携帯によろしく 第十六章(10)

「そんなことより、おなかすいたでしょ!?」
「一平ちゃん!お夕飯にしましょー!」
「急いで支度するから!?」
「手洗って、うがいしてきてえー!?」
と育子が言ったのです。

すると一平は、
「うん!」
「ついでに着替えてくるから!?」
と言うと、先に洗面所に行ってから、トイレにより、
そしてパソコンの部屋へ着替えに向かったのでした。

スーツから綿パンとトレーナーに着替えた一平は、
台所に来ると、イスに座ったのです。

「だけどさあー!?」
「親しい人の前ならいいけど!」
「ああいうところでは、冗談はダメだね!!?」
「育ちゃんの格好が、ほんとに家出してきたみたいだったから!?」
「思わず言ったんだけどー!?」
と少し笑みを浮かべ一平が言うと、
「わたし若く見られたのねえー!?」
「あのおばさんたちに!!?」
と、夕飯の支度をしながら、育子が少し笑って言ったのでした。

しばらくすると夕飯の支度ができたのです。
「いただきまーす!」「いっただっきまーす!」
と言うとふたりは、話をしながら食べたのでした。

「ところで!家具が問題って、どういうことー??!」
と一平が言うと、
「わたしのところのテーブルは、このテーブルより小さいし!?」
「ここに持って来ても困るし、いらないでしょ!?」
「ダイニングボードは小さいから、一応長さを測っていったから!?」
「たぶん置けると思うんだけどー!?」
「それと、タンスは必要なんだけど!?」
「3つとも、こっちに持ってくると!?」
「部屋がものすごーく狭くなっちゃうから!?」
「それに、コタツや洗濯機や炊飯ジャーだって二つは入らないしー!?」
「あと布団もあるしねえー!?」
と、いっきに育子が言ったのでした。

「でもさあー!?」
「引越し。そんなに急がなくてもー!?」
と一平が言うと、
「だって住んでても、住んでいなくても!?」
「お家賃は払わなきゃならないんだから!?」
「もったいないでしょ!?」
と育子が言ったのです。

「うーん!?」
「それはそうだけどー!?」
と言ってから、
「あしたご両親に会って、ちゃんと話してからでも!?」
「いいんじゃないのかなあー!?」
と一平が言ったのです。

「だってえー!?」
「早く整理しとけば!どうせ出るんだしー!!?」
「不動屋さんにだってえー!?」
「前もって出る日を言えるでしょう!?」
と育子が不満そうに言うと、
「わかったよー!」
「育ちゃんの好きなようにやればいいよー!!?」
と、一平が言ったのでした。

「一平ちゃんに!」
「”好きなようにやればいい”って!?」
「そんな言い方されるとは思ってみなかったあー!!?」
と育子が、少しふくれっ面をして言ったのです。
そして残ってる刺身をしょうゆにつけ食べ終わると、
箸を茶碗の上に置いたのでした。

「俺はただ不安なんだよー!?」
「ご両親に会って、結婚の許可をもらえるのかあー!?」
と一平は言うと、
ご飯を急いでかっ込んだのです。
そして味噌汁を口へ流し込んだのでした。

すると育子が涙を流し、
「ごめんねっ!!?」
「一平ちゃんの気持ちも考えずにー!?」
と言ったのです。
すると一平はイスを引き立ち上って、
育子の座っているところへと歩いて行ったのでした。

一平は育子を立ち上がらせると、
「愛してるよー!!」と言って、
育子を強く抱きしめたのです。
それからふたりは強烈なキスをしたのでした。

長いキスが終わり、二人が離れると、
「お味噌汁の味がしたあー!?」
と育子がうれしそうに言ったのです。すると一平が、
「しょうゆの味がしたよー!!?」
と笑って言ったのでした。

そしてふたりは仲直りすると、また食べ始めたのです。
それからじきに、夕飯を食べ終えたのでした。
ふたりで仲良くあと片づけを終えると、
育子はテレビの部屋に行き、きょう持って来たボストンバッグを、
部屋の隅に置くと、とりあえずパジャマに着替えたのです。

一方一平は、
「先に風呂入ってるから!?」
と言うと、パソコンの部屋へ行き急いで着替え終わり、
パジャマと新しいパンツと洗い物とを持つと、
パンツ一丁のまま、早足で洗濯機のところまで行ったのでした。
そしてすぐ、仕切りカーテンを閉めたのです。
そして小さな声で小さく手を横に開き、
「セーフ!!」とうれしそうに言ったのでした。

一平が身体を洗い終わり、
湯舟に浸かっていると育子が、
「洗い物これだけえー!?」
とドアの向こうで言ったのです。
一平はすぐ、
「うん!きょうはそれだけだよー!?」
と答えたのでした。すると育子が、
「はーい!」
と答えてからじきに、洗濯機の回る音がしたのでした。






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