携帯によろしく 第八章 (2)

「よろしくお願いします!」
と言って一平はお辞儀をすると、
自分の席に戻ったのです。
しばらくすると昼休みも終わり、
午後の仕事の時間になったのでした。

4時近くになって得意先の担当者の松平 健一から連絡が入ったのです。
「泰三さん!?5番です!」
と言われた泰三は、電話に出たのでした。大きな声で、
「もしもしー!?」
「たいらくんかあー?!」
「あっ、そうー!?わかりました!。」
「できたらすぐファクスで送るから!?」
「ファクシミリ?!いいじゃあー!??どっちだって!!?」
と答えると、泰三はしばらく話し電話を切ったのでした。

それを聞いた一平はすぐに飛んで来たのでした。
ほかの設計者もすぐ泰三のところに来たのです。
「せんぱーい!?設計変更ですか?!」
と一平が言うと、
「お前の担当のところじゃないよー!?」
と答えたのでした。

ほかの設計担当者の設計変更依頼が来たのでした。
泰三は細かく指示を与えて、設計変更のアドバイスをしたのです。
そのあと一平のところにやって来ました。

「一平の担当のところは、今のところ問題はないって!」
「一平さんによろしく言ってくださいってさあー!?」
「なんかあったのか?!」
と泰三が訊くと、
「いいえ!たいらくんに、優の件!?」
「誰にも言わないでくれって言ったんですよー!?」
「気を利かせてくれたんじゃないんですかあー??!」
と一平は答えたのです。

「そうかあー!?」
「じゃあー!?俺が知ってることも知らないんだあー?!!」
と泰三が言うと、
「たぶん!先輩は知ってるって!?」
「このあいだ来たときに、言わなかったと思うんですよー!??」
「よく憶えてないんですけど!!?」
と一平は言ったのでした。

それから4時半少し前に、
花屋がお見舞い用の花束を持って来たのです。
一平から預かっていたお金で支払いを済ませたのでした。
事務員はその花束を受け取るとこのあいだと同じように、
事務所の流し台のところに持って行ったのです。

5時になると一平は急いでタイムカードをうち、着替え、
いつものカバンを持つと、
事務員から花束とお釣りをもらい、
「斉藤さんありがとう!?」と言うと、
一階に降りていったのでした。

会社の玄関を出て、
このあいだと同じ場所の道のところに出ると、
じきに小百合の車が、ハザードランプをつけ横づけしたのでした。
助手席の窓を開け、
「一平さん!?お待ちになりました!??」
と小百合が言ったのです。

「ちょっと前に来たばかりで、ほとんど待ちませんでした!?。」
と一平が答えると、
「そうですか!?それはよかったわ!?」
「どうぞお乗りください!?」
と小百合が言ったのでした。
一平はいつものカバンと花束を持って車に乗り込んだのです。
助手席に座りドアを閉めると、
すぐに窓が閉まったのでした。

「お忙しい中すみません!?」
と小百合が言うと、
「いいえ!?とんでもない!?」
「毎日伺(うかが)わなければならないのに!?」
「すみません!毎日伺えなくて!!?」
とシートベルトを締めると、一平が言ったのでした。

車は慶応大学病院に向って走って行ったのです。
「このあいだ、お迎えに来るときにも!?」
「早めに出たんですが!?待たしてしまったので!!?」
「きょうはもっと早く出てきました!?。」
「ちょうどよかったみたいですわね!!?」
と嬉しそうに小百合は、言ったのでした。

「すいません気を使わせて!?」
「混(こ)む時間帯ですので、待つのはかまいませんから!?」
「安全運転で、来てください!!?」
と一平が言うと、
「スピードを出してきたと思ってらっしゃるの?!」
と小百合が言ったのです。

「いいえ!そうじゃあーありません!?」
「小百合さんのことが心配で!!?」
「あのー!?変な意味じゃあーないんですよ!!?」
「うまく言えないんですけど!!?」
と言って頭をかいた一平でした。






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