本来コーヒー紅茶などをお出しし御もてなししなければいけませんが、
インターネットの都合上それができません。
ご自分で好きなものを私にも用意していただき、
キーボードなどの上にこぼさぬよう注意して、
ときどき飲みながらでもお読みくださいませ。 m(_ _)m
育子が改札口を出たところで一平を待っていると、
じきに一平が改札口のところに来て、
出るとまっすぐに育子のところにやって来たのでした。
育子の横に置いてある、
パンパンに膨れたボストンバッグを見た一平は、
「お嬢さん!?」
「そんな大きな荷物持って!!?」
「家出でもしてきたのー??!」
と、まじめな顔をして言ったのです。すると、
「そうなんです!!」
「今、家出してきたところなんですー!!?」
と育子も笑いをおしこらえ、まじめな顔をして言ったのでした。
ちょうどそこを通りかかったおばさんふたりが、
それを聞いたのです。
「家出!!??」
「わたし。駅員のところに行ってくるから!?」
と言うと、ひとりのおばさんが、早足で駅員のところに向かったのでした。
そしてもうひとりのおばさんが、
「そうしてー!!?」
と答えると、
「見るからに家出して来たっていう格好しているわねえー!?」
と、育子の姿を見て言い、
「あなた!田舎(いなか)はどこ??!」
と、育子に向かって訊(き)いたのでした。
「冗談ですー!」
「ほんとに冗談ですー!!?」
「家出じゃあーありません!!」
とあわてて手を振りながら育子が言ったのです。
すると一平も、
「僕たちふたりは結婚するつもりですので!」
「ほんとに冗談で言ったんですー!!?」
と一平も、あわててそう言ったのでした。
「ほんとー??!」
と疑いの目でおばさんは言うと、
「じゃあ!?そのボストンバッグに何入ってるのー!??」
「見せなさい!!」
と言ったのです。そして、
「下着とか!?」
「ときどきしか着ない洋服とかが入ってるんですー!」
と育子が言うと、
ますます疑いの目でおばさんは、育子を見たのでした。
育子は話を素直に聞いてもらえそうもないので、
ボストンバッグを開け、
郵便物を一つ取り出したのです。すると、
もうひとりのおばさんが、
駅員を連れて来たのでした。
「この子。家出だってえー!!?」
と大きな声で、育子を指さし言ったのです。
すると野次馬が数人集まってきたのでした。
「とにかく家出なんかじゃありませんから!!?」
と一平が言うと、駅員が、
「ここでは、落ち着いて話ができませんから!?」
「駅員室へ行きましょうか??!」
と言ったのでした。
一平がボストンバッグを持ち、
育子は郵便物を1つ持って、
おばさんふたりと駅員と、
五人で駅員室まで行ったのです。
そして育子は、
郵便物が来た住所に今住んでいること、
それとけっして家出ではなく、
ただ単に荷物を運んだだけであることを、必死に説明したのでした。
20分後二人は解放され、
おばさんふたりに、
「今後、冗談はふたりだけの時にします!」
「お騒がせしました!!」
と言って謝った、一平と育子でした。
するとひとりのおばさんが、
「真剣な顔して言ってたから!?」
「本当かと思ったわよー!」
と言い、もうひとりのおばさんが、
「ほんとの家出じゃなくてよかったわっ!」
「じゃあ!とにかくふたりとも仲良くねっ!!」
と言ったのでした。
おばさんふたりを、
一平と育子はお辞儀をして見送ったのです。
そしてふたりのおばさんは、笑いながら駅から出て行ったのでした。
「ごめん!育ちゃん!!?」
と一平が言うと、
「わたしこそごめんねっ!!」
と育子が言ったのでした。そして、
「お夕飯遅くなっちゃったねえー!?」
「スーパーでお刺身買っていくけど!?」
「それでいい??!」
と育子が言ったのです。
「うん!いいよー!?」
と一平が答えると、
ふたりはスーパーに寄り、刺身を買ってから、
さっきのおばさんふたりの話をしながら、家路についたのでした。
マンションに着くと、
育子は刺身を冷蔵庫に入れ、
いつものように台所の窓を開けたあと、
二つの部屋の窓を開けたのです。
そして一平は、とりあえずボストンバッグの底を雑巾で拭き、
テレビの部屋にそれを置いたのでした。
それから台所に来て、テーブルのイスに座ったのです。
育子は手を洗いうがいを済ませ、台所に来ると、
やはりテーブルのイスを引き、そこに座ったのでした。
「育ちゃん!?結構バッグ重たかったけど!?」
「これで全部ー??!」
と一平が言ったのです。すると育子が、
「残りのはダンボールに詰めてきたから!?」
「あとは家具だけだけどー!?」
「それが問題なのよねえー!?」
と言ったのでした。