携帯によろしく 第八章(5)

「わたくしの場合は、お母さま!?」
「でいいんでしょうけど!??」
「従兄弟(いとこ)やお友だちは、白石のおば様って呼んでいますけど!?」
「そういえば、近所の方々(かたがた)は!?」
「白石の奥様って呼んでいますわねえー!?」
と小百合が言ったのでした。

一平になんと呼んでいいのかと言われた菊枝は、
「ほんとですわねえー!?」
「一平さんがお困りなことはわかりますけど!?」
「わたくしも、どのように呼んでもらったほうがよいのか!??」
「わかりませんわねえー??!」
と、さっき笑っていた顔が、
困った表情に変わって、そう言ったのでした。

信号で車が止まると、
「おばさま!?って言い方でいいんじゃないかしら!??」
「普通に、おばさまでも!菊枝おばさまでも!??」
「白石のおばさまでも!??」
と小百合が言ったのです。

「そうですね!。」
「別に難しく考えなくても!?」
「おばさまでいいんですよねえー!??」
と一平が、嬉しそうに言ったのでした。

「じゃあー!そういうことで!?」
「おばさま!?よろしくお願いします!。」
と一平は後ろを振り向き会釈をし、嬉しそうにそう言ったのです。
「こちらこそ!よろしくお願いします!?」
と言って菊枝も嬉しそうに、会釈を返したのでした。
それからすぐに信号が変わり、再び車は走り出したのです。

環七通りから、横道に入りしばらく走ると、
白石家の駐車場の入り口に着いたのでした。
駐車場の入り口のシャッターが上がりきると、
車がそこにゆっくり入ったのです。

一平は最初の訪問のときとは違い、
車から出ると、小百合に質問をしたのでした。
「車のターン装置はあそこですか?!」
と言って指差すと、
「はい!左右二つあります!。」
と小百合が答えたのです。

ふたりの会話を聞いていた菊枝は、
「一平さん!?ではお先に行っていますから!?」
と言うと、
「すいません!?」
「すぐ行きますから!?」
と一平は答えたのです。
菊枝はドアを開け玄関に向かって歩いて行ったのでした。

「小百合さん!?ちょっとスイッチ入れてもいいですか?!」
と言うと、
「だめです!」と小百合は言ってすぐに、
「嘘です!やってみてください!?」
とニコニコしながら言ったのです。

一平はすぐにスイッチのところに行き、
「ありがとうございます!」
「ではお言葉に甘えて!?」
と言ってうれしそうに、スイッチを押したのでした。

「明かりのほうはセンサーで点く様になっているようですが!?」
「ターン装置は手動スイッチですね!??」
と一平が言うと、
「はい!安全のためにはセンサーより手動のほうがよいからと!?」
「そう設計の方が言ってくれたので、そうしました!!。」
と小百合が言ったのです。

「ではこの装置は、あとからつけたのですか?!」
と一平が言うと、
「はい!私が免許を取る時に父が心配して、付けてくれたんですよ!?」
とニコニコして、小百合が言ったのでした。
そんな話をしていると、車がシャッターのほうに向いて、
ターン装置が止まったのです。

「小百合さん!?お母さまが先に行ってしまわれたので!?」
「急いで行きましょう!?」
と一平は言うと、何気なく小百合の手を握って、
ドアを開け、急いで行こうとしたのです。
「ええ、そうですわね!。急ぎましょう!!」
と小百合が答えると、
ふたりはそのまま手をつないで、走って菊枝のあとを追いかけたのでした。






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