妙なこと 第二話 (2)

「お母さん!実は幽霊を見たんだ!!」
美津子の顔を見て安心したのか、
顔色が普通の状態に戻ってきた義雄でした。
「あれは幽霊だ!ほかには考えられない!!?」と言うと、
「お父さん!とにかく上がって着替えてから、話を聞きますから!?」
と、美津子が言ったのです。

「そうだな!」そう言うと、
普段の義雄に戻ったようでした。
靴を脱ぎ家に上がって、
夫婦の部屋に着替えに行った義雄でした。

「お母さん!やっぱり、お父さんだった??!」
と、修二が聞きました。
「ええ。でもヘンなのよ!」と美津子が言うと、
「なにが?!」と、修二が言い、
「幽霊を見たんですって!!?」
「青白い顔をして言うのよ!」
そう言いながら、フライを揚げだした美津子でした。

「え!。マジ!?」と、修二が言いました。
「ほんと?何かと見間違えたんじゃないの?!」
と、美加が言いました。
そう二人が言ったあと、顔を見合わせて、
「プッ!」と笑ったのでした。

「お父さん帰りに一杯やって帰ってきたんじゃないの?!」
そう美加が言うと、
「俺もそう思う。酔っ払って何かを見間違えたんだよ!?」
「ねえ!お姉ちゃん!!?」
二人はそう言ったあと、
テレビのある居間に行ったのでした。

義雄が着替えてから洗面所に行き、
手を洗い、うがいを済ませてから、
台所に来たのでした。
「お父さん!お疲れ様でした!!?」
「ビールにしますか?!」と、美津子が言うと、
「そうだな。ビールでも飲むか!?」と、義雄が言ったのです。

「帰りに一杯やって来たんですか?」
修二と美加のことばが気にかかって、
そう訊いた美津子でした。
「やってくるわけがないだろう!?」
「駅からまっすぐ!」
と、言いかけてやめた、義雄でした。

「どうしたのお父さん?!」
「言いかけてやめるなんて!?」と、美津子が言うと、
「とにかくビールを飲むか!」
「話はそれからだ!!」と、義雄は言ったのです。
「わかりました!」そう言うと、
義雄の差し出すジョッキにビールを注ぐ美津子でした。

「きょうはフライかー!?」
「ビールに合うんだよなー!」
そう言うと一気に飲みほしたのでした。
「ビールは最初の一杯が一番うまいなあ!?」
2杯目は手酌で注ぐ義雄でした。
そしてフライをつまみに、
ビールを1本空けたのでした。
「修二と美加は”いま”居間か??!」
などと”シャレ”が出てきた義雄でした。

「お母さん。駅からまっすぐ来るとホテルがあるだろ!?」
「その信号を右に曲がってしばらく行くと、
10mぐらいの幅の川があるだろ!?」
「その橋を渡った右側に、年寄り二人でやっているお店があるだろう!」
そう義雄が言うと、美津子が答えました。
「ええ!鯛焼きとかたこ焼きとかの小さなお店!!?」
「鯛焼きのあんこが尻尾まであって、おいしいってあのへんじゃあ有名な!?」
「うん!なんだかしらないけど、その店の鯛焼きを買って帰ろうかなって思ったんだ!!?」
「橋を渡ってその店のところに行ったんだけどないんだ!」
と、義雄が言ったのです。

「やめちゃったのかしら?!」
美津子がそう言うと、
冷蔵庫のドアを開け、缶ビールを出してきて、
ジョッキに注ぎながら、義雄が言いました。

「実はヘンなんだ!?」と、義雄が言うと、
「何が?!」と、美津子が訊いたのです。
「風景が、何か違うんだ!!」
「半年ぐらい前に来たときと、今日の風景と何かが違うんだよ!?」
「そう思いながら、来た道を引き返そうと思って、
戻り始めて橋まで15mか20mか、そのぐらいかなあ?!」
「けっこう明るかったんだけど、何かが横を通ったんだよ!!?」
「そのときに一瞬暗くなったような気がしたんだ!」
「俺の前に黒い影のようなものが現れたんだ!!」
そう言うと義雄は、
ジョッキを持ってビールを半分ほど飲んだのでした。

美津子は、話を聞いているうちに急に怖くなり、
大きな声で、修二と美加を呼んだのでした。
「修二!。美加!。ちょっとこっちへ来て!?早く!!」
「どうしたの?!」
そう言って二人が台所にきたのでした。
義雄はもう一度最初から、二人に話をしたのでした。

「その黒い影のようなものが、自転車に乗っている人のように見えたんだ!」
「そしてそれが、本物の自転車に乗っている人間に、変わったんだ!!?」
「それはあっというまに、そうなったんだヨー!?」
「その人の後姿しか見ていないけど、
どこかのおばさんのような感じだったなあ?!」
「そのまままっすぐ走っていったんだ!!」

「お父さんはなぜか捕まえなきゃと思ったんだ!」
「そして橋を渡るまで、追いかけていったんだけど、
相手は自転車だし、追いつけるわけないのに、一生懸命走ったんだ!!」
「でもじきに見失って、我にかえってお父さんは思ったよ!」
「あれはきっと幽霊だったんだって!??。」
「そう考えたら震えてきて、急いでうちに戻ってきたんだ!!?」
そう言うと義雄は、残りのビールを飲み干したのでした。






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