携帯によろしく 第七章(3)

三人が席につくとすぐにお手伝いさんがお茶とお絞りを持ってきて、
三人の前に置いたのです。
そして三人に向って会釈をすると、
すぐに部屋を出て行ったのでした。
三人はお絞りで手を拭いたのです。

一平は少し笑みを浮かべ、
「なんか小百合さんと向かい合っていると、お見合いみたいですね!?」
と言ったのです。
「ええ!?わたしも、ふと、そう思いました。」
と小百合も、笑みを浮かべ言ったのでした。

きれいな彩(いろど)りの前菜が運ばれてきたのです。
三人の前にその皿と箸を置くとお手伝いさんは、
部屋を出て行こうと、三人に向って会釈をした時に、
「ナツさん!?ちょっと待って!!?」
と菊枝が言ったのです。そして、
「山本さん!?何かアルコールをお飲みになります?」
「遠慮なさらずに言ってください!?」
と、菊枝が一平に言ったのでした。

「きょうは、結構です!」
と、一平が答えたのです。そして、
「吉井さんは、普段”ナツさん”と呼ばれているのですか?」
と、お手伝いさんに向って言ったのです。
「はい!そうです。」とお手伝いさんが答えました。
「ナツさんとお呼びしていいですか?」
と一平が言うと、
「ええ!もちろん!。そうお呼び下さい。」
と、お手伝いさんは答えたのです。

「これはきれいで崩すのがもったいないぐらいですが?」
「ナツさんが作ったのですか?」
と一平が訊ねると、
「ええ!そうですよ!?」
「褒めていただきありがとうございます。」
と、ナツさんはうれしそうに答えたのでした。

「ではいただきます!。」
と一平は言うと、うれしそうに食べたのです。
「スゲーうめえー!!?」と言ってすぐ、
「すごくおいしいです。」と言い、
笑いながら三人を見たのでした。
すると三人とも笑っていたのでした。

「すいませんけどみなさん!?」
「一平と呼んでください!。」
「”山本さん”って呼ばれるとなんか変なので!」
「お願いします!」
と言って、ちょこんと頭を下げた一平でした。

そしてお手伝いのナツさんは、会釈をすると、
部屋を出て行ったのです。

「じゃあー!一平さん!?」
「さきほど、”きょうは結構です”とおっしゃったのですが!?」
「いつもはどんなものを、お飲みになるんですか?」
と、小百合が訊いたのです。
「いつもはたいがい最初はビールです!」
「普段の日は風呂上りに缶ビールを飲むぐらいです!」
と答えた一平でした。

一平は菊枝と、小百合の箸の進み具合を見ながら、
前菜を食べたのでしたが、おいしかったのでつい、
先に食べ終えてしまったのでした。

ナツさんがワゴンを押して部屋に入って来たのです。
そしてコンセントにプラグをさしたのでした。
一平のほうからはステンレスと思われる面と、
一番上のテーブルの面しか見えませんでした。
テーブルの上にはお盆と、布巾らしきものが載っていたのです。
ワゴンの中から食器を出し、それに何かを入れているようでした。

お盆の上にそんなに大きくない少し深めの皿が三つ出てきたのです。
それを持って三人の前に出したのです。
「ナツさんこれはなんですか?」
と一平が言うと、
「ビーフシチューですがお嫌いでしょうか?」
とナツさんが不安そうに言ったのでした。

「大好きです!」
と一平が言うと、
「それはようございました。」
と菊枝がうれしそうに言ったのです。

「うちはみんなビーフシチューが大好きなんですよ!」
と小百合が言うと、
「ああー!?それでマンションに来たとき!?」
「ユーが最初に作ってくれたんですね!?。」
と一平が言ったのです。

「そうなんですかー?!」
と、さびしそうに小百合が言うと、
「もちろん!なんにもありませんでしたよ!!?」
「夕食を作ってくれただけなんです!!。」
「ほんとうです!。」
と一平が、あわてて言ったのでした。

「一平さん!?」
「正直なんですね!!」
と、菊枝が笑みを浮かべそう言ったのでした。






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