本来コーヒー紅茶などをお出しして、御もてなししなければいけませんが、
インターネットの都合上それができません。
ご自分で好きなものを適当に用意していただき、
キーボードなどの上にこぼさぬよう注意して、
ときどき飲みながらでもお読みくださいませ。 m(_ _)m
きょうは西からの風が少し強く吹いてます。
風船は、斜めになりながら上へと上って行きました。
空にはそんなに大きくない雲が、5,6コ浮かんでいます。
「やっぱ、へんだよなぁー?!」修二がしきりに首をひねっています。
雲が西から東に少しづつですが動いているのが見えます。
車も動いているのですが、よくわかります。
「あの雲だけ1つ止まっているよ!やっぱり!!」
「どれどれ!?」と和雄が雲のほうを見ると、修二が指をさして言いました。
「あれだよ!?あの雲!あの雲だけ動いてないんだ!!」
全員が雲のほうを見ました。
「お父さん!危ないから前見てて!!」と、美津子が叫びました。
そう言われて、義雄が顔をまっすぐに向き直したのです。
「危ない危ない!?修二余計なこと言うなよ!!?」と義雄が言いました。
「ごめん!でも本当だよ!!」
「ね!ほらー!?」と修二がまた指をさして言いました。
見ていた3人が口々に言いました。
「あれ、ほんとだ!」。「まーほんと!」。「どすこい、どすこい!」
義雄は見たくてしょうがありません。
ちょうど信号で止まったので見ようとしましたが、
ビルが邪魔して見えません。
「なんだぁー?!ビルが邪魔して見えないよー!?」
そう義雄が残念そうに言いました。
「不思議なこともあるものね?!」と美津子が言いました。
「あれって、どういうこと?!」美加がみんなに訊(き)くように言いました。
「あの雲は、きっと重い雲だったんだ!」
「軽い雲は、風で飛ばされて動いたんだよーきっと!」と、修二が言いました。
「でもなー、あの雲さー!??」
「止まってるというより、少し逆に動いていなかったか?」
和雄がそう言ったのです。
「そうよ!わたしも少し逆に動いていたように見えたわ?!」
「車が動いてたから、はっきり言えないけど!?」
「お母さんはどおー?」と、美加が言いました。
「わたしも、少し逆に動いていたような感じがしたわ?!」
「車は動いてたけど!」と美津子が言いました。
義雄がつまんなさそうに言いました。
「お前たちはいいさ!」
「俺は、運転してて何にも見てないんだから!?」
すると、
「お父さん!すねない、すねない!?」
「携帯で撮ったから、あとで見せてやるよ!」と修二が言いました。
「おお、そうか!さすが修二だ!ぬかりがない!!」
と言って、機嫌を直した義雄でした。
家まではもう少しですが、渋滞(じゅうたい)が続いています。
「この通りの信号が変わるのが、横の通りより短いよなー!?」と和雄が言うと、
「横の通りの信号に右折(うせつ)の矢印ができてから!?」
「向こうのほうが長くなったんだ!!」
と、義雄が言いました。
「へー!?そうなんだ?!!」
「前は、同じぐらいだったもんなぁー!?」
「正月のときは気がつかなかったよ!?」と、和雄が言うと、
「正月はすいていたからだろー!?」と義雄が言いました。
「お兄ちゃん!お正月、車に乗った?」と、美加が訊(たず)ねると、
「そういえば、乗ってなかった!」
「それじゃーわかるわけないよ?!」と、修二が言ったのです。
「ごめん、ごめん!」と言って、頭をかく和雄でした。
みんな口々に笑いました。
「はは!」。「ひひ!」。「ふふ!」。「へへ!」。「ほほ!」。
ふつうなら20分ほどで帰って来れるのですが、
きょうは、かなり混んでいて30分ほどかかりました。
家に着くと、
さっそく修二の携帯で写したムービーを見ようと、義雄が言いました。
「修二!携帯は?!すぐ見よう!」
「はい!」と言って、修二が携帯をよこしました。
「これ新しいのだろ!やってくれ!!?」と義雄が言うと、
「ちょっと待ってよー!?着替えるから!!?」と修二が答えると、
「お父さんも着替えたら?!」と、美津子が言いました。
「じゃあ、そうするか!?」と言うと、急いで着替えにとりかかる義雄でした。
「けっこうきれいに写っているよ!」そう修二が言ったのです。
「どれどれ、」
「修二!きれいに写ってるけど、ゆれてるぞ!!?」
「これじゃー、逆に動いてるかわからないなー!??」
そう言うと義雄は、少しがっかりしたようでした。
「車に乗りながら写したんで、動いてんだよー!?」
「うまく写したつもりだったんだけど!?」
「ほんとにこれじゃー、わからないなー?!」
「やっぱ、画面が小さいんで無理だったのかな?!」
と、修二もがっかりしたように言ったのです。
「そりゃー!?肉眼で見るのと!」
「携帯の小さい画面で見るのとじゃー!?ぜんぜんちがうさー?!!」
と、和雄が言ったのでした。
「残念、で、し、た!」美加が余分なことを言ってしまったのです。
「お姉ちゃんは見たけど、お父さんは見てないんだぞー!!?」
と、修二が怒った口調で言いました。
「ごめん!修ちゃん!?せっかく撮ったのにネ!!?」と美加が言うと、
「いいよ!もう!?」と言うと、
何度も繰り返して見直す修二でした。