妙なこと 第十八話 (14)

「あれ?お父さんどこ行ってたのー!??」
と修二が言うと、
義雄は修二を手招きして小さな声で、
「お母さんには内緒だぞー!」
「お父さんも今、厳(きび)しいから!?」
そう義雄は言って、
5千円札を修二に手渡したのでした。

「ありがとう!!?」
「持つべきものは父親だねえー!?」
とニコニコしながら言うと、
「じゃあ!ゆっくり野球見てて!!?」
「俺あした早いから!?」
そう言うとうれしそうに、
2階の自分の部屋へと階段を上がって行った修二でした。

すぐに修二に向かって義雄が、
「しゅうじー!風呂はー!??」
と言うと、
階段を上りながら、
「お姉ちゃん出たらすぐ入るよー!?」
と答えた修二でした。

それから1時間ほど経つと、美加が風呂から出てきたのです。
美加は台所に行き、
「お母さん!?」
「次、誰入るのー??!」
と美津子に向かって言ったのでした。
「修二が入るって言ってたみたいだけどー!?」
「お父さんに訊(き)いてみてー!?」
と答えた美津子でした。

「はーい!」
と言うと美加は、すぐに居間に行き、
義雄に訊いたのです。
義雄から次に修二が入ると聞いた美加は階段の下に行き、
「修二お風呂出たからあー!?」
「あなた先に入るんでしょう!??」
と言ったのでした。

「うん!」
「今行くー!!?」
とすぐに返事をした修二でした。
修二はいつもより長く風呂に入り、
風呂を出るとすぐ台所に行ったのです。

「お母さん!?」
「あしたは7時には起きるから!?」
「ご飯の支度しといてねっ!!?」
と修二は言うと、自分の部屋へ行き、
忘れ物がないか確認すると、すぐに寝たのでした。

翌朝、学校へ行っているときはぎりぎりまで寝ているくせに、
休みの日で、しかもただで旅行できる修二は、
6時ちょっと前には起きてしまったのでした。

「6時って!もうこんなに日が差しているんだあー!??」
と言ってカーテンを開け、
それから窓を開けると、思いっきり深呼吸したのでした。そして、
「今からもう一度寝るってわけにもいかないしー!?」
「顔を洗ってくるかあー!?」
と修二は言うと、先に着替えを済ませ、
すぐに洗面所に向かったのでした。

洗面所に行くと、
ちょうど美津子が出て来たところでした。
「お母さん、おはよう!?」
と修二が言うと美津子が、
「きょうは早いのねえー!?」
とびっくりしたように言い、そして、
「ふだんからいつもこんなふうに!」
「起こしにいかなくてもいいようにしてほしいわねえー!?」
と少し笑いながら言ったのでした。

「きょうは人と待ち合わせしているから!?」
「遅れちゃまずいでしょう!?」
「俺だって!そういう時はそれなりに起きるよー!?」
とえらそうに、修二は言ったのです。
それから顔を洗い歯を磨き、
ドライヤーとムースを使い、いつもより時間をかけ、
頭をかっこよくセットしたのでした。

美津子は予想より修二が早く起きて来たので、
あわてて、朝の食事の支度を始めたのです。
そして、修二が洗面所から出て来る頃には、
ご飯も炊き上がり、
ガス炊飯器からジャーに移し替え終わったのでした。

修二と美津子がいっしょに朝ご飯を食べていると、
美津子が修二に向かって、
「お昼ご飯のお金やお小遣いあるのー??!」
と修二の顔をじっと見ながら言うと、
「う、うん!」
「何とかねっ!」
と言ってから、
「お母さん!?少しくれるのー??!」
とうれしそうに修二が言ったのです。

「あなたさあー!?お父さんからお小遣いもらったんじゃないのー??」
と美津子が言うと、
「なんだあー!?」
「知ってたのかあー!??」
と思わず修二が言ったのでした。すると、
「やっぱりねえー!?」
「お父さん!子供には甘いんだからあー!?」
と美津子がうれしそうに言ったのです。

「なんだあー!!?」
「鎌(かま)を掛けたのかあー!??」
「俺って正直だから、嘘つけないんだよなあー!?」
と言ってから、
「ご馳走様でしたー!」
と言ってイスを引き、立ち上がった修二でした。

「ところでしゅうじー!?」
「お父さんからいくらもらったのー??!」
「正直にいいなさいよー!?」
と美津子が言うと、
「5000円!」
と修二が言ったのです。

「そんなにー!!??」
「だったら、わたしからはいらないわねっ!!」
とあきれたように言い、
「ご馳走様でした!」
と言うと、立ち上がり、片付けを始めた美津子でした。

「やっぱり!!?」
と修二は言うと、
自分が食べた終えた食器を流しに持って行き、
「じゃあー!いってきまーす!!?」と言ったのです。
そして美津子が「いってらっしゃい!?」と言うと、
急いで台所をあとにしたのでした。

それからすぐ、居間のテレビできょうのお天気を確認してから、
玄関を出ると自転車に乗り、
修二はまだ時間に余裕があるので、ゆっくり駅へと向かったのでした。






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