携帯によろしく 第八章(3)

「一平さんの言いたいことはわかりますわ!?」
「ありがとうございます!。」
と言うと小百合は、会釈したのです。
「とんでもない!?」
と言って一平も会釈したのでした。

車が病院に着き駐車場に止めると、
ふたりはそこから少し歩いて、病院に入ったのでした。
エレベーターで7階まで上がったのです。
小百合は、ナースステーションに寄ったので、
一平も後ろからついていって、会釈をしたのでした。

それから病室に入ったのです。
母の菊枝がイスに座っていたのでした。
菊枝はすぐにドアのほうを振り向くと、
立ち上がり会釈をしたのです。
一平も会釈をしました。

「お忙しい中をありがとうございます!」
と菊枝が言うと、
「いいえ!ユーに何もしてやれないので!?」
「また花を持って来ました!。」
「これを飾って下さい!」
とすまなそうに一平が言ったのです。

「優も喜んでいると思います」
「ありがとうございます!」
「さっそく飾りましょう。」
「小百合さんお願い!?」
と菊枝が言ったので、
一平は小百合に花束を渡したのでした。

「ではさっそく替えましょう!」
と小百合は言い、花を挿(さ)してある花瓶を持つと、
「わたしも手伝いますから!?」
「一平さん!?イスにお座りください!?」
そう菊枝は言うと、花束を小百合から受け取り、
いっしょに病室を出て行ったのでした。

ユーとふたりだけにしてくれたことを、すぐに感じ取った一平でした。
泰三から聞いたように、ベッドの横のイスに座り、
できるだけ耳元で話し始めたのです。
一平が話を続ければ続けるほど、だんだんと涙声になってきて、
涙を流しながら、話したのでした。

そう長く話し続けることはできなかったのです。
一平は、
「ユー!ユー!」
「目を覚ませよ!ユー!。」
と涙を流しながら、言うのが精一杯でした。
だんだんと声は小さくなり、
涙だけがあふれ出てきたのです。

一平はハンカチをポケットから取り出すと、顔全体にあて、
涙を拭いたのでした。
しばらくして、菊枝と小百合が戻って来たのです。
一平はすぐイスから立ち上がったのでした。

「一平さん!?そのまま座っていてください!?」
「優のそばに、しばらくいてやってくださいね!?」
と菊枝が言ったのです。
「はい!」と言ってうなずき、
一平はすぐにイスに座ったのでした。

小百合は一平が持ってきた花束を挿した花瓶を、
元の位置に戻し置いたのです。
「優!一平さんが持ってきてくださったお花よ!?」
「見てちょうだい!?」
そう言うと涙声で、
「きれいでしょ!?」と言い、泣いたのでした。

「ユー!ユー!」
「目を覚ませよ!!」
「何か言ってくれよ!!?」
と優にことばをかけるのが、精一杯の一平でした。

しばらくして面会時間の終わりを告げるBGMが流れてきたのです。
小百合は涙をハンカチで拭くと、
「もう、面会時間が終わりですわ!」
「一平さん!?このあいだと同じに、お食事を付き合っていただけます?!」
と言ったのでした。

ハンカチで涙を拭くと、
「はい!俺でよかったら!?」
「いいえ!わたしでよかったら喜んで!?」
と一平は答えたのです。






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