本来コーヒー紅茶などをお出しして、御もてなししなければいけませんが、
インターネットの都合上それができません。
ご自分で好きなものを急いで用意していただき、
キーボードなどの上にこぼさぬよう注意して、
ときどき飲みながらでもお読みくださいませ。 m(_ _)m
「お母さん!実は幽霊を見たんだ!!」
美津子の顔を見て安心したのか、
顔色が普通の状態に戻ってきた義雄でした。
「あれは幽霊だ!ほかには考えられない!!?」と言うと、
「お父さん!とにかく上がって着替えてから、話を聞きますから!?」
と、美津子が言ったのです。
「そうだな!」そう言うと、
普段の義雄に戻ったようでした。
靴を脱ぎ家に上がって、
夫婦の部屋に着替えに行った義雄でした。
「お母さん!やっぱり、お父さんだった??!」
と、修二が聞きました。
「ええ。でもヘンなのよ!」と美津子が言うと、
「なにが?!」と、修二が言い、
「幽霊を見たんですって!!?」
「青白い顔をして言うのよ!」
そう言いながら、フライを揚げだした美津子でした。
「え!。マジ!?」と、修二が言いました。
「ほんと?何かと見間違えたんじゃないの?!」
と、美加が言いました。
そう二人が言ったあと、顔を見合わせて、
「プッ!」と笑ったのでした。
「お父さん帰りに一杯やって帰ってきたんじゃないの?!」
そう美加が言うと、
「俺もそう思う。酔っ払って何かを見間違えたんだよ!?」
「ねえ!お姉ちゃん!!?」
二人はそう言ったあと、
テレビのある居間に行ったのでした。
義雄が着替えてから洗面所に行き、
手を洗い、うがいを済ませてから、
台所に来たのでした。
「お父さん!お疲れ様でした!!?」
「ビールにしますか?!」と、美津子が言うと、
「そうだな。ビールでも飲むか!?」と、義雄が言ったのです。
「帰りに一杯やって来たんですか?」
修二と美加のことばが気にかかって、
そう訊いた美津子でした。
「やってくるわけがないだろう!?」
「駅からまっすぐ!」
と、言いかけてやめた、義雄でした。
「どうしたのお父さん?!」
「言いかけてやめるなんて!?」と、美津子が言うと、
「とにかくビールを飲むか!」
「話はそれからだ!!」と、義雄は言ったのです。
「わかりました!」そう言うと、
義雄の差し出すジョッキにビールを注ぐ美津子でした。
「きょうはフライかー!?」
「ビールに合うんだよなー!」
そう言うと一気に飲みほしたのでした。
「ビールは最初の一杯が一番うまいなあ!?」
2杯目は手酌で注ぐ義雄でした。
そしてフライをつまみに、
ビールを1本空けたのでした。
「修二と美加は”いま”居間か??!」
などと”シャレ”が出てきた義雄でした。
「お母さん。駅からまっすぐ来るとホテルがあるだろ!?」
「その信号を右に曲がってしばらく行くと、
10mぐらいの幅の川があるだろ!?」
「その橋を渡った右側に、年寄り二人でやっているお店があるだろう!」
そう義雄が言うと、美津子が答えました。
「ええ!鯛焼きとかたこ焼きとかの小さなお店!!?」
「鯛焼きのあんこが尻尾まであって、おいしいってあのへんじゃあ有名な!?」
「うん!なんだかしらないけど、その店の鯛焼きを買って帰ろうかなって思ったんだ!!?」
「橋を渡ってその店のところに行ったんだけどないんだ!」
と、義雄が言ったのです。
「やめちゃったのかしら?!」
美津子がそう言うと、
冷蔵庫のドアを開け、缶ビールを出してきて、
ジョッキに注ぎながら、義雄が言いました。
「実はヘンなんだ!?」と、義雄が言うと、
「何が?!」と、美津子が訊いたのです。
「風景が、何か違うんだ!!」
「半年ぐらい前に来たときと、今日の風景と何かが違うんだよ!?」
「そう思いながら、来た道を引き返そうと思って、
戻り始めて橋まで15mか20mか、そのぐらいかなあ?!」
「けっこう明るかったんだけど、何かが横を通ったんだよ!!?」
「そのときに一瞬暗くなったような気がしたんだ!」
「俺の前に黒い影のようなものが現れたんだ!!」
そう言うと義雄は、
ジョッキを持ってビールを半分ほど飲んだのでした。
美津子は、話を聞いているうちに急に怖くなり、
大きな声で、修二と美加を呼んだのでした。
「修二!。美加!。ちょっとこっちへ来て!?早く!!」
「どうしたの?!」
そう言って二人が台所にきたのでした。
義雄はもう一度最初から、二人に話をしたのでした。
「その黒い影のようなものが、自転車に乗っている人のように見えたんだ!」
「そしてそれが、本物の自転車に乗っている人間に、変わったんだ!!?」
「それはあっというまに、そうなったんだヨー!?」
「その人の後姿しか見ていないけど、
どこかのおばさんのような感じだったなあ?!」
「そのまままっすぐ走っていったんだ!!」
「お父さんはなぜか捕まえなきゃと思ったんだ!」
「そして橋を渡るまで、追いかけていったんだけど、
相手は自転車だし、追いつけるわけないのに、一生懸命走ったんだ!!」
「でもじきに見失って、我にかえってお父さんは思ったよ!」
「あれはきっと幽霊だったんだって!??。」
「そう考えたら震えてきて、急いでうちに戻ってきたんだ!!?」
そう言うと義雄は、残りのビールを飲み干したのでした。