妙なこと 第六話 (5)

「きょう行くお宅は、大きな会社の重役さんのお宅ですって?!。」
そう美津子が訊くと、
「そうなの!。でもその子ふだん勉強しないで、
わたしが教えに行くときだけ、やっているみたいなの?!。」
「それじゃあ!。成績なんて上がるわけないのにねえ!。」
「まあ私はバイトだからいいけど!。」
「予備校だったら結構言われるのよねえ!。」
そう答えたのでした。

「お前は、調子がよくて人当たりがいいから、
いままで家庭教師したお子さんの親たちが、紹介してくれてよかったな!。」
そう義雄が言うと、
「でも結構きついのよ!。成績が上がらないと!。」
「アルバイトだから勤まっているけど、
職業として考えると、学校の先生は、わたしには無理だわ!。」
「きょう行くお宅の奥さんが、毎日来てほしいって言うんだけど、
ほかの子もいるから、土曜日だったら時間取れるって言ったの!。」
そう美加が言いました。

「じゃあ!。きょうは御指名だな?!。」
「指名料は高いのか?!。」
そう嬉しそうに義雄が言うと、
「バーカじゃない!?。バーやキャバレーじゃああるまいし!。」
そう美加が言うと、
「ホント!。まったく、なに考えてるんだかあー?!。」
そう美津子も、あきれたように言いました。

「でもね!。その子、修二と同じ高校なの!。」
「まだ2回しか行ってないけど!。」
「でも話を聞くと、修二とクラスが違うみたいなの?!。」
そう美加が言ったのです。
「そういえば修二のヤツ、もう着く頃だなあ!?。」
そう義雄が言うと、
「あらもう!。こんな時間!。2回目の洗濯が終わってるわ!。」
そう美津子が言うと、洗濯機の置いてある脱衣所に行ったのでした。

風呂場のほうに向かって美加が、
「じゃあわたし、行ってくるから!?。」
そう大きな声で、美津子に言ったのです。
「いってらしゃい!。気をつけてね!。」
そう大きな声で美津子も答えたのです。
「じゃあ!。お父さん!行ってくるから!。」
そう美加が言うと、
「送って行かなくてもいいのか?!。」
そう義雄が訊くと、美加はニコッと笑って、
「そう!。ありがとう!。駅まででいいから!。」
と、言ったのです。

「おかあさーん!。美加を駅まで送っていくから!。」
義雄は、そう大きな声で、風呂場のほうに向かって言ったのです。
すると、「わかりました!。」と、美津子が答えたのです。
美加も義雄もうれしそうに、玄関を出ると、
車に乗り込み、駅まで走り出したのです。
駅に着くと、美加は車から降りて、
「お父さん、ありがとう!。」
「じゃあ!。お母さんに、お昼はそのお宅で出るからって言っといてね!。」
そううれしそうに、言ったのです。

「ああ!わかった!。言っとくよ!。」
そう義雄が言うと、美加は駅の方へ歩いて行きました。
義雄は最近、土曜日も仕事が多かったので、
久しぶりの土曜の休みでした。
駅から戻ってくると、
「お母さん!。美加がお昼は、そのお宅で出るからいいって!。」
「そう言ってたぞ!。」
そう美津子の顔を見るなり、言ったのです。

「やっぱり!。美加がご機嫌だったもの!。」
「よっぽどいい物が、出るんでしょうねえ!。」
そう、義雄の顔を見て言ったのです。すると、
「お母さん!。昼はふたりきりだから、久しぶりに外で食べるか?!。」
そう義雄が言うと、
「えっ!ホント?!。うれしいわあー!。」
「最近出来たお店があるのよ!。評判らしいの!?。」
「そこに行きましょう!。ねっ!!。」
と、ニコニコしながら美津子は言ったのです。

「最近の店は、予約がないとだめとか、
何時から何時までは休みとかいう店が多いって言うけど!?。」
「そこはどうなんだあー?!。」
そう義雄が言うと、
「お父さん!。なにびびってるの?!。」
「そんな高いところは、行かないわよう!。」
そう笑いながら美津子は言いました。


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