひもをしめていた
きりりと勇ましいであろうと考えた
いくつもいくつも膝まで水のある濠があった
ぼくはそれが気に入って
びちゃびちゃとびこんだ

まわり路までしてとびこみにいった
泥水や雑草を手でかきむしった
内臓がとびちるほどの息づかいであった
白いりんどうの花が
狂気のようにゆれておった

ぼくは草の上を氷河のように匍匐しておった
白いりんどうの花が
狂気のようにゆれておった
白いりんどうの花に顔を押しつけて
息をひそめて
ぼくは
切に望郷しておった

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2002年1月6日、メールにて松島 新さんより情報提供いただき、
その後ご寄贈頂きました書籍「愚の旗」より転載しております。

 出版社および企画・編集者松島新さんの掲載許可を得ています。
               禁無断転載です。

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