携帯によろしく 第七章 (2)

三人で話をしていると面会時間の終わりになったのです。
面会時間が七時までだったのでした。
面会時間の終わりを告げるBGMが流れたのです。
菊枝と小百合はナースステーションに立ち寄ったあと、
一平といっしょにエレベーターで、一階まで降りたのでした。

「山本さん!?おなかすいたでしょう??!」
「いつも母とこれから食事するんです!。」
「ごいっしょにいかがでしょうか?!」
と小百合が訊ねると、
「ええ!ぜひごいっしょさせてください!?」
と、一平は答えたのです。

そして三人は駐車場に止めてある小百合の車のところに来たのでした。
一平が、”あれ?助手席に乗ればいいのかなあー?”
”後ろの席に乗ればいいのかなー?”と一瞬考えると、
「すいません!?助手席に乗っていただけますか?!」
と菊枝が一平に言ったのです。
「はい!」と一平は答えると、助手席に乗り込み、シートベルトをしたのでした。

一平は財布にいくら入っていたか心配になったのです。
”どこか高いレストランにでも行くのかなあー??”
などと一平が考えていると、車は神宮外苑を通り、原宿を抜け、
代々木公園を通り、井の頭通りから環七通りに入ったのでした。
それからしばらく走ると、横道に入ったのです。
そしてじきに、大きな家の前に止まったのでした。

すぐに少しづつ、ガレージのシャッターが上がり始めたのです。
シャッターが上がり終わると、車はその中に入ったのでした。
「山本さん着きました。」
と小百合が言ったのです。
「こちらは?」と一平が言うと、
「自宅です!。」と小百合が答えたのでした。

「レストランに行くのかと思っていました。」
と困惑した表情で、一平が言ったのです。
「遠慮せずにどうぞ!?」と小百合が言うと、
「はあー?!?」と言って、
一平は車を降りたのでした。

菊枝が先に降りていて、ガレージのドアを開けると、
「こちらです!。」と言ったのです。
一平は、菊枝のあとをついて行ったのでした。
すぐに小百合が早足で追いかけてきたのです。

玄関にはお手伝いさんが出迎えに出ていたのでした。
「おかえりなさいませ。」と言って、会釈をしたのです。
「ただいま!」
「何か変わったことはありませんでしたか?!」
と菊枝が言うと、
「はい別に、これといったことはございませんでした。」
と、お手伝いさんは答えたのでした。

「こちらが、先ほど電話で話した方です。」
「山本一平さんです。」
と菊枝は一平を、お手伝いさんに紹介したのです。
「吉井 奈津子と申します。よろしくお願いいたします。」
と言って、お辞儀をしたのです。

「山本一平と申します。こちらこそよろしくお願いいたします。」
と言って一平も、お辞儀をしたのでした。
一平は、病院を出てじきに、菊枝が携帯で電話をしていたので、
てっきりレストランに電話しているのかと思っていたのです。
お手伝いさんに電話していたとは思っていませんでした。

「奥様。すぐにお食べになりますか?」
とお手伝いさんが訊くと、
「ええ!すぐ支度をしてちょうだい!!」
と菊枝が答えると、
「わかりました。準備ができたらお呼びします。」
と言って、足早に奥の部屋に戻ったのでした。

「山本さん!?おなかがすいたでしょう!!?」
と小百合が言うと、
「はい!正直言って、おなかがグーグー鳴っています。」
「小百合さん聞こえましたあー?!」
と一平は少し笑って言ったのです。
「はい!聞こえました!!?。」
と、小百合は笑みを浮かべ正直に答えたのでした。

「とにかく上がりましょう!?」
と小百合は言うと、
三つ出してあったスリッパの一つを一平の足元のところに置いたのです。
一平は、靴の足先を玄関のほうに向け靴を脱ぎ、
スリッパに履き替えたのでした。
そして玄関からすぐの応接室に通されたのです。

三人がソファーに座って少し話をしていると、
お手伝いさんが、食事の支度ができたことを告げに来たのです。
応接室から出て、通された部屋には少し長く大きなテーブルがあったのでした。
「山本さん!?こちらの席にどうぞ!?」
と言って小百合が、イスを引いて一平を席に座るよう促したのです。

一平は少し緊張して、席についたのでした。
一平が座った向こう側に小百合が座ったのです。
最後に菊枝が上座の席に座ったのでした。






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