携帯によろしく 第八章(4)

三人は、それぞれが優に一声かけると、
病室を出たのです。
そしてナースステーションに寄り、
それからエレベーターに乗ったのでした。

一階に着くと、車が置いてある駐車場まで歩いたのです。
運転席に小百合が乗り込み、助手席に一平が乗り込み、
菊枝が後ろの席に乗り込んだのでした。
そして病院をあとにしたのです。
車は白石家へと向ったのでした。

「一平さん!?おなかがすいたでしょー!??」
と小百合が言うと、
「ええ!正直(しょうじき)言って、空(す)き空きです!?」
「病院にいるあいだは、なんとも感じないんですが!?」
「病院を出たとたん!このあいだも同じでした!。」
「おなかが鳴ったのがわかりましたぁ!??」
と一平が言ったのです。

「ええ!?聞こえてしまいました!。」
と小百合が答えると、
「一平さん!わたしにも聞こえましたよ!?。」
とニコニコしながら菊枝が、
後ろの席から一平に向って、言ったのでした。

「車がいいので、室内が静か過ぎて、ごまかせませんねー!?」
と一平が言うと、
「いいえ!?普通の車でもごまかせませんでしょう!?」
「先ほどぐらい大きいと!!?」
と菊枝が嬉しそうに言ったのでした。

「そんなに大きかったですか?!」
「わっ、はっはあー!?」
と言って頭をかき、笑ってごまかした一平でした。

それから一平は、”菊枝さんのことをなんて読んだらいいのだろう??!”
と、ふと考えたのでした。
”優とは付き合っていたけど!婚約してるわけでもないから?!”
”おかあさん とは呼べないし!?”
”おばさん ではなれなれしいし!?”
”名前の菊枝さん って呼ぶほどしたしくはないし!??”
”困ったなあー??!”
と、真剣に悩んでいたのでした。

すると小百合が、
「どうかなさったのですか?!」
と、車が信号で止まったときに訊いてきたのです。
そう言われた一平は、
「はい!今ちょっと悩んでいることがあるんです!」
と言ったのでした。

「なんですか?!」
「悩んでることって?!」
と小百合が言うと、
「一平さん!?もしよかったら話してください!?」
「お力(ちから)になれるかもしれませんから!?」
と菊枝が言ったのです。
すると信号が青に変わったので、車はまた走り出したのでした。

「皆さん!?笑うかもしれないんですけど!??」
「ほんとに困ってるんです!?。」
と一平が言うと、
「ほかの方にはお話しませんから!?」
「遠慮せず!おっしゃってください!?」
「ねえー!?小百合さん!?」
と菊枝が言ったのです。

「はい!」
「一平さん!?遠慮せずに!!?」
と小百合が運転しながら言ったのでした。

「では遠慮なく、おことばに甘えて!?」
「実は菊枝さんのことなんですが!?」
「すいません!菊枝さんなんてなれなれしく言って!!?」
と一平が言うと、
「なんですの!?」
「わたくしのことって??!」
と菊枝が心配そうに訊いたのです。

「ええー!?本当に困っているんです!!??」
「普段(ふだん)!なんてお呼びすればいいのか??!」
と一平が言うと、
菊枝と小百合は同時に笑ったのです。
そしてすぐに小百合が、
「そうですわねえー??!」
「確かに!!?」
と、笑いをこらえて言ったのでした。






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