妙なこと 第二話 (6)

「帰ってきたときに”ヘンなことがあった”って言ったけど、
それってこのことだったのね!」
と、美津子が言いました。

「うん。そうだよ!」
「5月にあの変な雲を見てから、どうもなんかおかしいんだよなあー!?」
と、修二が言うと、
「おかしいのは、前からだから、しょうがないじゃないの!」
「わたしは別に、何にも変わったことはないのよ!」
「修二と、お父さんだけよきっと!」
そう話す美加でした。

「お母さんはどうなんだ!?」
と、義雄が言いました。
「わたしは、別にこれといった変わった体験はしていないけど!」
「和雄は、どうなんでしょうねえー?!」
と、美津子が不安そうな顔をして、言いました。
「京子のところへは、ときどき連絡があるみたいだけど!。
忙しくて、日曜日しか休みが取れないからって、
京子に”日曜日じゃなくて寝て曜日だ”って言うんだって!」
と、美加が言うと、
「京子さんのところに電話するなら家にも電話よこせばいいのに!」
と、美津子が言ったのです。
「お母さん!、やきもちやかない。そういう年頃なんだから!」
と、修二が言いました。

「福岡に行ったきりだからなあ」
「新入社員だから、いろんな体験を積んだほうがいいし、
学生気分も、もう抜けただろう!」
そう義雄が言いました。
「お母さん、お兄ちゃんのことが心配なら、携帯に、休みの日曜日に電話したら?!」
と、美加が言ったのです。すると、
「だって!。お父さんが絶対に電話なんかするなって言うのよ!」
と、美津子が言いました。
「うちの教育方針ですね!」と、修二が言うと、
「そのとおり!。」と、義雄が言いました。

「ところでお父さん!。
俺が見た自転車に乗ったおばさんと、
お父さんが見た自転車に乗ったおばさんみたいな人と、見た向きがちょうど逆だよね!?」
と、修二が言うと、
「そうだよなあ?!。」
「だけどあの橋を渡ったところで、ふたりとも見ているんだよな!」
「ほかになんか、不思議なものを見たっていう、うわさかなんかないのか?、修二!。」
と、義雄が言いました。

「UFOを見たって言う人がいたっていう話は聞いたことがあるけど!」
「でも、その見た人が、ビデオも写真も証拠になるものはないけど、
ほんとうに見たんだって!」
「だから見たことがない人に、いくら話しても信用してくれないから、
今は、自分と同じにUFOを見たって言う人にしか話さないんだって!」
「その気持ちわかるよ!」
「雲の話を話しても、だれも信用してくれないもの!」
そう修二は、はき捨てるように言いました。

「そうよねえ!。確かに雲の話は必ず見間違えとか、
風の方角がその雲のところだけ違ってたとか、言われるものね!」
と、美加が言いました。
「家族だけしか見てないから余計にそう言われるのね!」
と、美津子が言ったのです。

「おい!。俺は運転してて、見ていないんだぞ!」
と、義雄が言うと、
「でもお父さんは、みんなの話を聞きながら運転していたから、
本当だってわかったでしょ!」
と、美加が言いました。
「それはそうだけど!。やっぱなあ!。本物を見たかったよー!」
と、義雄が言ったのでした。

「こんどは、本物の不思議な体験をしたからね!。」
「でもこんどは、お父さんも、俺もひとりだったから、
この話をしてもだれも信じてくれないよ!。きっと!。」
と、修二が言うと、
「そうだな!。UFO見た人と同じ心境だな!」
そう言って義雄は、修二の前に手を差し出しました。
「そうだね!。お父さん!」
そう修二が言うと、二人で握手をしたのでした。

「修二!、食うか?!」
と言って、
義雄が残っているアジのフライが半分のっている皿を、
修二の前に差し出したのです。
「うん!。」そう修二は言うと、
義雄の箸を使って、残っているアジのフライを、
おいしそうに食べたのでした。

「じゃあ!。俺は、残っているビールを飲むかな!?」
と、義雄が言うと、ジョッキに残っているビールを、
うまそうに飲み干したのでした。

「じゃあ、きょうはもう歯を磨いて寝るからな!」
そう義雄が言うと、
「じゃあ、お布団を引いておきますから!」
と、美津子が言い夫婦の部屋に行ったのでした。
「じゃあ、これは俺が洗ってかたづけるから!」
そう修二が言うと、ジョッキを皿の上に置き、それを持って、
台所に向かったのでした。
そのあとを美加が追いかけて、台所に来たのです。

「修二!。あんたが洗うと雑に洗うから、
私が洗うからお風呂にでも入りなさいよー!」
と、美加が言いました。
「ありがとう。お姉ちゃん!。」
そう修二は言うと、流しに持ってきたものを置いたのでした。
「いつもこうなっちゃうんだから!」
と、洗いながら美加が言ったのでした。






▲Top