妙なこと 第十七話 (8)

しばらく義雄と美加が話をしていると、
美加が小さな声で、
「お父さん!?」
「お母さん寝ちゃったみたい??!」
と言ったのです。
義雄が肩を揉むのをやめ美津子の顔をのぞくと、
小さく寝息をたてていたのでした。

それを見た義雄が、
「このまま、少し寝かせとくかあー!?」
と言うと、
小さな声で美加が、
「あっち行こう!?」
と言って、台所を指さしたのです。

それから二人は音をたてずにコタツを離れると、
台所に向かったのでした。

「やっぱり寒いわあー!?」
「ファンヒーター止めてあると!!?」
と美加は言うと、
急いで石油ファンヒーターのスイッチを入れたのでした。
するとすぐに義雄が、
「こっちのファンヒーターはどうだった!??」
と美加に訊いたのです。

「ごめん!?」
「何も考えずにスイッチ入れちゃったあー!?」
「いつもと同じだったと思うけどー!?」
と美加がイスに座り言ったのでした。すると、
「まあ!いいさあー!?」
「ところでみかー!?」
「昼はお前作ってくれるのかあー!??」
と義雄が言ったのです。

「うん!?お母さん寝かしといたほうがいいと思うし!?」
「お父さん何が食べたいのー??!」
と美加が言うと、
「昼かあー!?」
と言ってしばらく考えてから、
「やっぱり麺類がいいなー!??」
と言ったのです。

「麺類ねえー!?」
と美加は言うと、イスから立ち上がり、
冷蔵庫の前まで行き、
扉を開き、中を物色したのでした。

「キャベツあるし、鶏肉もあるから!?」
「焼きそばなんてどおー??!」
と美加が言ってすぐ、
「でも鶏肉。お母さんが何かに使うため残してあるかもしれないから!?」
「どうせ、麺買ってこなきゃできないから!?」
「お肉、鶏肉より豚肉のほうがいいでしょ!お父さん!??」
と、美加が義雄のほうを振り向いて言ったのでした。

思わず義雄はドッキリしたのです。
それは、美津子の若い時を見た感じがしたからでした。

「なにお父さん!??」
「びっくりした顔をしてえー!?」
とうれしそうに美加が言うと、
少し赤い顔をして思わず、
「いや、別にー!?」
と義雄は答えたのでした。

「そうだなっ!?」
「お母さんが使うかもしれない材料使っちゃ悪いから!?」
「近くのスーパーで買って来てくれるかあー!??」
「豚肉と麺だけだったら千円あればあるかなっ?!」
と言ってポケットから財布を取り出し、
千円札を美加に渡した義雄でした。

「お父さん!?3時にー!?」
「シュークリームかエクレアでも食べるー!??」
と美加が千円札を受け取った後(あと)に言うと、
「三時のおやつもいっしょに買ってくるのかあー!??」
「だったら、もう千円やるから!?」
「修二が好きそうなものも買ってきてやりなさい!!?」
「あとでいじけるといやだから!?」
と笑って言うと、千円札をもう1枚美加に手渡した義雄でした。

「はーい!?」
と言ってうれしそうにお金を受け取ると美加は、
「じゃあー!?いってきまーす!!?」
と言うと台所から玄関を通り過ぎ、
階段を上って自分の部屋にコートを取りに行ったのです。
そしてコートを着て2階の部屋から下りてくると、
玄関で靴を履き、近くのスーパーへと歩いて行った美加でした。

ひとりでいるのでは省エネにならないと考えた義雄は、
台所のファンヒーターのスイッチをふだんどおり切り、
静かに居間に戻ったのです。
それから静かにコタツに入り、
新聞を音を立てないように気をつけてページをめくり、
しばらく読んでいたのでした。

しかしいつの間にか美津子と同じように、
気持ちよくコタツで寝てしまった義雄でした。
義雄が寝てから30分ほどすると、こんどは美津子が起きたのです。

「いつの間にか寝てしまってえー!?」
そう言うと、かなり乾いてしまっている蒸しタオルを目のところからはずし、
座椅子から身体(からだ)を起こした美津子でした。
「お父さん!?もうすぐお昼ですから!?」
「起きてください!?」
と美津子が義雄に向かって言ったのです。

「ああー!?」
「寝ちゃったかあー!??」
「美加は帰ってきたか??!」
と義雄があくびをしながら言ったのです。

「わたしも今起きたばかりで!?」
「台所で音がしていますから!?」
「美加が何か作ってくれてるんですかねえー!??」
「ちょっと見てきますよー!?」
と美津子が立ち上がりながら言うと、
「じゃあー!?いっしょに俺も行くからー!?」
「ファンヒーター消してくれるかー!??」
「俺がコタツ切るから!?」
と言って手を伸ばし、リモコンのスイッチを切った義雄でした。

美津子はすぐにファンヒーターのところまで行き、
スイッチを切ると、
「じゃあー!行きましょう!?」
と言い、ふたりはいっしょに台所に向かったのです。
台所では美加が、一生懸命焼きそばを作っていたのでした。






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