妙なこと 第一話 (4)

「あーあ。せっかくスクープを撮ったと思ったのに!!?」
「もっと早くから渋滞していれば、ちょうどよかったのになー!??」
修二はがっかりです。
「ちょうど見えなくなってから、渋滞したからな!?」
「そうすれば、俺にも見えたのに?!」と、義雄が残念そうに言いました。

まるで計算されたかのような、タイミングでした。
もう、これしかないというような、絶妙なタイミングでした。
こういうのを、グッドタイミングというのでしょうか?!。
意味合いがちょっと違うかな?。
8帖ほどの部屋に台所とテーブルがあります。
椅子に和雄と、美加が座っています。

和雄が言いました。
「修二のやつ!きっとあした学校で自慢したかったんだぜ?!」
「すごくがっかりしてるもんな!?」
「ほんと!」
「自分じゃあー、うまく撮ったと思ったんでしょう?!」
「きれいに撮れてるけど、あれだけ動いてるんじゃーわからないわ!!?」
「微妙(びみょう)だったもの?!」
と、美加が言いました。

「美加、手伝って頂戴!」
「そんなとこでしゃべってないで!!」
「和雄は、お風呂のしたくして!」
と、美津子に言われると、
二人とも”べろ”を出したあと、言いました。
「はあーい!」
いっぽう、居間のコタツでは、まだあきらめずに、
義雄と修二が携帯をいじっています。

「お父さん、このとこなら少しはゆれが少ないから!?」
「どうかなー?」と、修二が見せていますが、
「言われてみれば、止まっているようには見えるかな?!」
「でもやっぱり、逆に少し動いてるようには見えないぞ!?」
と、義雄に言われた修二は、
「やめた!」「終わりにしよぉー!?」と言ったのです。

なぐさめるように義雄が言いました。
「今度見つけたときは、車を止めてやるからな!」
すると、「うん!」と答えた、単純な修二でした。
そうそう見つかるものではありません。
ヤツラも考えています。人間の目を欺(あざむ)くのは簡単です!。

「きょうは鍋だよ、お父さん!」
台所を見てきた修二が言いました。
「やっぱなー、カレーか、シチュウか、鍋かだと思ったよ」
「地下で買い物をしたときに、買っているものが煮込み系の食材だったから!?」
「あしたは、カレーかシチュウか?!」
義雄がそんなことを言ってると、
「お父さん!ビールそれともお酒それともワイン?!」
と、和雄が訊きました。

「風呂沸いてるか?」と義雄が言うと、
「沸いてるよー」と和雄が言い、
「じゃー!?風呂、先に入るかな?」と、義雄が言ったのです。
「美加がもう先に入っているよ!」
「美加!お父さんが入るってよおー?!!」
「いつまで入ってんだー!?」
と、和雄が風呂場まで行って言いました。
「今出るから、もう少し待って!」と、美加が答えました。

「お前のもう少しは、長いんだよー」
「お父さんは、”からすの行水(ぎょうずい)”ですぐ出るからいいけど!」
そう和雄は、つぶやきました。

そういえばこんなことがありました。
まだ和雄が高3で、受験勉強してるとき、
夜中の12時頃腹が減ったので、台所に来てみると、
パンツいっちょで、冷蔵庫を見ている義雄がいました。

「お父さん、帰りが遅かったの?」と和雄が言うと、
「ああ!」と義雄が言い、
「何、探してるの?!」と和雄が訊くと、
「缶ビールをな!」「風呂から出たら飲もうと思って!」
と、義雄が言ったのです。
「ここにあるよ!」と和雄が言うと、
「おお、サンキュウ!」と、義雄が言ったのでした。

「早く入りなよ?!」「かぜひくよ!」と和雄が言うと、
「お前は、どうしたんだ今ごろ?!」と義雄が言い、
「腹減ったからラーメンでも作って食べようと思ってさ!」と、答えると、
「受験がんばれよ!俺、風呂入るから!!?」
と、義雄は言ったのでした。

そして、和雄はカップめんにお湯を注いで
ゆっくりとトイレに行って、用を済ませてくると、
義雄がパンツいっちょで、冷蔵庫を開けているではありませんか。
「お父さん!まだ風呂に入ってないの!?」と和雄が言うと、
「今、入ったばかりだ!!」と、答えたのです。

「うそだろ?!だってまだ3分たってないよ?!!」
「石鹸でちゃんと洗ったの?」と和雄が言うと、
「あたり前だろ!頭は、洗ってないけどな!!」
義雄はそう言うと、冷蔵庫から缶ビールを取り出して、
うまそうに飲みましたとさ!。






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