メダカってどんな魚?

「メダカ」とはどんな魚なのか、まとめてみました。
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項目一覧
いきものとしての「メダカ」
メダカって何種類いるのか
オスとメスの見分け方
絶滅危惧種?
日本各地のメダカ
いきものとしての「メダカ」


ニホンメダカ(オス)
種名:メダカ(ニホンメダカ)
学名:Oryzias latipes (Temminck et Schlegel, 1846)
英名:Medaka, ricefish, Japanese killifish
ちなみに全国で、約5000ほどの地方名があるそうです。
学名の「Oryzias」は「稲田の」、「latipes」は「大きなヒレを持つ」という意味。

分類:ダツ目アドリアニクチス(メダカ)科
ダツ目は、トビウオやサンマ、サヨリなどの仲間がいます。メダカのまわりにいる魚たちはコイ科の魚が多いんですが、メダカはちょっとちがう仲間の魚なんですね。

分布:日本国内では、本州から沖縄までに分布しています。元々は青森県あたりまでしか、自然界には生きていなかったようですが、最近では北海道でも一部の地方では生きているようです。 (放流によるものと考えられています)
また、地方によってヒレの筋の数や体型、染色体などがわずかにちがいがあります。

どれぐらい生きるか:自然界では約1〜2年と言われています。飼育では、うまく飼えれば5年ほど生きることがありますが難しいです。だいたい2年ぐらいでしょうか。

子どもを増やす時期:普通は春から初夏にかけて産卵し、かえった子メダカは夏、秋の間をかけて成長し、 次の年に産卵します。ただ、春に生まれたメダカが成長し、その年の秋にはもう産卵することもあるようです。

モデル生物:ニホンメダカは、卵の中での成長が観察しやすいなどの理由で、 生物学ではモデル生物として、体の中がどのようにできるのかを調べるための研究に使われています。 遺伝子の研究が進んでいて、実験用のメダカでは系統が記録されています。 「宇宙メダカ」として、1994年7月に日本人宇宙飛行士の向井千秋さんとともにスペースシャトルで宇宙まで行きました。 そして地球の脊椎動物としては、初めて宇宙で繁殖したのがメダカです。
また、ほ乳類以外では始めて性別を決める遺伝子が見つかった生き物であり、 オスとメスがどのように決まるのかを研究するために注目されています。

メダカって何種類いるのか
ヒメダカ
ヒメダカ
シロメダカ
シロメダカ

ペットショップに行くと、品ぞろえのいい店では様々な色のメダカが売られています。
代表的なヒメダカをはじめとして、白メダカ、青メダカ、アルビノメダカ、さらにそれぞれの光りタイプ、ダルマタイプなど様々なメダカがいます。
しかし、どれも生き物としての種では、「メダカ(ニホンメダカ)」です。
「ヒメダカ」、などは品種といいます。体色細胞の色を決めるもの(遺伝子といいます)が、たまたま黄色や白になったものを固定して色が変わらないようにしたものです。   
遺伝的表現型は4色型あると言われています。さらにアルビノや、内蔵等が透けて見える透明メダカというものもいます。
なので、エサや住みやすい条件などは、野生のメダカと変わりません。

では、世界には日本のメダカの仲間はどれぐらいいるのでしょうか。
いろいろな考え方がありますが、生き物としての分類として考えてみます。
生き物の種類分けをするとき、これも様々な見方がありますが
1.子どもの増やし方(メダカならば、卵を産んで水草などにつける)
2.体のつくり(メダカの場合、ヒレの付き方など)
で、分けることが多いです。こうして集めた似た生き物のグループを「属」と言います。 メダカは「メダカ属(Oryzias属)」ですから、現在このグループに入っているものをここでは「メダカの仲間」とします。
ここに入っているのは、現在14種類とされています。(これも研究者によっては13種類という人もいます)

Oryzias celebensis
和名:セレベスメダカ
Oryzias curvinotus
和名:ハイナンメダカ,海南メダカ
Oryzias javanicus
和名:ジャワメダカ
Oryzias latipes
和名:ニホンメダカ
Oryzias luzonensis
和名:フィリピンメダカ,ルソンメダカ
Oryzias marmoratus
和名:マルモラタスメダカ
Oryzias matanensis
和名:マタネンシスメダカ
Oryzias melastigma
和名:インドメダカ
Oryzias minutillus
和名:タイメダカ
Oryzias mekongensis
和名:メコンメダカ
Oryzias nigrimas
和名:ニグリマスメダカ
Oryzias orthgnathus
和名:オルトグナサスメダカ
Oryzias profundicola
和名:プファンディコラメダカ
Oryzias timorensis
和名:チモールメダカ
オスとメスの見分け方
オスとメス
上がメス、下がオス
(クリックで解説画像)
 オスとメスは、ヒレで見分けます。
まずオスのほうがどのヒレもメスより大きいことが多いです。特に背ビレと尻ビレが大きく発達しています。 オスの背ビレには大きな切れ込みがあることが、メスとの違いです。 また、尻ビレが大きく、平行四辺形のような形をしています。 この尻ビレでメスを包み、産卵をうながすということもあるようです。
オスに対してメスのヒレは小さめで、ヒレのふちがなめらかです。(時々、何かの原因で、さけてしまっているメスもいますが)
メスの尻ビレは、尾ビレに向かって幅がせまくなります。
←左の画像をクリックすると、解説画像が別ウィンドウで出ます。
絶滅危惧種?
用水路
こんな水路が減っている

メダカが注目されたこととして、絶滅危惧種への指定というものがありました。 これについてまとめてみたいと思います。
1999年2月に環境庁(現在は環境省)が 「レッドリスト(レッドデータブックに揚げるべき日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)」を発表しました。 その中の「絶滅危惧II類(VU)」(絶滅の危険が増大している種)にメダカが載り、話題になったことを覚えている方も多いと思います。 2007年8月のレッドリスト見直しでは、「メダカ北日本集団」と「メダカ南日本集団」の2つに分けて記載されました。
ここでは、環境省が2003年5月に発表したレットデータブックに基づき、今のメダカがどんな状況なのかまとめています。
(詳しくは、環境省生物多様性情報システムの絶滅危惧種情報(メダカ)を見て下さい)

まず現在の日本で、どれぐらいメダカが住んでいるのでしょうか。
環境省の種の多様性調査(1999年度)によると、メダカがいることが確認できなかった県が6、確認できた地点が10地点に満たない県が27もありました。 その後、農林水産省と環境省との連携による「田んぼの生きもの調査」(2001年度)では、種の多様性調査では確認できなかった県でもメダカが見つかりましたが、 東京都と山梨県からは確認できませんでした。ただこの結果には、人間によって放流されてメダカがいるようになった場所も含まれているように思います。(これについては後で述べます)

では、なぜメダカが減ってしまったのでしょうか。
ひとつは水田の再開発です。メダカの英語名が「rice fish」であるように、水田と用水路の状態がメダカの繁殖にはとても大切になります。 この水田が、機械等による効率化のために区画整理され、用水路がコンクリート化されたことがあります。コンクリート化によって、 メダカが卵をつけるカナダモ等の藻や水草が生えなくなり、増えることができなくなってしまうわけです。
また、用水路をより速く水が流れるようになり、あまり流れていない所を好むメダカにとっては住みにくくなってしまうということもあるでしょう。 用水路で水をすぐに入れられるので、それまでメダカのいい住みかであったため池が無くなってしまったということもあります。 それに、用水路と田んぼとの間の段差が急になったということもあるようです。メダカは繁殖のために田んぼの中や、より浅い所に入っていきます。 6月頃に観察をすると、水深がほんの数センチのようなところにメダカが泳いでいます。 段差がつきすぎるとメダカが田んぼへ入れなくなり、せまい範囲内で繁殖をしなければならなくなります。 なので、よりたくさん卵を産むことができなくなるといわれています。
ふたつめに、水質の悪化があります。生活排水や農薬が流れ込み、メダカにとっては住めない水質になってしまう場合があります。 メダカはある程度の汚れには強い魚ですが、より汚れに強いカダヤシなどには勝てないようです。

いずれにしても、メダカが減った理由は「住む場所とよりたくさん子どもを増やせる場所が無くなった」ということです。 メダカ1匹が500〜700個ほど卵を産みますから、メダカが育つことができる場所があれば、すぐ増えることができます。 絶滅危惧II類に指定されて以来、各地で放流運動がおきましたが、ただ放流するだけでは増えません。 メダカが育っていける場所でなければ、放流しても全滅してしまうことが考えられます。 (もしメダカがその場所にいないなら、そこはメダカが住むには良くない場所だとも言えます)
さらに地域ごとの遺伝子型の問題があります。(それについては次の項目で)
今、早急に行わなければならないのは、メダカが安心して住み増えていくことができる場所を一つでも多く残すことです。 現在、メダカが住んでいる場所を守り、よりメダカが増えていけるようにしていくことが大切でしょう。

日本各地のメダカ
ニホンメダカは、生息地によって遺伝子が違う集団に分かれていることが分かっています。
大きく分けると2つ。
1つが青森県から日本海側の東北地方、北陸地方までの北日本集団、 もう1つが太平洋側の東北地方から関東、東海、中国、四国、九州、沖縄までの南日本集団です。

さらに南日本集団は、以下の8つに分かれます。

・東日本型(太平洋側東北地方、関東地方、中部地方、三重県、高知県)
・東瀬戸内型(関西地方、香川県、徳島県、岡山県東部)
・西瀬戸内型(愛媛県、岡山県西部、広島県、山口県、大分県)
・北部九州型(福岡県、佐賀県)
・有明型(長崎県、熊本県)
・薩摩型(鹿児島県薩摩半島周辺)
・大隅型(鹿児島県大隅半島周辺)
・琉球型(沖縄県)

これらの型の違いは、外見上ではなかなか見分けられません。 分ける時は遺伝子の型によって分けます。
メダカがこのように細かく分かれたのは、かつて日本列島ができた時、 海や山脈にへだてられてそれぞれの地域に閉じこめられたためと考えられています。 日本の川は地形からみても、長さが短く広がりがあまりないということもあるでしょう。
それに、あまり泳ぐ能力が高くないので、 狭い範囲内で世代交代を繰り返し他地域へと行くことがあまりなかったからともいえます。
ですので、他地域のメダカが入ってくるとその地域のメダカの遺伝子に影響が出てきてしまいます。 メダカの絶滅危惧種指定は、この地域個体群の型が絶滅危惧なのだ、ということもできます。 2007年のレッドリスト見直しでは、すでに述べたとおり北日本集団と南日本集団に分けて記載されました。 もしかしたら、この2つには亜種ぐらいの違いがあるのではないかと考えられてきています。 見た目ではあまりわかりませんが、それぐらいの違いはあるということのようです。
参考
ウィキペディア 「メダカ」の項(画像提供及び一部執筆しています)