携帯によろしく 第十五章(3)

「あっ!バッグがない!!」
とあわてて言うとすぐ、
「あのカラオケ屋。なんて名前だったかなあー!??」
「たぶんあそこだと思うんだけど!?」
「でももうないかもしれないなあー!??」
と言って少しがっかりした様子で、
携帯を取り出した一平でした。

「どうしたのー!??」
「そういえば!」
「きのうの朝、カバン持って出かけたわよねえー!?」
と言って、育子も今そのことを思い出したのです。

携帯のメニューから電話帳を押し、名前検索から、
後輩の山田和樹の携帯に電話したのでした。

「もしもしー!?」
「かずきー!」
と言うと、
「なんすかあー!?」
「こんなに早く?!」
と和樹が言ったのです。

「あのサアー!?」
「きのうカラオケに行っただろう?!」
「そこにバッグ忘れたみたいなんだ!」
と一平が言うと、
「バッグですかー!??」
「先輩なんにも持っていませんでしたよー!」
「吉野屋出る時もー!」
と和樹が言ったのでした。

「えー!!??」
と言うと、一平はしばらく考え、
「アッ!そうだあー!?」
「きのうはみんなで飲むんで!」
「会社に置いてきたんだよー!」
「びっくりしたあー!!?」
と言ったのでした。

「で!なんか?用すかあー!??」
と和樹が言うと、
「バッグ、カラオケ屋に忘れてきたと思ったから!?」
「お前に店の電話番号聞こうと電話したんだよー!」
「悪かったなあー!?朝早く!」
「じゃあなあー!?」
と言うと、携帯を閉じポケットにしまった一平でした。

「きのうはアイツら来るまで、先輩とふたり飲んだからなあー!?」
と少し笑いながら言うと、
「いっただっきまーす!!?」
と言って、朝食をうまそうに食べ始めた一平でした。

「ごめんねっ!」
「きょう少し起きるのが遅くなったから!?」
「いつものハムエッグとお味噌汁だけで!」
と育子が言うと、
「育ちゃんが朝作ってくれるんで!?」
「助かるよー!?」
「ありがとう!」
と一平がうれしそうに、キャベツの千切りを食べながら言ったのでした。

朝食を済ませ、整髪しようとイスを引き立ちあがった時に、
一平の携帯が鳴ったのです。
「一平!」
「カラオケ屋の電話番号知ってるかー!??」
と、いきなり泰三が言ったのでした。

「先輩!どうしたんですか?!」
と一平が言うと、
「きのうよー!」
「吉野屋か、カラオケ屋にカバン忘れたみたいなんだよー!?」
「やばいよー!!」
「出掛けに思い出したんだあー!?」
と泰三が言うと、一平が笑いをこらえながら、
「そりゃあー!困ったですねえー!?」
「でも先輩?!」
と言ったのです。

「なんだよー!??」
と泰三が言うと、
「きのうは和樹以外定時だからって!」
「せいせいと飲むために!」
「カバン持っていくと、どこかに忘れると困るからって!?」
「会社に置いてったはずですけどー!!」
と言ってから一平は、大笑いしたのでした。

すぐに泰三が、
「ええー!!??」
と大きな声で言ってしばらくしてから、
「わりー!わりー!?」
「すっかり忘れてた!!」
「きのうは、アイツら待たせるからよー!」
「ふたりで結構飲んだんだよなあー!?」
「朝早く悪かったなあー!」
「じゃあなあー!?」
と言うと一平の携帯が切れたのです。
それから一平は、うれしそうに携帯を折りたたみ、ポケットにしまったのでした。

「まったくー!!?」
「ふたりで同じことやってるんだもんねえー!?」
「似た者同士の先輩と後輩ねっ!」
と育子が笑って、後片付けをしながら言ったのでした。

一平は苦笑いをしながら洗面所に行ったのです。
髪を整えドライヤーを掛け、
もう一度ひげの剃り残しを剃ると、
ローションをつけ、玄関に向かったのでした。

「じゃあー!?育ちゃん行ってくるよー!」
と言うと、すぐに玄関に育子が来たのです。
そして抱き合い、めちゃんこ強烈なキスをしたふたりでした。

「育ちゃん!時間、間に合うのー!??」
と一平が言うと、
「だいじょうぶよー!」
「いってらっしゃーい!!」
と育子が言ったのです。そして、
「じゃあー!?出たらロックしてねっ!」
「いってきまーす!!」
と言うと、一平は出かけて行ったのでした。






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