妙なこと 第十六話 (10)

「そうかあー!?」
「お父さん!?今でも缶ビールは飲まないもんなあ−!?」
「缶ビールに、穴あけ用の缶切りが付いていたヤツだよー!?」
「思い出さないかなー!??」
と義雄が言ったのです。

すると美津子が、
「でもへんねえー!??」
「お父さんが二十歳(はたち)の頃は、もうプルトップ出ていましたよー!?」
「確か!!?」
そう美津子は言うと続けて、
「今のようなのじゃなくって!!?」
「プルトップが全部取れちゃうのですけどー!??」
と言ったのです。

すると、少し赤みを帯びていた義雄の顔が、急に真っ赤になったのです。
「じゃー!?俺の記憶違いだったかなあー!?」
と言って頭をかいたのでした。

「お父さん!?何ごまかそうとしているのー!!??」
と美加が言うと、
「別に何(なん)にもー!?」
「さっ!寝るかなあー!?」
「あしたは久しぶりの土曜休みだから!?」
と言うと立ち上がり、サッサと夫婦の部屋にいってしまった義雄でした。

それから居間に残った三人が、
義雄が言った、”缶に穴を開けて飲む缶ビール”を、
何歳(いくつ)のとき飲んだのかで盛り上がったのは、
言うまでもありません。

「お父さんは!?何歳(いくつ)の時の話を言ったのかしらねえー!?」
と美加がうれしそうに言うと、
「誰でも一度ぐらいは!?」
「アルコールが入ったものを飲んだり食べたりはするけど!?」
「ビールは苦いからさあー!?」
と思わず修二が言ってしまったのでした。

「しゅうじー!!」
「こっそりビール飲んでるんじゃないんでしょうねえー!!??」
と美津子が怒(おこ)ったように言うと、
「お父さんが残したのを、前に少し飲んだことがあるだけだよー!?」
「それからは飲んでないよー!!?」
「苦かったから!?」
と修二は言うと、
「じゃあー!?おやすみ!!?」
と言って、一目散に居間を出て階段を上がり、
自分の部屋へと戻った修二でした。

(しかし!何歳の時に飲んだかは、
これ以上追求しないでもらいたいものである!!)(エヘッ! 笑)

「まったくー!!?」
「似たもの親子なんだからー!!??」
と美津子が言うと、
「でも修二ぐらいの年頃の男の子なら!?」
「大人が飲んだり食べたいするものに興味湧くのもあたり前よー!?」
「むしろ、健全かも!?」
と美加が言ったのでした。

「そうだわねえー!?」
「大人のものに、なんにも興味を示さないのも!?」
「かえって不気味よねえー!?」
と美加の言葉に納得した美津子でしたが、
「覚せい剤とかアルコールの一気飲みとか!?」
「体に危険を及ぼすような行為はしないで欲しいわ!!?」
と、付け加えて言ったのでした。

「お母さん!?」
「自分の子供を信用するしかないわよー!?」
「一日中監視できるわけじゃないんだから!?」
と美加が言うと、
「そうねえー!?」
「わたしが生んだ子なんだからねっ!!?」
と言うと、ニコッと笑った美津子でした。

「さーて!?」
「洗濯物を干して寝ようかなあー!?」
と美津子が言うと、
「お母さんが忙しそうだったから!?」
「わたし、みんなのも干しといたわ!!?」
と美加が言ったのです。

「ありがとう!!?」
「じゃあー!?あと戸締りと電気だけだわねえー!?」
「わたしやっとくから!?」
「もう寝なさい!?」
そう美津子が言うと、
「はーい!!?」
と言って美加は居間を出ていったのです。
そして階段を上がり、自分の部屋へと戻ったのでした。






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