妙なこと 第六話 (9)

「じゃあ勉強部屋へ、行こう!。」
そう言うと、美加の手を握り強引に連れて行こうとしたのです。
美加は奥さんに、「では失礼いたします!。」
と言うと、引っ張られるように二階の勉強部屋へ行ったのでした。
部屋に入るといきなり
「お姉さん!。」そう言って抱きついてきたのです。
美加はびっくりしました。
「どうしたの?!。」そう、美加が訊くと、
「俺のお姉さんになってくれない?!。」
と、言ったのでした。

美加は冷静を装い、
「とにかく椅子に座って!。」そう言うと、
自分も椅子に座ったのです。
「私にわかるように話して頂戴!。」
「ちょっと待って!。」
「先に、筆記用具と、教科書を出して!。」
そう言ったのです。
高校生は、言われたとおりに、
筆記用具と、教科書を出したのです。

やさしく「いいわ!。じゃあ話して!?。」そう言うと、
「うん!。」と言って、高校生は話し始めたのです。
「親戚のお姉さんが、東京の大学に進学したんだ!。」
「そしてこのうちから通うことになったんだけど、
ちょうど俺が中学に入ったときからなんだよ!。」
「きれいで、頭がよくてちょうど先生みたいだったんだ!。」
そう言ったのです。

「お世辞はいいから、続けて話して!。」
そう美加が言うと、
「お世辞じゃなんかないよ!。ホントにそう思ってるんだ!。」
と、むきに言うと、
「ごめんなさい!。わかったから、続けて話して頂戴!?。」
そう美加は優しく、言ったのです。
「ずーっとお姉さんって呼んでいたんだ!。」
「俺は一人っ子だから、兄弟が出来たようでうれしかったんだよ!。」
「4年間いっしょに暮らしていたから、
俺は、ホントの兄弟だと思っていたんだよ!。」
そう言うと少し涙ぐんできたのでした。

「お姉さんも俺を本当の弟のようにいろいろ話してくれたし、
俺も悩みをお姉さんに聞いてもらったりしていたんだ!。」
「ちょうど今年の3月に卒業したんだけど!。」
「大学院に進むことになっていたから、
今までどおりいっしょに暮らすものだと思っていたんだ!。」
「お姉さんは何にも言わなかったんだよ!。」
「この家を出て行くなんて事を!。」
そう言うと、涙があふれてきたのでした。

「悔しくてさーあ!。」
「なぜ真っ先に俺に言ってくれなかったんだ!。」
「そう言って、お姉さんといっしょに買った携帯電話を、
塀にぶん投げて思いっきり壊してしまったんだ!。」
「しかも婚約をしたんだよ!。」
「俺には一言も言わないで!。」
「彼氏がいるならいるで言ってくれればいいのに!。」
「俺はホントの兄弟だと思っていっしょに暮らしていたのに、
お姉さんは俺のことなんてなんとも思ってなかったんだよ!。」
そう言うと、手で涙を拭いたのです。

それを見た美加は、ショルダーバックからハンカチを取り出して、
涙を拭いてやったのです。
すると、ドアをノックする音が聞こえて、
「どうでしょうか?。勉強は進んでいますか?!。」
そう言って、奥さんが部屋に入ってきたのです。
「はい!。」そう言うと、美加はドアのほうを向いて、
ハンカチを握ったまま、立ち上がりました。
「先生そのまま続けてください!。」
「こちらのテーブルの上に置いておきますから、
冷めないうちに、きりがよいところで休憩してください!。」
そう言ったのです。

「ありがとうございます!。」
「もう少ししたら休憩しますので!。」
そう言うと、お辞儀をしたのでした。
「では、先生よろしくお願いします!。」
そう言うと、奥さんはすぐに部屋を出て行ったのでした。
美加はすぐにドアのところに行き、ゆっくりと少し開けると、
奥さんの様子を見たのでした。
何も変わった様子はありませんでした。

「ふーう!?。」そう言って、息を吐いたのです。それから、
「男の子は、いつまでもめそめそしない!。」
そう高校生に向って言ったのです。
「先生!。お姉さんになってくれる?!。」
そう訊かれた美加は、
「大学に入るために、一生懸命勉強するって約束してくれたら、
大学に入るまでの2年間。お姉さんになってやってもいいわ!。」
そう答えたのです。

「2年間かあー?!。」と言って、高校生が考えてると、
「どうなの!。ジュンちゃん!。」
そう美加に言われて、うれしそうに、
「しょうがねーなあー!?。」
「2年間で手を打つか!。」と、笑って言ったのでした。


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