携帯によろしく 第十六章(7)

育子は時計を見て、
「もうこんな時間だわ!!?」
「早いわねえー!?」
と言ったのです。
そしてイスに座り、
お昼ご飯を何にしようか考えていると、
育子の携帯電話は、
一平からのテレビ電話を受信したのでした。

「育ちゃーん!お昼食べたあー!??」
と一平が画面に向かって言うと、
「まだこれからなのー!?」
と育子が画面に向かって答えたのです。すると育子が、
「一平ちゃん!?」
「きょう!お昼に何食べたのー!??」
と聞いたのでした。

「きょうは、”煮魚定食”食べたけどー!?」
「サバのー!?」
と一平が言ったのです。すると、
「そうなんだあー!?」
「何かお昼ごはんのヒントがあればと思って聞いたんだけどねえー!?」
「じゃあー!?」
「お夕飯は、お肉類の方がいいわよねえー!?」
と育子が言ったのでした。

「別にどっちでもいいよー!」
「刺身なんかでもかまわないから!?」
と一平が言うと、
「うん!わかったあー!?」
「ところできょうは、何時ごろ帰ってくるのー!??」
と育子が言ったのです。

「きょうは、少し打ち合わせがあるんだよー!?」
「でも、7時頃には帰れると思うんだあー!?」
「もし遅くなるようなら連絡するからあー!?」
と一平が言ったのでした。するとすぐ育子が、
「うんー!」と言ってから、
「わたしのこと愛してるー!??」
と言ったのです。

「ちょっと待ってえー!?」
と、一平はあわてて画面に向かって言うと、
携帯の画面を開いたまま、急いで応接室に入ったのです。そして、
「もちろん愛してるよー!!」
と、育子に向かって言ったのでした。

「そばに誰かいたのー!??」
と育子が言うと、
「うん。ちょっとねっ!!?」
と、一平が苦笑いしながら言ったのでした。
すると育子が、
「ごめんねっ!」
「一平ちゃん!!?」
「人がいない所から掛けたのかと思ったから!?」
と言って、育子が謝ったのです。

「俺こそごめん!」
「もっと気を使えばよかったよー!?」
と言って、今度は一平が謝ったのでした。
「じゃあねえー!?愛してるー!!」
と一平は言うと、
携帯に唇を近づけたのです。
すぐに育子も、
「愛してるー!!」
と言って唇を、携帯の画面に近づけたのでした。

それからふたりはお互い、
「チュ!!」と言ったのでした。(ばかばかしい!)
そして、
「じゃあねえー!?バイバーイ!!?」
と言って育子が、一平の画面に向かってうれしそうに手を振ると、
一平も、
「じゃあねえー!?バイバーイ!!?」
と言って、同じようにうれしそうに手を振ったのです。

「じゃあ!切りまーす!!?」
とニコニコしながら育子が言うと、
「はーい!!?」
と言って一平も、育子とほぼ同時に携帯のテレビ電話を切ったのでした。

携帯をポケットにしまうと、
「朝のお味噌汁の残りと!?」
「あとー?」
「”焼きそば”でもしようかなあー!??」
と言って育子は、イスから立ち上がり、
冷蔵庫のところに行き、ドアを開けたのでした。

最初にビニールに入った蒸し麺を一つ取り出したのです。
そして、野菜室からキャベツを取り出し、
パックのハムの中から2枚ハムを取り出すと、
それらを刻み、
蒸し麺と一緒にフライパンに入れ、炒めたのでした。

焼きそばが出来上がると、
「これじゃあー!?」
「ちょっと多いわねえー!?」
と言って育子は、半分ほどをフライパンから取り、
中皿に分けたのです。
そしてそれにラップを掛けたのでした。

フライパンの残りの焼きそばを中皿に盛ると、
温め直した味噌汁をお椀に入れ、
おいしそうにお昼ごはんを食べた育子でした。






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