携帯によろしく 第二章(7)

育子が化粧を落として、洗顔し、さっぱりした顔で、
「ごめんね!お待たせ!?」
と言って、現れたのです。
その顔を見たとたん、一平は椅子から立ち上がり、
育子の方に近づくと、思わず、
「育ちゃんって、化粧したときと、すっぴんのときとあまり変わらないんだね!」
と、正直に言ったのです。すると、
「そう!よく言われるの!?」
「お化粧がうまくないのよ!」
と、あっけらかんと言いました。

一平は育子を抱きしめると、おでこにキスをしたのでした。
育子は少し顔を上に上げると、一平の顔を見て言いました。
「わたしのこと好き?!」
一平はすぐ、
「好きだよ!育ちゃん!!」
と言ったのです。すると育子が目を閉じたのでした。
一平は、自分の唇を、育子の唇に合わせたのでした。
やさしくキスをしたのです。

しばらくして、唇を離すと一平は、
「ところで育ちゃん!
蛇口のとこについている、小さい浄水器だけど、どこで買ったの??!」
と訊くと、
育子は、自分のいつも座る椅子のところへ歩きながら、
「あれは、東京に来てすぐに買ったから、
えーと?!もう3年ぐらい使ってるかなあー!?」
「東急ハンズで買ったの!」
「けっこう高くて1万円以上したのよ!」
「それにフィルターも2ヶ月に1度変えなきゃならないから!?」
「でもぜんぜん違うからね!あるとないとじゃあ!?」
そう言ったのでした。

「そーかあー!?東急ハンズか!」
「”東京に来てすぐ”って言ったけど!どこに住んでいたの?!」
そう一平が椅子に座り、訊ねると、
育子も椅子に座って、
「浜松!浜松町じゃあないわよ!!?」
と、言ったのです。

「ヨーコとは、高校まで浜松で一緒だったけど、
あの子は大学。東京の大学だったの!」
「東京に行くとヨーコのとこに停まってたの!」
「わたし、大学まで浜松だったから!?」
「就職は、東京に決めていたの!」
「名古屋に行く子もけっこう多かったけど!?」
そう育子が言ったのでした。

「そういえば、浜松からだったら名古屋のほうが近いのか?!」
「東京のほうが遠いんだ!」
一平は地図を思い浮かべて納得したのでした。
「ヨーコが東京に来てびっくりしたのは、水がまずかったこと!」
「わたしもそうだけど!!」
「東京の人ってこんな水飲んでるの?!って思ったわ!」
「最初!水を買って飲むなんて!!信じられなかったもの!?」
「でも生活してると納得したの!」
そう育子が言ったのでした。

「ヨーコは最初の頃、 水の2リットルのを買って冷蔵庫に入れてたんだけど!」
「けっこう重たいから、買って持ってくるのが大変だからって!」
「それで、浄水器に変えたのよ!?」
「私はその、ま。ね!」
と笑って言ったのです。

「育ちゃんごめんな!俺のとこで飲んだコーヒー!!?」
「うまくなかっただろ?!」
そう一平が言うと、
「少し濃い目に入れて飲んだから、
だいじょうぶよ!」(いや!。マズイはずだ!!。)
と、育子が言いました。

「俺は別にそれほどマズイとは思わないけど!」
「やっぱり!子供のときからうまい水をずーっと飲んでいたから、
よくわかるんだな!きっと!!?」
一平は素直にそう言ったのでした。そして、
「さっき!飲み比べたけど、ぜんぜん違うんだってことがわかったよ!」
「なれって恐ろしいなあー!?」
「健康は大事だからなあー?!」
と、一平は言ったのでした。

それを聞いた育子は、
「一平ちゃんって、タバコ吸わないんだ!」
と言うと、
「ああ!親父の遺言なんだ!!」
と一平が言ったのです。育子はびっくりして、
「いつ亡くなられたの?!」と言うと、
「3回忌やったから、丸2年かな??!」
と言ったのです。






▲Top