妙なこと 第十六話 (8)

「お父さん!?」
「考え込んでも思い出さないときはダメだよー!?」
「何時間考えてもさあー!?」
「あるとき、パッと思い出すまで待つしかないよー!?」
と修二が言うと、
「そうだなあー!?」
「修二の言う通りだあー!?」
「出てこないときは出てこない!!?」
そう言うと、義雄も納得したのでした。

「よく試験で、憶えたのに答えが出てこないときがあるけど!?」
「他(ほか)の問題をやってると、急に思い出すときがあるよー!!?」
「分かる問題から先にやるように先生が言うけど!?」
「それって!的(まと)を得ていると思うよー!?」
と修二が言ったのでした。

「じゃあー!?そうするかあー!?」
「ここは気分転換にビールでも飲むかー!?」
そう義雄は言うと、
燗つけ器とおちょこが載ったお盆を持って立ち上がり、
「修二!?戸を開けてくれ−!?」
と言ったのです。

修二は言われたとおりに、戸を開けると、
「お父さん!?だいじょうぶー!!??」
「持つよー!?」
そう言うと義雄からお盆を取り上げ、
台所へと向かったのです。すると、
「サンキュー!?」
と言って、義雄は修二のあとをゆっくりとついて行ったのでした。

修二は台所の流し台の上にお盆を置くと、
コップを取り、冷蔵庫を開けウーロン茶のペットボトルを出し、
それを注いだのです。そして、
「お父さん!?缶ビール!?」
「350ml(さんびゃくごじゅう)のほうでいいよねっ!!?」
と言って冷蔵庫から取り出すと、すぐに義雄に手渡したのでした。

「350mlかあー!??」
と義雄が少し不満そうに言うと、
「お母さんに怒られるよー!?」
「飲み過ぎると!!?」
そう修二が言ったのです。
しかたなく義雄は缶ビールを受け取ると、
すぐに居間へと戻ったのでした。

ふたりが居間に戻ってしばらくすると、
美津子が風呂から上がって台所に来たのです。
そしていつものように、家計簿を付け始めたのでした。
家計簿をもう少しで付け終わろうとした時に、電話が鳴ったのです。

居間から大きな声で、
「出るよー!?」
と言う修二の声がしたのです。そして、
「はーい!!?」と美津子が大きな声で答えたのでした。

ところが電話に出たのは、けっこう酔っている義雄でした。
「もしもしー!?」
と女の人のような声まねのつもりで、本人は出たのです。すると、
「お父さん!!?」
「美加だけどー!?」
「お母さんに駅に着いたから、迎えに来てって言ってくれるー!??」
と美加が言ったのです。

電話口で耳を立て聞いていた修二は、
美加のことばを聞いて、腹を抱えて大笑いしたのです。そして、
「だから無理だって言ったのにー!?」
そう言うと修二はまた大笑いしたのでした。

「何笑ってるのー!??」
「笑ってるの修二でしょー!!?」
と美加がうれしそうに言うと、
頭をかきながら義雄が、
「お父さん飲んじゃったから!?」
「お母さんにすぐ行くよう言うからなっ!?」
「じゃあー!?」
そう言って電話を直ぐ切った義雄でした。

そして義雄は台所へと行き、
「美加が駅に着いたそうだ!?」
「迎えに行ってくれるかなー!?お母さん!??」
と義雄が言うと、
「変な電話じゃあーなかったんですねっ!!?」
「分かりました。すぐ出かけますから!?」
そう言うと美津子はいつも掛けてところからカギを取り、
玄関へ行き靴を履くと、急いで軽自動車で出かけたのでした。

夜の9時を少し過ぎていたので、道路は混んでなく、
じきにふたりは戻って来たのです。
美津子は帰りの道すがら、
変な電話が掛かってきた話を美加にしたのでした。

「ただいまー!?」「ただいまー!?」
とふたりが、玄関を開けると言ったのです。
美加はすぐに2階へと上がり、着替えると、
洗い物と着替えを持ち、風呂場へと行き、
洗濯機に自分の洗濯する物を入れると、
スイッチを入れ、すぐに風呂に入ったのでした。






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