携帯によろしく 第七章(7)

”育ちゃんが置いてったんだあー!?”
”やっぱり部屋の匂いが気になったんだなあー!!?”
そう一平は思ったのでした。
そしてうれしそうに笑みを浮かべたのです。

「何かおもしろいことでもおわりになったのですか?!」
と小百合が言うと、
「すいません!?」
「コーヒーでもと言ったんですが?!」
「インスタントしかないんですよー!?」
「インスタントでもいいですか?!」
と一平が言ったのでした。

「ええ!?かまいません!?」
と小百合が答えると、
「じゃあー!?ちょちょいのちょいと作ちゃいますから!?」
「ちょっと持ってください!!?」
と言って、ポットの再沸騰ボタンを押したのでした。

一平はテーブルの上に受け皿二つ出すと、
その横にコーヒー茶碗を二つ並べ置き、
受け皿の上の隅に、
一回で使いっきりのプラスチック容器に入った、シロップとミルクをのせ、
シュガースティックものせたのです。
コーヒー茶碗の中にインスタントコーヒーの粉を入れ、
ポットのお湯を注いだのでした。
入れ終わると、スプーンでかき混ぜ、
受け皿の上に置き、新しいスプーンを受け皿の上にのせたのです。

「すいません!?これしかないので!!?」
「お口に合うかどうかわかりませんけど!?飲んでみてください!??」
そう言って一平は、コーヒーを小百合に出したのでした。
「いいえ!?とんでもありません!?」
「ありがとうございます。いただきます!。」
小百合はそう言うと、そのまま一口飲んだのです。

「うーん!?」と小百合は言うと、
ミルクとシロップを開け、入れたのでした。
そしてスプーンでかき混ぜ、また一口飲んだのです。
軽くうなずくと、シュガースティックを3分の1ほど入れ、
スプーンでかき混ぜると、また一口飲んだのでした。

「おいしいですわよ!?一平さん!?」
と言ってもう一口飲んだのです。
「よかった!」
そう言うと一平も、自分のコーヒーにシロップとミルクを入れ、
シュガースティックを4分の1ほど入れ、飲んだのでした。

一平はコーヒーを二口飲むと、
「じつは今、付き合っている彼女がいるんです!。」
「ユーとは、結婚を前提にお付き合いしたかったのですが!?」
「彼女からは、返事をもらえませんでした。」
「彼女は俺のことを”好きだ”と言ってくれてはいたんですが!?」
「まだ結婚は考えていないようでした!。」
そう言うと、もう一口コーヒーを飲んだのです。

「俺ももう28なので、いくら好きでも!?」
「結婚を前提でないお付き合いはできないのです!。」
「ちょうどその頃、仕事が忙しくなり!?」
「ユーとの連絡を以前よりとれなくなったのでした。」
「まさか携帯を拾った男が、
電話に出ていたなんて思ってもいませんでした!!?」
「新しく出来た彼氏かと思っていたのです!。」
と一平は言うとまた一口コーヒーを飲んだのでした。

「今思えば、彼女があんな口の訊き方をする!?」
「彼氏ができることは考えられないとわかるのですが?!」
「その時は、そう思い込んでしまっていたのでした!!?」
そう言うと一平は立ち上がり、
「申し訳ございませんでした!!?」
と言うと、深く頭を下げ、お辞儀をしたのでした。

小百合もびっくりして立ち上がったのです。
「一平さん!?頭を上げてください!!?」
「そういういきさつがあったことは、何も知りませんでした。」
「優のお友だちから聞いて、あなたの存在を知ったのですから!?」
「とにかくお座りになってください!!??」
と小百合が言うと、
「わかりました。じゃあ座ります!。」
と一平が言って座ると、小百合も座ったのでした。

しばらく沈黙が続いた後、
「一平さん!?お見舞いには、来てくださいます??!」
と小百合が言うと、
「もちろんです!毎日は無理かもしれませんが?!」
「できるだけ伺いたいと思っていますので!?。」
「その時はお電話、携帯のほうに差し上げますので!?」
「よろしくお願いいたします!?。」
と一平が言ったのです。

「こちらこそ、よろしくお願いいたします!?。」
そう言うと小百合は、コーヒーを飲み干したのでした。
「ご馳走様でした。」
「では、お電話をお待ちしていますので!?」
「きょうはこれで失礼します!。」
と小百合は言い、会釈をしたのです。
そして一平も、会釈をしたのでした。






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