携帯によろしく 第十五章 (2)

ふたりでいっしょにベッドに入ると、
「一平ちゃん!」
「わたしのこと愛してるー??!」
と育子が言うと、
「もちろんさあー!!?」
「あ。い。し。て。る!!」
と一平が言ったのでした。

それからふたりは愛し合ったのでした。
ベッドに入ってからはいつもより少し早く、合体したのです。
そして心地よい眠りについたのでした。

朝、一平が目覚めると、育子がすでに朝食の支度をしていたのです。
台所からまな板を叩く音が聞こえたのでした。

「やっぱりいいなあー!?」
「朝、こういう音がするって!!?」
と一平はつぶやくと、
ベッドから出ると台所へ行こうとして、部屋のドアへ向かったのです。

すると携帯の目覚ましタイマーの音楽が流れてきたのでした。
そしてほぼ同時に、
「ブルル・ブルル・ブル!」と、マナーモードの音も聞こえたのです。
一平はドアの手前で引き返したのでした。

携帯電話がパソコンの机の上で、動き回っていたのです。
「危ない、危ない!」
「また落とすところだったー!!?」
と言って携帯を持つと、思わず笑ったのです。
そして折りたたみの携帯を開き、ボタンを押し、
音楽とマナーモードの音を消した一平でした。
そして携帯をパソコンの机の上に置くと、部屋を出て台所に行ったのです。

「おはよう!!」
と一平が言うと、
育子が一平のほうを振り向き、
「おはよう!!」
「二日酔いだいじょうぶ??!」
と言ったのでした。

一平が志村けんの物まねで、
「だいじょうぶだあー!?」
と言うと、
「似てるー!!」
「これならだいじょうぶねっ!!?」
と育子が、うれしそうに言ったのでした。

「あれ?」
「きのうは似てなかったあー??!」
と一平が言うと、
「うん!」
「今の!?そうねえー??」
「半分かなっ!?」
と育子が答えたのです。

「一平ちゃん酔うと物まねヘタになるんだあー!?」
「わかりやすくていいわっ!?」
と育子は言うと、
また向きを元に戻し、朝食の支度をし始めたのでした。

一平はそっと育子の後(うしろ)に近づくと、やさしく抱きしめたのです。
「一平ちゃん!」
「こんなことやってる時間はないでしょ!?」
「早く顔を洗って!着替えてきてちょうだい!!?」
と育子が言ったのです。すると、
一平は急いで手を離し、
「はーい!!」と言って、洗面所へ向かったのでした。

一平は、手を洗い顔を洗い歯を磨き、
ひげをそり終えると急いでパソコンの部屋へ戻り、
着替えを済ませようとすると、
スーツがひとつも、ハンガーラックに掛かっていなかったのでした。
あわてた一平は、台所に行き育子に言ったのです。

「育ちゃん!?」
「スーツ知らない??!」
と一平が言うと、
「スーツいつもラックに掛けてあるでしょ!??」
「わたし知らないけどー!?」
と育子が、テーブルの上に食器を並べながら言ったのでした。

「育ちゃんがどこかにでも片付けたかと思ったけど?!」
「へんだなあー!??」
と一平が言うと、
「普段着は掛かっているのー??!」
と育子が言ったのです。すると一平は、
「うん!」
「いつも着るのは掛かってる!!?」
と言ったのでした。

「きのう、一平ちゃん!?」
「帰って来た時、結構酔っていたから!?」
「タンスにでも、しまちゃったんじゃなのー??!」
と育子が言うと、
「ごめん!!」
そう言って部屋に戻った一平でした。

そうです!!。育子の言う通りでした。
通勤用のスーツは、
いつも洗濯屋に出したとき付いてくるビニールのカバーをして、
ハンガーラックに掛けておくのですが、
きのう一平は酔っていたので、
掛けておいたすべてのスーツを、タンスに入れてしまったのです。

スーツに着替えてテーブルの席につき、
「ごめんねっ!育ちゃん!!?」
と一平が言うと、
「そんなことはいいのよー!?」
「それより!何か無くしたものはないのー!??」
と、育子が心配そうに訊いたのでした。






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