本来コーヒー紅茶などをお出しして、御もてなししなければいけませんが、
インターネットの都合上それができません。
ご自分で好きなものを適当に用意していただき、
キーボードなどの上にこぼさぬよう注意して、
ときどき飲みながらでもお読みくださいませ。 m(_ _)m
「俺と兄さんに親父が言ったんだ!!」
そう一平が言うと、
「おにいさん?!」と、育子が、少し首をかしげ言うと、
「姉さんのだんなさ!」
「姉さんの名前は好子!」
そう一平が言ったので育子は納得したのでした。
一平と言う名前からして、長男だろうと思っていたからです。
「俺と、兄さんふたりだけ呼んだんだ!」
「小さな声だったけど、はっきりした口調で言ったんだ!!」
「今思うと、最後の力を振り絞って言ったことのような気がする?!」
「おまえたち。俺みたいに、会社のためだと思って、
接待するのはいいけど。
身体を壊すまで飲んだりするなよ!!」
「タバコなんか!もう、吸うのはやめろ!!」
「”先生が言うには、血管が弱くなり、もろくなるそうだから、
ぜったいにだめだぞ!”そう言ったんだ!!」
「兄さんに、”母さんと、好子を頼む!”と言ったあと、
父さんが、”孫の顔が見たかったよ!”と、兄さんに言ったんだ!!」
「そのとき、姉さんが妊娠してて、もうすぐ生まれそうだったんだ!」
「つぎの日が予定日だったんだよ!?」
「父さんが死ぬのが先か、
子供が生まれるのが先かって言う状態だったんだよ!?」
と一平は言ったあと、目をうるうるさせながら、
「おれに!」
「”お前の結婚式を見て死にたかった!”そう言ったんだ!!」
「そして、”母さんを頼む!”って言ったあと、何も言わなくなったんだ!!」
「急いで!先生を呼んだんだよ!!?」
「部屋のそとの廊下にいた母さんも呼んだんだ!!」
「先生が来てから、5分か10分かわからないけど、
じきに亡くなったんだよ!?」
と一平が言うと、涙を流したのでした。
その話を聞いた育子は、大声で泣いたのでした。
そして、「ごめんね!」「ごめんね!!」
と、はっきりことばにならないことばで、
一平に謝ったのでした。
「ごめんよ!育ちゃん!!?」
「男なのに泣いたりして!思い出しちゃって!」
そう言うと、涙を手でぬぐったのでした。
そして、椅子から立ち上がると、
育子のところに行って髪の毛をなでたのでした。
育子はゆっくり立ち上がると、
一平に抱きつき大声で泣いたのでした。
そしてただ、「ごめんね!ごめんね!!」
を繰り返したのでした。
「もう!わかったから!?育ちゃんの気持ちは!!?」
「いいんだよ!謝らなくても!?」
髪の毛をなでながらそう言ったのでした。
しばらくすると、育子の泣き声が小さくなったのです。
「少し落ち着いた?!」そう一平が訊くと、
「うん!」と小さな声で言いうなずいたのでした。
「育ちゃんちょっと、顔を上げて!?」と言うと、
自分のポケットから水色の柄のハンカチを取り出して、
「ハンカチ王子だよ!」そう言うと、
育子の顔の涙を拭いたのでした。
育子はしばらく一平のなすがままにしていたのです。が、
「ハンカチ王子って汗を拭くのよ!」
「涙じゃないわ?!」と言ったのです。すると、
「まあー!?育ちゃんの言うとおりだけどね!!?」
と一平がニコッと笑みを浮かべて言いました。
育子もつられてニコッとしたのです。
「ところで、今!?お母さまはどうしていらっしゃるの??!」
(えっ?なして?!。)
と、育子はまことに丁寧なことばで、一平に訊いたのです。
「育ちゃんどうしたの?!」そう言うと一平は、
「座って!育ちゃん!!?」と言って、育子を椅子に座らせ、
中腰になり、育子のおでこに右手を当てたのです。
「うーん!熱はないようだけど!?」
そう言ったあと、右手をどかし、
おでこにキスしたのでした。そして、
「しょっぱいなあー!?」と、わざとおどけて、言ったのでした。
そしてまた、話し始めたのです。
「親父が死んで3時間してから、男の子が生まれたんだ!!」
「だから親父の生まれ変わりかなって思ってるんだ!!?」
「不幸なことと、めでたいことが重なってさ!なんか忙しかったよ!?」
「親父とおふくろは、社宅に住んでいたから、
親父が死んだので、出なきゃならなくなってさあー!?」
「急きょ家を探すにしても困るから、
会社に頼んで3ヶ月待ってもらったんだ!!?」
そう一平は言ったのです。