妙なこと 第一話 (6)

「おい!みんな何持ってんだ?!」
「飲み物のグラスを持たないで!」と、義雄が少し大きな声で言いました。
「だってお父さん!急に、乾杯ッて言うんだもん?!」
「いつも、準備いいかとか、グラス持ったかって言ってからするのにー!?」
「慌てて、近くにあったものを上げたのよ!」
と、美加が”ふくれっつら”をして言ったのです。

「そうだな、いつもそう言ってから、乾杯って言うよな!?」
「わるい、わるい!」
先ほどの動揺がまだ残っている義雄でした。
いくら急に乾杯って言われたからと言って、
すぐ近くにあった物をあげるだろうか??!。
ふつうは慌てても、乾杯用のグラスを捜して上げると思うのだが、
とりあえず、上げてしまえという感じで上げてしまうのはやはりおかしい!。
そんな家族が上げたものは?!。

「なんだ和雄は、箸なんか上げて!?」
「ちょうど、鍋の煮具合を見ていたんだ!!」
「美加はワインのビンを上げて!?」
「だって、ちょうど注ぎ終えたときだったんだもん!」
「修二はウインナーなんか上げて!?」
「お兄ちゃんの前にポテトとウインナーがあったんで、
味見をしようとつかんだところだったんだ!」

「どうしたんだ、お母さんは?!」
「刻んだ白菜なんか上げて!」
「白菜が煮えたんでもう少し入れようと思って、
刻んだ白菜を持ったところだったんですぅー!」
「まったっく!しょうがないヤツラだ!!」
「じゃー、やり直すからグラスを持って!!」
「いいかー!??」と義雄が言うと、
みんな一斉に「はあーい!」と、答えました。

すると義雄が言いました。
「家族全員の健康を祝して!乾杯!!」
みんなが続いて「乾杯!!!!」と言いました。めでたし、めでたし。

そうしてみんなで、鍋をつつきながら食べていると、
玄関で、「ピンポーン」とチャイムが鳴りました。
「お客さんみたいね!」そう言うと、
美津子が箸を置いて立ち上がり、玄関に向かって歩き出しました。

「こんばんは!?」玄関の外から声がします。
「どなた?」「あいていますからどうぞ!」
「失礼します!」ドアを開けながら答えました。
「あら、京子さん!?」「バイトの帰り?!」
「はい!」「美加、います?」

「おばかのが4人ほどいますけど、美加だけでいいの?」
「4人????」
「そう、美加に和雄に修二にうちのお父さん!」
「そ、そういう意味ですか?わたしはほかに誰かいると思って!」
「おばかのは、4人もいれば十分です。は、は、は、は!」

笑い声を聞いて、修二が来ました。
「あれ、京子さん!おかあさん?!なに、笑ってたの?」
「別にたいしたことじゃー、ないの!」
「ふーん」。「おねーちゃん、京子さんだよぉー!?」
簡単にごまかされてしまう修二でした。
「今いく!」美加がそう言うと、
「俺も行く!」と和雄も言い、ふたりで玄関に来ました。

「きょうさー、バイト先でショートケーキ3つもらったんで!」
「おばさんと3人で食べようと思って来たんだけど!」と京子が言うと、
「ラッキー。食後のデザートに食べよー」
「京子、夕飯まだでしょ?!。あがって食べてきなよ!」と、美加が笑いながら言うと、
「そうして!」「今、したくするから!?」
と、ニコニコしながらがそう言って、
美津子は台所に戻りました。

「遠慮しないであがれよ!」和雄がそう言うと、
「うん!」と言って、
自分の靴と、脱ぎっぱなしの修二の靴を揃えてあがりました。
美加と京子と和雄3人で、台所に向かいました。
それを見ていた修二が、
「いい嫁さんになるぜ、お兄ちゃんにはもったいないかな?!」
などと言っていると、台所から和雄が言いました。

「修二、早く食べないとだめだぞ!」
そう言われると、
「あれ?!いつもなら”早く、食ちゃえよ!”って言うのに!?」
「京子さんを、意識しているんだ!」
そう思いながら台所に行く修二でした。

いっぽう台所では。
「すいません。おじさん」「お食事中にお邪魔して!」
と京子が言うと、
「おお、京子ちゃん!べつにいいんだよ、遠慮しなくても!?」
「俺は、野球を見ながら一杯やるんで居間に行くから!?ゆっくりしてって!!」
と義雄が言ったのでした。

「ありがとうございます!」と、京子が遠慮しながら言うと、
「ごめんね。うちは食べるところが狭くて!?」
「手はそこで洗ってくれる?!」と台所の蛇口を指差し、京子が行くと、
「タオルは、そこの冷蔵庫の横に掛かっているから!?」
そして、「あなたたちいつまで食べてるの?」
「食べ終わったら、お父さんの相手をしてやって頂戴!」
「女性は、女性どうしで、話すことがあるんだから!?」
と言って、仕切る美津子でありました。






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