妙なこと 第二話 (3)

義雄の話を、黙って聞いていた修二が、言いました。
「お父さん!。似た者親子って言うけど本当にあるんだね!」
と、ニコニコしながら言いました。
「修二どういう意味だ?!」
そう義雄が訊ねました。
「きょう俺も、同じようなことを見たもん!」
と、修二が言ったのです。

「ほんとうか?!」と、義雄が言うと、
「嘘ついたってしょうがないじゃん!」
「でも俺は、幽霊だなんて思わなかったよ!」
「だいいち、足があったんじゃないか!」
そう修二が言うと、
「テレビじゃあ、足もある幽霊が多いよね!」
と、美加が言いました。

「俺は、5人も見たんだぜ!」
「えっ!!。5人!!!」
そう3人がびっくりして言いました。
そして義雄が言ったのです。

「5人だって!。字が違うんじゃあないのか!?」
「数字の”5”じゃなくて、”ごんべん”に”くれ”の、
”誤認”じゃないのかあ!?」
「お父さん!くだらないシャレ言わないでヨー!」
と、美加が言いました。
「そうですよ!。」
「修二、5人ってどういうこと?!」
美津子が修二に訊いたのです。

「それはね」と言うと、
修二は右手を差し出したのでした。
「なにその手?!」美津子が言いました。
「貴重な体験をただでは話せません!」
そう言ったのですが、修二は美津子の顔色を見ると、
その手を義雄の前に持っていきました。

「100円か!?。」
と、とぼけた振りをして、義雄が言いました。
「はっ!、はっ!、はっ!、はっー!」
と、美加と美津子が大笑いしました。

「お父さん。いくらなんでも幼稚園の子じゃあ、ないんだから」
「桁がひとつ違いませんか?!」
「親子なのに金とるのか!?」
「あとで払うから!」義雄がそう言うと、
「前払いでお願いします。」
と、修二がニコッと笑い言いました。

「まったくしょうがないヤツだ!」
そう言って義雄は席を立ち、
自分の財布から1000円札を1枚持って、戻ってきました。

義雄は言いました。
「3人分な!」そして修二に1000円札を見せました。
「3人分?!。1000円で!」と、修二が言うと、
「いやならいいんだぞ!」と、義雄が言ったのです。
「まったっく、しっかりしているんだから!」
そう修二は言うと、1000円を受け取ったでした。

「ばかっ!。こっちが言うせりふだ!」
義雄にそう言われると、
ぺろっと舌を出して、笑ってごまかす修二でした。

「じゃあ、話をするかなあ」
「修二。待って!」
「あとかたづけしちゃうから、それが終わってから聞かせて!」
「美加!。手伝ってちょうだい!」
そう言う美津子でした。

「わかったよ!。じゃあ、居間にいってるよ!」と修二が言うと、
「修二。さき行ってろ!」と義雄がが言い、
「お父さんは?」と、修二が訊いたのです。
「居間に、”いまに”行くから。なんちゃって!」
と、義雄が言うと、
「はい!、はい!、はい!。」
そう言いながら、居間に向かう修二でした。

居間に入ると修二が言いました。
「お父さん。お風呂入っちゃえばいいじゃん」
「お母さんたちはまだすぐには、終わらないと思うよ!」
「そうだな、そうするか!」
と、義雄は言うと、着替えを部屋に取りに行き、
着替えを持って、風呂場に向かったのでした。
そのあいだに、自分の机の上にある貯金箱に、
お金を入れてきた修二でした。

「お母さん!。修二、ほんとうに見たのかしら?!」
「そういえば、帰ってきたときに、
”途中でちょっとヘンなことがあったもんで!、遅くなっちゃった。”
って修二が言うんで、何?、ヘンなことって!?って、私が訊いたら、
”あとで話すよ!”って、修二が言ってたわ!」
と、美加が言ったのです。

「へえー」と美津子が言うと、
「あれ?!。お父さんお風呂に入ってるみたい!?」と美加が言うので、
「ほんと?!。」
そう言うと風呂場に向かった美津子でした。

「お父さん。お風呂入ってるの?!」と、美津子が言うと、
「おお!。もう出るけど!」と、義雄が言ったのです。
「着替えは?。」と、美津子言うと、
「もって来て洗濯カゴに入れてある。脱いだのは、洗濯機に入れた。」
と、義雄は答えたのでした。
「それならいいけど!。」
そう言うと台所へ戻った美津子でした。

「お父さんも、もうすぐ出るって言ったから、美加もういいわ!。」
「ありがとう!。あと最後にもう一度テーブルを拭けば終わりだから!」
と、美津子が言ったので、
「じゃあ、お母さん!。先にいってるから」
そう言って、居間に向かった美加でした。






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