妙なこと 第十六話 (9)

そして美加が風呂から出たのは、10時半を過ぎていたのです。
美加は洗面所でドライヤーを使いある程度乾かすと、
いったん台所へと行き、冷蔵庫を開け、
湯上りにウメッシュを一気に半分ほど飲んだのでした。

美加は、「うめえーッシュ!!」と言うと、
片手にそれを持って、洗面所へとまた戻ったのでした。(なんじゃそりゃー!??)

「まったくいつもながらお姉ちゃんは長いんだから!?」
と修二が美加の声を聞き言うと、
それまでテレビドラマを真剣に見ていた義雄が、
「そういえば、このドラマもそうだけど!?」
「時代背景がけっこう古いものか、新しいものだよなあー!??」
「俺たちが青春だった頃のドラマは見たことないぞ!!?」
「もっとも!?ドラマ自体あまり見ないけどなー!??」
と義雄がニヤニヤしながら言ったのでした。

「お父さん、何?うれしそうにー!??」
と修二が言うと、
「お前にはそういえば!?」
「お父さんが若かった頃の話をしたことがあまりなかったなあー!?」
「思い出したよー!?」
と義雄がうれしそうに言ったのです。

「お父さん思い出したのー!??」
「おでん缶どうして開けたか!!??」
と修二が言うと、
「違(ちが)うんだあー!?」
「缶ビールなんだけど!!?」
「発売して最初の頃は、缶切りというか?」
「あれはなんていう名前だったのかなあー!??」
「とにかく、穴をあけるヤツがついていたんだよー!?」
「思い出したよ!!」
と、うれしそうに義雄が言ったのでした。

「穴をあけるのー!??」
「俺は見たことないけど!どんなの!??」
と修二が言うと、
義雄は修二に、紙と鉛筆を持って来るように言ったのです。そして、
「お父さん、絵が下手(へた)だから!?」
「消しゴムも忘れずになあー!?」
と義雄が、居間を出て行く修二に向かって言ったのでした。

「分かったー!?」
そう修二は答えると、
階段を上がり自分の部屋に向かったのです。
それからしばらくして、
修二はレポート用紙とペンケースを持って、居間に戻って来たのです。

義雄はペンケースを開け、シャープペンを取り出し、
レポート用紙を一枚切り離すと、
最初に缶を書き、つづいて缶穴あけ具を書いて、
「これがこういうふうにくっついていたんだよー!?」
と義雄は言うと、
缶ビールの缶に、穴あけ具がくっついているところも書いたのでした。

それを見た修二は、
「へえー!!?」
「昔は缶ビールを開けるのにこういうのを使っていたんだあー!??」
と修二が驚いたように言ったのです。すると、
「だけど、しゅうじー!?」
「缶ジュースは、これよりだいぶ小さいのがくっついていたんだよー!?」
と義雄が言ったのでした。

「缶ジュースにも、これと同じようなのが付いていたのかあー!??」
そう納得したように言うと、
「じゃあー!?」
「プルトップを発明した人は!?」
「今から考えると、革命的なものを発明したんだねえー!??」
と言ったのです。

「まあー!?革命的といえばそうだけどー!?」
「改良されて!」
「今の形になるまでには、いろいろ事故も起きていたんだよー!?」
そう言うと義雄は、
自分が飲み終えた缶ビールを手に取り、しげしげと見たのでした。

「じゃあー!?お父さんは!?」
「缶ビールの穴あけ具のほうを思い出したんだあー!??」
「おでん缶をどうやって開けたのかは、まだ思い出していないんだあー!?」
と修二が少し笑いながら言うと、
「そのうち思い出すさあー!?」
と義雄は答えたのでした。

すると居間に、美津子と美加が用事を済ませやって来たのです。
「何を思い出すのー!?」
「お父さん!!??」
と美津子が言うと、
「お母さん!?覚えているだろー!?」
「缶ビールが発売されてすぐの頃!??」
と義雄が言ったのです。

「缶ビールが出始めの頃ですかあー!?」
と言うと少し考えてから、
「うちのお父さん!?」
「缶ビールは”缶臭い”って言って!!?」
「ビンビールしか飲まなかったから!?」
と美津子が言ったのでした。






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